表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創られた世界に破壊を込めて  作者: マサト
魔王復活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

329/349

2人の魔族

 5人の前に現れた2人の魔族、1人は全身褐色の肌で服装はファンタジー世界で言うなら貴族が着ているであろう動物の毛皮を使っていそうな高級服を着て片手には黒い鞭を手にしていた。もう1人は老人だが何らかの方法を用いているのか地に足はついておらず宙に浮いている状態で歩み、片手には炎の球を発動している状態でいつでも撃てる状態にしていた。

 「ミザリー、サタルド……」

 2人の姿も見て和也はその名を言うのだった。

 「貴様には魔王様よりこの謁見の間に繋がる部屋を死守するよう命じられていたはずだ。だというのに何だその体たらくは。まさかと思うがそこの人間に醜態をさらしたというのか」

 ミザリーは和也の傍にいる絵里奈を見て

 「ふん。こんな大した力を持っていない人間、私なら一瞬で始末できるというのに、情けない。それでも貴様は七魔眷属なのか?」

 「ほっほっほ。そう言わんでも良いではないかミザリーよ。シンはおそらくその人間ではなくあの人間に負けたのではないか? 何せあの人間は我々魔族しか知らないはずの失われし剣術を使用したのじゃからな」

 サタルドは膝を折っている小夜を見るのだった。

 「ゴホッ!! ゴホッ! ……はぁ、はぁ、はぁ…」

 「…まぁ、もう使える体力も気力ももうないがな。まぁせいぜい1回は使えるようじゃがそうすれば間違いなく死ぬじゃろうがのぉ」

 そう聞いた小夜は魔武器を使って何とか立ち上がり

 「……上等。だったら1回でお前たち2人をまとめて斬ってやるわよ」

 「だ、駄目!! さーちゃん! そんなことしたら!!」

 「……いいのよ。私は本来生きていること自体奇跡のようなもの。だったらここでこの命を散ることになっても後悔はないわよ」

 優美の制止を聞かずそのまま魔武器に力を注ぐ。が、

 「遅い」

 ミザリーの持つ鞭が小夜が動くよりも早く魔武器を持つ両手に絡みつき、そのままヒュンと壁まで投げ飛ばす。

 「さーちゃん!!!」

 吹き飛ばされた小夜に駆け付けるが

 「おっと、そうはさせんのぉ」

 サタルドが発動している炎の球が瞬時に槍の姿に変えそのまま優美めがけて投擲する。そして

 「かはっ!」

 炎の槍は優美の腹部に刺さり、そのまま前のめりに倒れ込むのだった。

 「……さ、さーちゃん……」

 そのままパタンと動かなくなるのだった。

 「…あ、ああ、ああああああ!!!」

 2人が動かなくなるのを見た実憂は恐怖し、その場でペタンと座り込むのだった。

 「貴様のような奴は殺す価値もないな。だが、ここにいる以上はその2人と同様死んでもらうぞ」

 ミザリーは恐怖で声を上げている実憂に近づくのだった。だが、

 「……やめろ。そいつを殺したって何の意味ないだろ…」

 寸前で和也がミザリーにそう言うのだった。

 「…へぇ。お前のような端くれ風情がこの私に口答えするのか?」

 それがミザリーの癇に障ったのか

 「どうやら貴様はそんなに死にたいようだな」

 一瞬で和也の元へ行きそのまま首を掴み上に持ち上げるのだった。

 「…ぐっ、かはっ!!」

 「和也!!」

 あともう少しミザリーが力を入れるだけで和也の首がへし折れるというところで絵里奈がその名を言うことでミザリーはピクッと反応するのだった。

 「…和也? あぁ、そういえば貴様は人間社会にいる時はその名で通っていたな。……まさかと思うが貴様が醜態を晒したのはこの人間に対して情が芽生えたからか?」

 「……んなわけ、ない、だろ。俺は七魔眷属、魔王様直属の部隊の1人だ。そんな情この隊に入る前から捨てている……」

 「そんなの当り前だ。我らは魔王様に選ばれた存在だ。そんな情は誰もが捨てているに決まっているだろ!!」

