助けるために・・・
夕食後、零の部屋に7人は狭いので1階の店内にて今後の方針を立てるのだった。他の人たちはすでに自室にいるので、2階で話し合いをすれば聞こえてしまう可能性があるためあえてここで行うのだった。
「……で、貴方たちはこれからどうするの?」
水河瑠璃の一言で話し合いが始まるのだった。
「俺は決まっているが、他はどうするかは分からない」
「決まっているって…‥まさかと思うけど1人で助けに行くつもりなの?」
「そのまさかだけど、何か問題でも?」
「問題ありよ。たった1人でどうやって助けるつもりなのよ。相手はあの魔族よ、今の私たちじゃ対抗できる術がない、それにどこにいるかも分からないから助けに行こうとしても助けに行けない‥‥」
「じゃあ、ここで黙って待っていますか?」
「そ、それは‥‥」
零のその一言に反対したが、その正論で瑠璃は黙るしかなかった。だが実際に魔族の圧倒的な実力を見た彼女自身は今の実力で助けに行こうとしても返り討ちに遭ってしまい、そのまま捕らわれてしまう可能性が確実に高い。それに今の魔族がどこにいるのかも誰も分かっていない。何せ数百年前に姿を消して以降誰1人も魔族の姿を確認したという記事や報道が全くないからだ。だから、もしかしたら数日経てばプロの術者たちが何か手がかりをつかんでくれるだろうとそう思い伝えようとしたが、
「‥‥言っておきますけど、人任せにしてしまえばその分生徒たちの身に何か起きる可能性が高いですよ。最悪の場合、何人か死にますよ。それでもいいなら俺はここに残りますけど」
まるで考えを読み取ったかのようにそう告げたのだった。零の言う通り、人任せ——プロに任せてしまえば、その分捕らわれた生徒たちの身に何が起こるか分からない。手がかりが見つかったとしてもそれは数日、数週間後とかかる可能性の方が十分高い。
「じゃあ、どうすればいいの! 悔しいけど今の私じゃ魔族に対して手も足も出ない! 場所も分からなければ行き方すらも分からない! どうすることが正しいの!? ‥‥‥ねぇ、教えてよ」
テーブルをバンと叩いて立ち上がり叫ぶも徐々に弱弱しくなりそして最後は涙目になっていたのだった…
「‥‥では聞きますけど、水河さんはどうしたいのですか?」
零がそう告げるのだった。その問いに瑠璃は
「決まっているわよそんなの、勿論助けに行きたいわよ。でもさっきも言ったけど私じゃあ魔族とは戦えない、えぇそうよ、あんな圧倒的な差を見せつかれて今でも体の震えが止まらない、心が折れそうになる。だってそうでしょ、相手との実力の差を見せつけられたら誰だって挫けるはずでしょ! 他の皆はどうなのよ!」
そう言いながら他の生徒たちを見渡すのだった。きっと彼らも瑠璃と同じ意見を言うはずとそう思っていた。そのはずだが、意外な言葉を言うのだった。
「えっーとですね、副会長、星乃君はその魔族を圧倒していたんですけど‥‥」
「はい、それに合宿中に数百以上のエネミーもどきをたった1人で機能停止させていたし‥‥」
「それに、無詠唱術を使えますし‥‥」
「う、うん、星乃君は強いという言葉じゃ足りないくらい‥‥」
「むにゃ、零は規格外~」
「もう、褒めても何も出ないぞ~」
「「「「「いや、褒めてないし(にゃ~)!!」」」」」
零のその一言にクラスメイトは同時にツッコむのだった‥‥
「貴方たち‥‥」
そんなやり取りに頭が冷えたのか、あるいはこんなに熱くなった自分が恥ずかしくなったのか、あるいは両方を思いながら腰を下ろしたのだった。
「はぁ‥‥・分かったわよ。好きにすればいいわ。私からはもう何も言わない。どうかお願い、他の生徒を‥‥莉羅を助けて」
頭を下げる瑠璃に対して
「水河さん、頭を上げてくださいよ、後輩に頭を下げるなんて‥‥」
「いいえ、お願いするのだからどんな人にでも頭を下げるのは当り前よ」
頑なに頭を下げるのであった。
「分かりました、分かりましたから頭を上げてください‥‥」
珍しく焦る零であった‥‥そしてようやく頭を上げた瑠璃に零は
「それに瑠璃さんにも俺と同行してもらうつもりですし…‥」
その一言に瑠璃は「えっ」と言うのであった。
「だって、捕らわれている生徒の殆どは俺を無能扱いしているじゃないですか、そんな俺に助けられても、プライドが傷つくし、あるいは頑なに捕らわれている場所から出ようとしないだろうし‥‥」
「えっ、さすがにそこまではないんじゃあ‥‥」
「いいや、絶対あるね! だから他の生徒の救出と誘導を頼みたいんですけどいいですか?」
「まぁ、そこまで言うならば分かったけど、もし魔族と出会ったらどうするの? 今の私は魔族と戦っても勝てないって言ったけど‥‥」
「あぁ、そこは大丈夫です。この話し合いが終わったらある知り合いと取引をしますので」
「取引って‥‥上手く行くか分からないのに‥‥」
「あぁ、大丈夫です。絶対に成功しますので」
その言葉から絶対的な自信を感じ取れるのだった。だが、その表情は何やら不安げだった‥‥
「あ、あの星乃君、私たちも連れて行って欲しい。私たちは、その、あまり何も出来ないけど、それでもじっとなんてしていられない、だからお願い」
柏木理沙は真剣な表情でそうお願いをしたのだった。そしてその答えは‥‥
「‥‥まぁ、皆はどうしようか考えていたけど、確かに俺の目が届く範囲内にいた方が安心かな」
そうして、零を入れた7人は捕らわれた生徒の救出を決めたのだった。
そして翌日朝の7時になる前数分前、第3術科学校の屋上には誰もおらず、鳥の鳴き声しか聞こえない静かな場所だった。だがその場所に突如7人の人物が現われたのだった。
「改めて思うのだけど【座標転移】は凄いわね‥‥」
転移が完了すると、水河瑠璃がそう呟くのだった。
「それにしても星乃君、どうして屋上に転移したの? てっきりこのまま魔族のいる場所に転移するかと思ったけど‥‥
大和里見がそう返すが
「あぁ、それは、魔族領まではこの【座標転移】じゃ行けない場所になっているからだよ」
そんな重大なことを言う星乃零であった。
「えっ、じゃあ、どうやって行くつもりなの? 【座標転移】で行けないならどうやって‥‥」
「行くつもり?」という前に近くにある扉付近の光景が歪み始めた。この光景を始めてみるものにはエネミーと思うのだが、零だけは平然としていた。そして歪んだ光景から2人の人物が現われたのだった。1人はメイド服を着ているクールな女性、もう1人は執事の服を纏った物静かな少年だった。
「星乃様、お待たせしました」
「いや、時間通りだよ」
メイドの女性が1歩前に出てスカート裾を持ちお辞儀をしたのだった。少年の方も同じくお辞儀をしたのだった。その光景に
「えっと、星乃さん、こちらの方は…」
あまりの衝撃に驚いていたのだった。何せ誰もいなかったその場所からいきなり2人の人物が出てきたのだから驚くのも無理はなかった。
「あぁ、こちらは‥‥」
「星乃様の同行者様ですね。お話は聞いております。私はメイドのローズと申します」
「同じく私はクランと申します」
そう簡潔に自己紹介をしたのだった。
「ではさっそく目的地である魔族領へと向かいましょう」
そしてメイドのローズは何もない場所に手をそっと突き出すと今まで何もなかったその場所に突如空間が歪み、そして人が1人は入れるほどの入り口が現われたのだった。他の者たちは何が起きたのか理解するまでに数秒かかったのだった。だが、零は何事もなく‥‥
「おーい、早く行くぞ」
零がそう声を掛けると6人ともはっと我に返り、そうして先頭にクランが先に入るのを確認すると、恐る恐るクラスメイトと水河瑠璃は入っていくのだった。そして最後に零とローズがその入り口へと入るのであった‥‥




