救出作戦 ~その後~
魔族が第3術科学校に襲撃から今日で1週間が経っていた。現在学校は休校となっているが、全校生徒は自宅待機で休校が終わるまでは外出が禁止となっていた。ではその間学校は何をしていたのかというと、学校の敷地内をプロの術者と共に再び結界を張り直していた。今後このような事態にならないように、対魔族戦闘授業を作成、魔導道具を用いた新たな緊急脱出経路の用意…等々教師たちはその週の間までに準備に取り掛かっていた。そして今日は休校最終日の日だった。今日も教師たちは新たに作った授業内容の確認や張り直した結界の強度の確認をしていたのだった。そこへ、
「おい、学校は明日からだぞ。何の用でここに来た」
校舎内に1人の生徒が校舎内に入ってきたため、近くにいた教師が声を掛けてきた。そしてその生徒はこう答えた。
「1-Gの星乃零です。今日は生徒会長に呼ばれてここに来ました」
「あっ、星乃君。ずいぶん遅かったね」
「あぁ、まぁ、ちょっと用事がありましたからね…それより会長、もう体調はいいんですか?」
「あっ、うん、万全じゃないけどある程度は回復したから大丈夫だと思うよ」
零が生徒会室に入るとそこには朝比奈莉羅と水河瑠璃、1-Gの5名、そして、ローズとクランがすでに待っていたのだった。そしてこの場にいるべき人物が全員揃うと‥‥
「…じゃあ、始めましょうか…」
莉羅の代わりに瑠璃がこの場の進行役を務めるのだった。
魔族領から帰還した零達10人は【空間転移】の門を出るとそこで待っていたのは、プロの術者たちだった。彼らは数分前に突如現れた門に警戒態勢を取っていたらしい。もしその中から魔族が出てきたらすぐさま術を放つように指示を出していた。だがそれは杞憂で終わるのだった。何故ならその門から出てきたのは魔族ではなく捕らわれた数千人者の第3術科学校の生徒たちだったからだ。すぐさま警戒態勢を解き、急いで生徒たちを保護し安全な場所まで誘導していたのだった。だがしばらくすると何故かその門が霧散したのだった。そして保護した生徒から、まだ向こうに生徒会長たちが残っている。と言ったのだった。もしそれが本当なら急いでこの空間転移の魔石を使い救出に向かわなければならない。そして残りの生徒の保護は救出班に参加していない術者たちに任せることにしたのだった。そして魔石を持っていた成宮航大は持っていた魔石を上空に掲げたのだった。これで魔族領に行ける。とそう思った矢先、持っていた魔石が急にパリィィィィィンンン・‥‥と砕ける音がし、そして跡形もなく散っていったのだった‥‥彼らは一瞬何が起きたのか分からなかった。そしてはっとすると持っていた魔石はただの砂となり、そのまま風に乗せられ彼方へと消えるのだった。彼らはこの行動を魔族の残党による敵襲だと思い込み、攻撃を受放ったと思われる屋上へと急いで向かったのだった。部隊長である成宮航大を含むと計5人で襲撃場所へと向かった。そして屋上に辿り着くとそこには魔族どころか誰1人もいなかった。この短時間で一体どこに行ったのか…辺りを捜索し始めようとすると、再び先ほどの門が現れ始めたのだった。今度こそ魔族の残党と思い術を放つ構えをとるのだった。だがそれも杞憂で終わるのだった。その門の中から9人、いや10人の生徒達、それとメイド服と執事の服を着た者たちが出てきて、その中のメイドの少女は背中にここの生徒の1人を背負っていたのだった。その者たちは強化合宿時以降行方不明となっていた1-G、そしてここの生徒会である副会長と生徒会長だった。
その後、彼らには他の生徒たちが保護、待機させている体育館へと向かってもらった後は6人は再び当たりの捜索を始めたのだった。だが結果は誰1人おらず、魔力の痕跡すらもなかった。他の部下たちには学校敷地内に魔族が残っていないか探すよう指示を出したが、誰1人魔族を見つけられなかったのだった。
そして、第3術科学校敷地内に魔族の残党が1人もいないことを確認し、プロ術者が出る間もなく魔族襲撃事件は終わりを迎えたのだった‥‥
「‥‥まぁ、あの後は事情聴衆を何度もさせられ、ようやく終わった時にはもう夜になっていたよ」
零がそう言うのだった。門を出る直前零は魔力を使い切ったのか気を失いしばらく目を覚ますことはなかった。他の1-Gから零が気を失っている間の話を聞いたところ生徒会長が戻ってきたのを他の生徒たちが見ると多くの生徒たちが「生徒会長だ!」「無事だったんですね」等の喜びの声をあげながら駆け寄ってきたのだった。だが誰1人も1-Gには駆け寄ることはなく、それどころか「あっ、無能のクラスだ」「ほんと、なんで来たの?」「邪魔だからどっか行ってくれる?」と理不尽な言葉を浴びさせられたのだった。だが、莉羅は「待って皆、私が無事に帰って来れたのは彼らのおかげなの」と説得するも「何言っているんですか? 無能のクラスに会長を助けることなんて不可能でしょ」「そうそう、きっと何かの間違いですよ」「早く横になった方がいいですよ」と逆に説得させられたのだった。
