魔族の国 Ⅱ
「ここが魔族の国…」
そう小笠原陽彩が呟くのだった。彼らは今魔族たちが最も多く住んでいるとある大国にいた。周りには人間とは違う姿や体格の種族たちが数百人以上おり、商品を売ったり、酒場で飲み明かしていたり、何かしらの揉め事をしていたのだった。
そんな魔族の国だが、ここには人間は1人もいない。もしいたらその場は大惨事となり、この国にいる警備をしている者が駆けつけるだろう。だが、この国にいる魔族たちは誰1人としてそのようなことをしなかった。何故なら‥‥
時は1時間前に戻り‥‥大門にて
その門の前に9人者の魔族たちがやって来たのだった。その門の前にはミノタウロス族が門番をしている。彼らは人間の数倍の大きさで敵対する者を次々と退けてきた。そして手に持つ大槍や大斧は魔族でも持つことが困難と言われているが彼らはそんな武器を軽々と扱うことが出来る強靭な肉体を備えていた。そして一部の者は口から火を吐けるらしい‥‥
「止まれ、ここにはどんな目的で来た」
2人のうち1人がそう聞いてきたのだった。
「観光です」
1人の若者がそう言うのだった。
「‥‥怪しいな。では何故ローブを被っている」
「あぁ、俺たちはここから遠くの村からやって来て、つい先ほどまで仕事をしていたのですが今日でその仕事が終わり、せっかくという事でこの国の観光でもしようかと考えていたのですよ。ちなみにこのローブは俺達の村の近くにある出店で買ったものですよ」
流暢にしゃべるのであった。
「‥‥そうか、では入国の前にそのフードを取ってもらおうか、やましいことがなければ取ることなど造作もないのだろ。それとも取りたくない理由でもあるのか」
もう1人のミノタウロス族がそう言うのだった。彼はこの9人がとてつもなく怪しいと睨んでいたのだった。もしフードの中が敵対している人間だったとなれば即殺さなければならない。そうしなければこの国が滅んでしまうと考えていたのだった。そして若者の答えは‥・・・
「あぁ、良いですよ」
すんなりと応答し顔を隠していたフードを取るのだった。そしてその顔は人間に近かったが人間ではなかった。何故なら頭には猫の耳、頬には髭が生えていたのだった。彼は獣人族であった‥‥
「はい、どうですか?」
「‥‥あ、あぁ、いいだろう。入国を許可する」
そうして彼ら————星乃零達は魔族の国に入国をするのだった‥‥
星乃零と1-G、水河瑠璃、そしてローズとグランはとある宿屋にいたのだった。その宿屋は運よく3部屋空いていたため3人ずつに分かれて寝泊まりする場所を確保したのだった。そして彼らは今零達男3人が寝泊まりする部屋にいるのだった。
「それじゃあ、これからの方針について話すよ」
零が全員集まったことを確認し話し出すのだった。
「…ねぇ、星乃さん、その前に1ついいかしら」
「はい、どうしましたか、水河さん?」
「えっと、その、この姿だと妙に落ち着かないのだけど‥‥」
そう言いながら自身の体を見回すのだった。彼女は今、手と足は犬のような肉球で頭には垂れ耳、お尻には長い尻尾が生えておりどこからどう見ても人間ではなかった。
「まぁ、特に害はないはずですので、しばらくしたら慣れますよ」
獣人となった零が言うのであった。
「でも、あの薬を飲んでしばらくしたら突然顔や体が熱くなったり、あちこち痛み出したから死ぬんじゃないかと思ったよ」
額に2本の角が生えている陽彩が角を触りながら入国する前の事を思い出していた。
入国前、森で覆われた場所で零が対策を考えていると言い、取り出したのは7本の液体が入った試験管だった。それを一気に飲むと、突然顔が熱くなったり、体が痛み出したため死を予感し目を瞑ったが一向に死んだ感じがしないので恐る恐る目を開けると零の顔に変化が起きていた。それは今までなかったはずである猫耳が頭から生えていたり、頬には髭が生えていたのだった。髪の色も黒から灰色に変わっていたため一瞬「誰!」と叫ぶほどだった。そして彼は他のクラスメイトや瑠璃を1人ずつ見て「よし、成功したな」と言ったため何のことか聞こうと思ったが、周りのクラスメイトを見てある変化に気付いた。それは全員人間の姿をしていなかったのだった。
星乃零は猫の獣人、小笠原陽彩は2本角の鬼人、星宮香蓮は兎の獣人、大和里見は耳の長いエルフ、柳寧音は翼が生えたハーピー、柏木理沙は鋭い歯が生えた吸血鬼、そして水河瑠璃は犬の獣人の姿にそれぞれなっていたのだった。
「でも、ローズさんたちは何も変わっていないよね」
と理沙が気付いてそう言うが零は「この2人は少し特別なんだよ」と言い終了するのだった。
「じゃあ、改めて‥‥これから皆にはある事をやってもらおうと思う‥‥」
「ある事って‥‥」
香蓮が聞くと零は間を開けてこう言うのだった。
「皆にはこの国を1日かけて見てもらおうと思う」




