密会
アイドル海原マリーの特別ライブは無事に終わり、今度は握手会を始めるのであった。この握手会は文字通りステージ上でアイドルと握手をしながら10秒間だけお話が出来るあの握手会である。ただしチケットを購入すれば誰でも参加できるわけではない。握手会に参加できる券は数あるライブチケットでたった50枚しかなくもし当たればファンは歓喜しその場で飛び跳ねその衝撃で必ず足を捻ると噂されている‥‥らしい。だがそれでもファンはその握手券を求めていた。何故なら‥‥
「わぁ~、今日も来てくれたんですね! どうもありがとう!」
「い、いえ、マリーちゃんのためならば北でも南だろうとどこへだって駆け付けますよ」
「本当ですか! ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします!」
「ぎょ、ぎょぇぇぇぇぇぇーーー!!」
マリーの笑顔によってその男性ファンは心が浄化されていったのであった‥‥
「ま、マリーちゃん! 私、いつかマリーちゃんの様なアイドルになりたいと思っています。どうしたらマリーちゃんのようなアイドルになれますか!」
「そうだね‥‥私から言えることは十分な睡眠に、好き嫌いしないでご飯をしっかり食べる事かな」
「はい! 今日から早寝早起き、そして好き嫌いしないでご飯をしっかり食べるようにします!」
「マリーちゃんと握手が出来て光栄です! もう一生手を洗いません!」
「も~駄目ですよ。ちゃんと手洗いをしっかりしないと体調崩しますよ。ちゃんと手を洗ってまた私のライブに来てください」
「~~~~! すみません! 俺が間違っていました! これからも手を洗って綺麗な手でまたマリーちゃんのライブに来ます!」
等など様々なファンとの握手を行い、その中で飛び出る会話を上手く対応していくのであった。そして成宮千尋、立花豪志、四季有紗もマリーとの握手をし終わり‥‥
「あっ、さっきは私と一緒に踊ってくれてありがとう! とっても楽しかったですよ」
「で、でもわたしああいうダンスを今まで踊ったことがなくて‥‥迷惑かけなかったでしょうか?」
「ううん、そんなことないよ。緑さん…だったかな? 私から見ればすごく楽しそうでしたよ。もし機会があればまた一緒に踊りましょうね」
「は、はい、また機会があればその時は是非‥‥」
「黄菜子ちゃん! 黄菜子ちゃんの踊りすごく可愛かったよ! 可愛すぎてつい踊りのタイミングを間違えそうになったよ」
「え、えっと、あ、あの…その‥・」
「大丈夫だよ。ゆっくりでいいからね。そうだ深呼吸しようか。すーはー、すーはー‥‥」
「…すーはー、すーはー‥‥えっと、私もマリーちゃんと、い、一緒に踊れて‥‥た、たのし、かった…です…」
「うんうん、私もすごく楽しかったよ。また一緒に踊ろうね」
「う、うん!」
このようにファン1人1人と目線を合わせ眩しいほどの笑顔で会話をしてくれるので多くのファンから愛されている理由であり、また黄菜子のような子供に対してでもマリー自身がしゃがみ優しく接してくれるので子供からにも愛されているのであった。
そして最後に星乃零もマリーとの握手を行い、そしてステージを降りるのであった‥‥
「やはり本物のアイドルとこうやって握手を行えるのは感無量ですぞ」
「そうそう、あのキラキラした笑顔はアイドルにしかできないよね」
「私に探偵依頼が来ないのは笑顔が足りないのか、いや、それとも圧倒的美少女感か…」
約1名ほど現在関係ないことをブツブツと呟いているのであった。
「それじゃあ…次はどこに行こうか? お昼までまだ時間があるし、ゲームセンターとかいろんなコーナーにでも行ってみようか」
千尋がそう提案したが、
「あっ、すみません、ちょっとどうしても行きたいところがありまして‥‥」
「あっ、そうだったの? じゃあ、皆で行こうか」
「あっ、いや、俺1人で行きたいので皆は他の場所に行って後程そこで合流でも良いですか?」
「なーに、零、もしかしてやましいところに行きたのぉ? まぁ、男の子だからしょうがないけどぉ~」
「いや、全然違うし…ちょっと知人と会うだけですよ」
というかこのデパートにやましい場所なんてあるのだろうかと逆に考えてしまうのであった。そして零は他の者たちと別れてとある人物と会うためにとある場所へと向かうのであった。
今日の天気は雲1つない快晴であった。そのため外にはお洒落なカフェがたくさん並んでコーヒーやサンドイッチなどの軽食品が販売されていた。そして購入したら日陰に設置しているベンチや椅子に座り美味しく召し上がるのであった。その中には家族連れや恋人が多くいるのであった。1人で来た者にとってはとても居づらい場所であった。そんな場所に1人の少女がいるのであった。その少女はポニーテールに眼鏡をかけており緑が着ていたようなワンピースを着ていた。そして洋服も髪の色も全て水色で統一されていたのであった。そんな少女の後ろから1人の人物が現われ声を掛けたのであった。
「ここにいたのかマリィ」
「あっ、ディア。随分と遅かったじゃない」
クレープを食べながらその人物に振り向くのであった。そしてそのままディアと呼ばれた少年はマリィと呼んだ少女と対面するように椅子に座るのであった。
「もぐもぐ…ディアもクレープ食べる?」
「いや、今度にしとく。それより呼び出した理由はなんだ? あの握手の時にメモ紙を渡して来たから後で見たら『クレープ屋で合流』としか書かれていなかったからさ」
「いや、もう察しているんじゃないの」
「‥‥‥何のことやら」
「とぼけないでよ! よくも私の貴重な休日を台無しにしてくれたわね!」
「うっ!?」
「あのゴミ男が私の体に触れた瞬間悪寒がしたんだからね! もしも明日以降の仕事に影響が出たらどうしようかとすっっっごく困ったほどなんだからね!!」
「あぁ~、その節は悪かったよ。今度何かお詫びするからさ、許してくれよ。それにあれはマリィにしか出来なかったことだからさ、助かったって思っているんだよ」
「ふん、どうだか! もぐもぐ!」
怒りながらももぐもぐって言いながらクレープを食べ続けるマリィであった。だがディアにとってはマリィがあのゴミ男を始末したことはありがたい事であった。何せあの男はこれまで猫族や兎族以外にも他の亜人族にも手を出していたものだからいよいよ始末しなければと考えていた。本当はディア自らが始末したかったのだが、その時はすでに株式会社薬品コンポレーション本社に向かっていたためどうしても手が離せなかった。そこで唯一手が空いているマリィに向かわせたのであった。
「全く、せっかくの休日にジュダルから急に呼び出されたと思ったらいきなり眠らされて目を覚ましたらあのカビ臭い所にいたし…ん? よく考えたらジュダルもグルなのでは…よし今度会った時ジュダルが苦手な物を仕返しついでに渡そうかな」
ふっふっふ…と悪だくみを含んだ笑みを浮かべるのであった。
「‥‥それじゃあ、私はそろそろ行くね。次の仕事があるからさ。あっそうそう、これを渡すんだった」
そう言い持っていた小さなカバンの中から少量の赤い液体が入った試験管を渡すのであった。
「あぁ、確かに受け取った。‥‥まぁ、その、休みの日が決まったら教えてくれ。迷惑かけた分の穴埋めぐらいはするからさ」
「言ったわね。じゃあ休みの日が決まったら教えるからね、覚悟してなさいよ!」
「‥‥お手柔らかにお願いします」
「ふふふ‥‥どうしようかなぁ~」
そう楽しそうに言いながらその場を後にするマリィであった‥‥