その後しばらくしてようやく零が目を覚ましてからはプロ術者による何時間に及ぶ事情聴取をさせられた。今までどこにいたのか、何故他の1学年の生徒たちといなかったのか‥‥等々しつこく聞かれるのだった。だから「分からない」や「記憶がないんです」と適当に誤魔化してその場をやり過ごすのだった。他のクラスメイトにも同じような質問をされたらしいが、同じように誤魔化してその場を切り抜けたらしい‥‥
「でも、あんな対応で良かったのかな?私たちが今までどこに行っていたのか言えば良かったかな…」
「いや、もし堂々と戻れば他の生徒同様にあの体育館に数日間はいなければならなかっただろうね。もしあそこにいれば会長を助けにいくことが困難になり、もしかしたら今頃‥‥」
それ以上言うことを辞めるのだった。きっと少しでも助けが遅れたりでもすれば会長は魔族たちに何か取り返しのつかないことをやらせるのかと考えると悍ましいと思うのだった。
「あ、あの、れー君」
「ん? どうした?」
「えッと、そろそろ教えてもらってもいい? れー君の後ろにいる2人は何者なの? 吸血鬼って言ってたけど‥‥」
それは、零が竜族の大剣で刺された後だった。蛇族のミザリーは「お前たちは吸血鬼なのだろ」と2人を見てそう問うてきた。だがこの2人は自信を吸血鬼と一言も言っていない。だから何かの間違いなのだろうと思っていた。だから彼女たちと知り合いである零に聞けば分かると思い声を掛けたのだった。そして、
「あー、そういえば言っていなかったな。改めてこちらはメイド服を着た女性はローズ、一方執事服を着た少年はクラン。どちらもとある人物に仕えている吸血鬼だ」
そう紹介すると2人はお辞儀をしたのだった。それを聞いて、
「でも、どこからどう見ても人間と変わらないけど…」
「うん。吸血鬼には見えない」
目の前の2人は吸血鬼なのは本当のようだ。だが、どこからどう見ても他の人間とさほど変わらなかった。
「そうか? じゃあ、2人の戦闘を見てると思うけどどうやって戦っていた?」
「えっ、確か魔術の他に真っ赤な武器を取り出して‥‥」
「では、その武器はどこから出していた?」
「……あ!」
そうローズは長剣、クランは短剣をそれぞれ持っていた。だが、今まで武器をどこに所持していたのかは誰も見ていない。ローズが短剣ならばメイド服のスカートの中にしまっていた可能性がある。だが彼女が使っていたのは長剣、スカートの中にしまっていても剣先が見えてしまう。クランの執事服はポケットがあるがこれらは小物入れ用で短剣のような刃物を隠すには難しい。ではどこから武器を出していたのか? 答えは‥‥
「真っ赤なで思い当たると言えば血液、もう分かったと思うけど吸血鬼は自身の血液を自在に操ることが出来る種族。それに魔力量は人間の数倍あるから階級の高い術も使えたりする。そして武器は手から出た少量の血だけで武器を生成することが出来る」
答えと同時に二人は先ほどの武器を作りだしたのだった。
そして話は変わり、
「ねぇ星乃君。あの時辺り一帯を消し飛ばした真っ黒な武器は何なの? あんなの見たこともないし、あそこまでの威力どんなプロでも出し切れないはず。最悪の場合なんて魔力欠乏症を出してもおかしくないのに‥‥」
瑠璃がそう聞いてきた。零が漆黒の武器を手にした瞬間その周囲にただならぬ魔力を感じた。そしてたった1振りだけで魔族たちを撃退したあの破壊力、現代の武器でもあそこまでの威力を出すこと自体不可能だ。なのに魔力欠乏症にならないで気を失うだけに収まるなんて、そんなのまるで…
「副会長。申し訳ないけど今は答えられない‥‥だけどもし話す機会があればその時に話そうと思う」
「え、えぇ‥‥」
それでこの内容の話は終わり、
「じゃあ、最後に聞かせて。今回の魔族たちの襲撃の理由、その目的は何?」
朝比奈莉羅がそう聞いてきた。そして零はこう答えた。
「結論から言うけど、会長、貴方の魔力は普通の人間と違う。だがあの魔族たちはどこでその情報を知ったのか隙を見て今回の襲撃を計画した。元々彼らは会長を捕らえられればそれで十分だった。だから他の生徒はついで感覚で捕られたに過ぎない。
そして目的は、魔族を統べる王『魔王』の復活、その後すべての人間、亜人族を服従させること」
「それじゃあ、私は‥‥」
「あぁ、会長、貴方は今後も魔族に狙われ続ける可能性が高い。その『天使の魔力』を手にするために…」