 「が、がはぁ!!」

 さらに和也の首を絞める力を強くするのだった。

 「やめて!! 何でもするからその手を離して!!」

 絵里奈が魔族相手にそう叫ぶと

 「……何でも、か。人間、その言葉に間違いはないな」

 「…え、えぇ、そうよ。なんだってやるわよ」

 まさかやめてくれると思っていなかったのか絵里奈は戸惑いながらもそう宣言するのだった。

 「ミザリー殿?」

 意外な展開にサタルドは首を傾げるのだった。

 「いいだろう。私は寛大だ。今から私の言うことを聞くというなら貴様だけは特別に逃がしてやろう」

 そうして懐から1本のナイフを絵里奈のもとに放り投げるのだった。

 「そのナイフでそこで怯えている人間、貴様が恋焦がれているシン。このどちらかを殺せ」


 ミザリーの言っていることはこういうことである。

 自身が助かりたければ山影実憂か、あるいは魔族である一条和也を目の前に落ちているナイフで殺せ。しかも、ミザリーは絵里奈が和也のことが好きだということを見抜いていたのだった。

 「……えっ、な、なんで……」

 「何でとはどういうことだ? そこで怯えている人間を殺すことか? …あぁ、それとも貴様がシンのことが好きになったということが分かったということか? そんなものこれまでの言動で分かることだ。何せ貴様は周りの人間がどうなろうともシンだけにしか目に入っていなかったのだからな。だからこそ貴様はシンが好きということが情を捨てたこの私でも分かったということだ」

 「……だからって、何で和也を殺すの……? 仲間じゃないの?」

 「仲間? はっ、これだから人間は愚かで、1人じゃなければ何も出来ないわけだ。我ら魔族に仲間意識などあるわけがない。あるのは常に誰かを殺し、蹴落としながら常に上を見続け、そして魔王様のためにこの命を捧げることだ」

 鞭をパァン!! と床に叩きつけ

 「分かったならさっさと殺せ。何なら誰から殺すか順番をこちらが決めてやろうか?」

 「………やる。やるからそれ以上和也を苦しませないで」

 そうしてナイフを手にし、絵里奈は実憂の方へと向かうのだった。

 「…や、やめて、来ないで…」

 絵里奈がナイフをもってこちらに来ることに気付いた実憂は後ずさりをしながらここから逃げようとした。

 「おっと、どこへ行かれようとしているのでしょうか?」

 実憂の背後にすでにサタルドが回っており実憂の首を掴み上げそのまま絵里奈の前に放り投げるのだった。

 「ひっ⁉」

 目の前にはすでにナイフを振り上げている絵里奈がいるのだった。

 「ごめんなさい。私は貴方に恨まれてもなにも文句を言えないわ。だから、和也の代わりに死んで!」

 そうして実憂の頭部めがけてナイフを振り下ろすのだった……。


 「………え?」

 そう呟いたのは実憂、

 「……な、なんで…」

 そう驚いたように言うのは絵里奈だった。彼女は実憂を殺すためにナイフを振り下ろした。そして本来ならそのまま実憂は死ぬはずだった。だが、今起きている結果は違いナイフを振り下ろした先にいたのは、

 「くっ……。やっぱ、柄に合わないことするんじゃなかったな……」

 2人から離れていたはずの和也が一瞬で2人の間に割り込み、そのまま絵里奈が振り下ろしたナイフを肩で刺し受け止めていたのだった。

 「何で、何でこんなことを……私は貴方を助けたいと思って…なのに、どうして…」

 「なぁ、そんなことをして俺が喜ぶとでも思っていたのか? だったらアンタは馬鹿だよ、それも超が付くほどに。もしそんなことをしたら俺は一生アンタを恨むよ」

 絵里奈が後ずさりしナイフから手を離した瞬間、肩に突き刺さっているそのナイフを勢いよく抜き取りそのまま真っ二つに折るのだった。

 「あんな口車に乗って本当にここから逃げられるとでも思っていたのか? そんなことまずあり得ないことだ。魔族たちは人間を恨んでいる、それこそ八つ裂きにしたり人体実験といった死んだほうがマシだと思えるほどの苦しみを徹底的に与えるほどに…」

