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創られた世界に破壊を込めて  作者: マサト
魔王復活

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きっかけⅡ

 自殺未遂から3か月ほどが経過した。学校では私が魔力停滞者だということがすでに校舎内に広がっており、周りからは「あいつに近づくと魔力停滞者にされちゃう」「関わるだけで魔力が停滞する」等といった嘘出鱈目な陰口がそこら中から聞こえた。それに対して私はとことん無視をした。理由は単純でいちいち関わるだけ疲労が溜まる一方だからだ。そっちがその気ならこっちだって相手にしない、そう思いながら過ごしていたのだが数週間後、とある女性集団にトイレに連れられるのだった。その女性とたちはドラマなどでよく見るカースト上位者たちが群れているだけのロクでもない集団だった。彼女たちは周囲の男女や教師たちからの信頼が厚い。故に彼女たちが何をしても一方的に生徒や教師は彼女たちを信じるのだった。

 例えば最近では私も利用している電車で痴漢騒動が起きた時だ。偶然にも私はその痴漢が起きた電車に乗っており降りる場所も同じだったため遠くからだが事情徴収の様子を見ていた。加害者の男性は『ちょっと肩が触れただけだ』と供述を述べている。これだけでは痴漢をしたという証拠には弱いと思われる。対してカースト上位の女生徒とはこう言った。

 『グスッ……脅迫を耳元で囁かれた』『か、体を密着されて、ブ、ブラ、を外され……』

 話している中でよほど辛い目に遭ったのか嗚咽を出しながら涙を流したり、体を震わせ両手で体を抱える…。といった先ほどまで私は痴漢を受けていましたという演技を警察の目の前で行うのだった。そうすることで警察や周りにいる人々を巻き込み女生徒は被害者で、その男性は加害者であるという強い印象を与える。そして結果は誰がどう見ても一目瞭然で女生徒は被害者、男性は加害者であると決められるのだった。その後男性は痴漢をしたということで署に連れて行かれるのだった。その際も男性は『私はやってない!!』『私は無実だ!!』と大きな声で警察に訴えるも警察は男性の相手をするつもりがないのか聞く耳を持たなかったのだった………。その後、私は偶然にもこのトイレ場で聞いてしまったのだ。『さっきの男、あんな必死になって叫んでいる顔が面白かったわ~』『思わず笑うところだったよ~~』『私たちにかかれば世の男をだますのなんて楽勝~~』と……。

 そんな過ぎた話から戻り、私はそんなカースト上位者の集団にトイレへと連れ込まれるのだった。きっかけは私がこの女生徒たちを無視続けたことが原因の様で『魔力停滞者の分際で何調子に乗ってるの?』『折角私たちが優しくしているのになんで分からないの?』等と適当に用意したであろう言葉を私に対して言うのだった。そんな中、

 『絵里奈ってさぁ、家族から見放されたんでしょ?』

 その一言が1人の女生徒から聞こえたのだった。

 『それってつまり、術者の貴方には何も期待していないってことでしょ? …あぁ、それとも捨てられてもう帰る家がなくなったのかなぁ?』

 『えぇ? 噓でしょぉ?』『笑えるぅ~』と周りはその生徒が言ったことに対して面白おかしく笑うのだった。……一瞬、この人たちは私の家族が言っていたことを聞いていたのかと疑ってしまった。だがそんなことはないと思いきっと偶々言い当てたのだと思い込む。

 『それじゃあ、今の絵里奈はパパ活なんかしてるんじゃない?』

 『あぁそれあり得そー。だってそんな地味な見た目して中身はきっとヤリまくってそうだし』

 『えぇ~。そんな奴がクラスにいるなんて信じられない』

 そんな身も蓋もなく勝手に話が進む中、ふと何かを思いついたのかリーダー格の女生徒は私に対して言うのだった。

 『ねぇ。アンタがパパ活やっているっていう噂を広めたくなかったらさぁ、私たちのパシリになってよ。この前まで数人いたんだけどさぁ、試しにちょっと知り合いの男友達に貸したら数日後にはどっかにいなくなってさぁ。それで聞いてみたらお楽しみの最中に逃げないように首輪をしてたみたいなんだけどちょっと目を離したすきに逃げられたみたいなんだよねぇ』

 その話を聞くに、その女生徒たちはおそらく数日前、複数の女生徒に性的暴行が起き、その女生徒たちは警察官に保護されたっていうあの報道された件だろう。報道では体中に痣や傷が出来ていたと流れていた。そしてその女生徒たちは今どうしているのかは不明である。

 『もし断ればどうなるか分かってるよね? パパ活なんかやっていることが学校に、元家族に知られたくなかったら、さ』

 ……一言で言えば彼女の言っていることはもう支離滅裂しかない。私がパパ活(当たり前だがやってない)をしているというこの場で適当に思いつき、学校内に広めたくなければ従順な人形になれ。そして使えなくなったら性的暴行をするような男性たちの元へ渡すだろう。話を聞くに彼女たちは十中八九裏社会か何かとの繋がりがあるのは明白だろう。だがそれをいちいち教育委員会に言ったとしても彼女たちの日頃の生活を知る周りはそれは否定するはず、その数はおそらくこの校舎にいる生徒のほとんどがだ。そしてもし彼女たちが知れば私もこの前までいたという女生徒の二の舞になる。だからここは話を合わせようと思った。当然だが彼女たちと一緒にいたってメリットはなくむしろデメリットしかない。私だって周りからパパ活をやっていると陰口を叩かれるのは嫌に決まっている。だからこそここは彼女の言いなりになり状況を見ながら縁を切るつもりだ。そうして『分かった』といおうと口を開こうとしたところで

 『ここの女って便所で話し合いとかするのか? つくづく面倒な奴らだな』

 入口の1人の男子生徒がいたのだった。

 『何アンタ? ここは女子トイレなんですけど? さっさとどっか行ってくれない? それとも先生でも呼ばれたいの?』

 『別に中に入っていないんだから怒られる理由にならないだろ? ……それよりなんか面白そうな話してそうだから俺も混ぜてくれねぇ?』

 『………ちっ。……あ~あ、もういいや。なんか冷めちゃった』

 そう言いながら女生徒の集団はトイレから出たのだった。

 『? なぁ、結局何の話をしてたんだ?』

 『……大したことじゃないわ。単なる世間話よ』

 そうして私もトイレから出るのだった。その際、男子生徒を通り過ぎる時チラッと横顔を見たのだがほんの少しだが3か月前のあの場所で見た人物と雰囲気が似ている気がしたのだった。

 それから数日後に知ったのだが、彼はどうやら他のクラスに転入してきたらしく、すでに12月だというのにこの時期にとは珍しいことから私たちの学年では少し話題となっていた。そして名前は一条和也というらしい。


 『あれ? あの時のやつじゃん』

 『……貴方は確か、一条和也、さん?』

 『なんだよ。ここは寒いから誰もいないと思ってきてみたらまさか先客がいたんてな』

 12月の屋上は暖房器具がないためとても寒い。故に誰もこの時期に屋上なんて来ようとはせず学食や教室で昼休みを過ごしている。

 『別にいいでしょ? 貴方こそどうしてこんな寒くて静かな場所に来たの? 貴方の性格上、他の人と一緒に食べれるでしょ?』

 『人を見た目で決めるなよ。生憎俺はこの学校に馴染んでないからな、自慢じゃないが友達なんていねーよ』

 そう言いながら彼は私の隣に座るのだった。

 『……どうして私の隣に座るのよ?』

 『いいだろ別に。ここの方がなんか落ち着くんだよ』

 そうして彼は持っていたコンビニのパンを食べ始めるのだった。

 『……なぁ、それってもしかして作ったのか?』

 『そうだけど、それがどうしたの?』

 『…なぁ、1つくれねぇか? 実は金欠でさぁ。今あるコンビニパン1個買えるのがやっとなんだよ』

 『…一体金欠になるまで何に使ったのよ』

 『そりゃあ、この美少女ゲームよ』

 そうして絵里奈に手にしているスマホ画面を見せるのだった。それはゲーム…の公式サイトだった。だが、そのサイトは、

 『……こ、これって、まさか如何わしいゲームなんじゃあ…』

 『はぁ? 如何わしくねぇだろ? これは男のロマンが詰め込まれている美少女ゲームだ』

 『私から見ればそんなものは如何わしいものよ!! 貴方のような如何わしい男子なんて知らない!』

 『えぇ~~。そこを何とか~~』

 駄々こねても結局あげるようなことはしなかった。そもそも初対面の異性にいきなり弁当のおかずをあげるようなことは誰もしないだろう。だというのにどうして私なんかに声を掛けたのか分からなかったのだった……。


 それからも彼は私のいるところに来ては隣に座り買ってきたコンビニのパンを食べるのだった。そして毎度私のおかずが欲しいと言ってくるのだが、その全てを私は断る昼休みを過ごす。時折私はいつも食べている屋上から別の場所、それこそ空き教室や人の来ない中庭でご飯を食べるのだが、私の行動が筒抜けなのかひょっこりと私の前に現れるのだった。私は1人で食事をとりたいというのに彼はそんなことお構いなしに来るためいい加減しつこいと思い

 『……私が魔力停滞者だってこと、流石の貴方でも知っているでしょ? これ以上私に関わると貴方も周りから陰口叩かれるわよ』

 そう突き放すように言い、彼との距離を離そうとする。だが彼は

 『……あぁ~、そんなこと周りが言ってたなぁ…。でもさぁ、俺転入して未だに友達いなくてさぁ、こうして誰かと話さないとなんか落ち着かねぇんだよ』

 『だったら私以外の友達でも作ればいいでしょ。貴方の手にしているスマホ画面に映っている如何わしいゲームでも見せれば少なくとも何人かは食いつくでしょ』

 『いやぁ、そうでもねぇんだよ。ここの生徒ってなんかいつもいつも術の特訓だ、訓練だって言っていつも実技場に休み時間にでもいるからほとんど教室に人がいねぇんだよ。だから話し相手で空いているのが三条さんだけなんだよねぇ』

 『……だから私とこれからもこうして一緒に居たいと?』

 『そうそう。別に長話に付き合わなくてもいいからさぁ、せめて俺が食べ終わるまででいいからさ』

 どう返事をすればいいか分からなかった。これまで私はこうして誰かと長く話したことはなく、それこそ家族との時間だってほとんどとれず最後に話した記憶すらない。もしかしたら彼との話の方が家族といたころよりも長いかもしれないほどだ。それに私も彼と同じように友人と呼べる人なんていた記憶がない。それこそ魔力停滞者と呼ばれる前からだ。私は昔から不愛想で周りから話題を振られてもうまく返すことが出来ずいつも一言程度で終わる何ともつまらない人間だ。だけど彼は私が一言で返そうとまるでマシンガンのように話を聞かされるのでいちいち返すのも疲れるほどだ。

 ………でも、その疲労感がどことなく嬉しいと思うのはおかしいことだろうか? 彼が私の元へ来ると心のどこかで嬉しい気持ちになるというのは気のせいだろうか? 彼の話を聞いているだけというのに思わず笑顔になりそうになるのはもしかしたら……

 『……分かったわよ。好きにすれば?』

 『おぉ! さんきゅー! もし断れたらどうしようかと思ったよ』

 私がそう返すと彼は笑顔を見せるのだった。

 ……もしかしたら私は、如何わしいゲームの話や、どうでもいいような話題を聞かせてくる彼のことが好きになったかもしれない………。そう思うと内心笑顔になっていた、気がする。

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 大体1分ぐらいで見終われるように書いております。  内容次第では少し長くなります。
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