 そう言いながら立ち上がるが、

 「…くっ、」

 「和也!?」

 ふらつく和也を前から支える絵里奈。

 「……さっきのナイフに毒を塗っていやがった。もし人間に刺されば間違いなく即死だったな」

 「…ごめん、ごめんなさい、和也。………私、貴方に、山影さんにひどいことを……」

 絵里奈は和也から見えない胸元で泣いていたのだった。

 「……俺はこんなことされても特に気にしない。それよりも彼女に早めに謝っとくんだな、じゃないと後悔するぞ…」

 「……えぇ、終わったらちゃんと謝るわ。許してもらえるか分からないけど……」

 「それでも謝るしかない………ケホッ、ケホッ!! ……ちっ、思ってたよりも毒の回りが早いな」

 和也の口から少量だが血が出ていたのだった。

 「……な、何をしてくれた!! シン!!!」

 ヒュン!! とミザリーが放った鞭が絵里奈に向かっていく。

 「くそっ!!」

 和也は絵里奈を突き飛ばすと絵里奈に向かっていたはずの鞭が和也の首に巻き付くのだった。

 「折角の余興を貴様は台無しにしてくれたな!! ならば貴様は魔族の、七魔眷属の裏切り者として今すぐ死ね!!」

 ミザリーの持つ鞭を手元に引っ張ると和也に巻き付いている鞭がより強く締め付けていく。

 「…ぐっ、…がっ、……かはっ…」

 締め付ける強さは徐々に増していき和也の口から泡のようなものが出始めていた。

 「やめて!! それ以上和也を傷つけないで!!」

 絵里奈はミザリーに魔力弾を放つため詠唱を始める。

 「おっと、そうはさせませんぞ」

 だが、途中でサタルドが無詠唱で氷の弾丸を絵里奈の横腹に命中させる。

 「かはっ!!」

 氷の弾丸は横腹に命中し、そのまま骨が臓器に刺さった影響か口から吐血し、そのまま倒れ込むのだった。

 「……か、かず、や…」

 絵里奈は意識が薄れていく中でそう呟き、そして意識を失ったのか和也に向けて伸ばした手をパタンと床に落とすのだった。

 「貴様を殺した後、ここにいる人間たちもすぐに貴様の後を追わせてやる!! だからさっさと死ねぇ!!!」

 そしてこれまで以上に、鞭に力を入れる。

 今この場に立っているのは2人の魔族だけ。対して未だに気を失っており起き上がる素振りがない安藤小夜、炎の槍で撃ち抜かれ意識がない影山優美、意識はあるが完全に戦意喪失に陥った山影実憂、内臓に骨が刺さっておりこのまま放置すれば確実に死に至る三条絵里奈、そして、味方から裏切り者扱いされあと数秒で死ぬであろう一条和也。

 彼女たちは現状まず助かることはないだろう。何故なら、七魔眷属であるミザリーとサタルドはとてつもなく強い、それこそ魔王の次といってもおかしくはないだろう。故にこの状況から一気に形成が逆転することはほぼ不可能といっていいだろう。

 だからこそ、


 「【死滅ノ手(デス・ハンド)】」


 突如としてサタルドの背から左胸にめがけて何の前触れもなく誰かの手が生えたことがきっかけで戦況が大きく変わるだなんて一体誰が予想できただろうか……。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 大体1分ぐらいで見終われるように書いております。  内容次第では少し長くなります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