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創られた世界に破壊を込めて  作者: マサト
天使顕現

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308/350

定期集会 〜魔族襲撃後〜

 それは第3術科学校が魔族に襲撃されて翌週のこと…。

 朝比奈莉羅は朝比奈家で行われる定期集会に出席していた。その場には朝比奈家の者だけでなく他の一族も出席する月に一度の情報共有会ともいえる場であった。広さは大河ドラマに出てきそうな武士たちが一度に多く集まれるような広く参加人数も十数名から二十数名ほどが一部屋に入れるほど広かった。

 「魔族襲撃後の第3術科の状況はどうなっている」

 第一声は当主である朝比奈海斗が行うのだった。

 「はい。当時合宿に行っていた高等部1学年以外の生徒全員である小等、中等部1人残らず魔族の襲撃に遭い連れ去られました。話によればおそらく魔族たちのいる場所だと思われます。…ですが、連れ去られて3日目にはその全員が生還しました。後日話を聞くと何でも『無能』である星乃零、そして1-G、水河瑠璃が関わっているとのことでした」

 1人の人物が生徒たちと、術者警備隊からの話をまとめた内容を報告するのだった。「こちらからも報告があります」ともう1人が挙手をし

 「その者たちのほかにメイドの女性と執事姿をした少年がいたとのことです、その者たちは何らかの方法で魔族のいる場所から第3術科まで繋げる扉を顕現させ、生徒たちからはその扉をくぐったら第3術科まで戻ってこれたとのことです」

 「その後しばらくして『無能』たちが学校の屋上に姿を現したことを偶然居合わせた術者の者が確認、その後、事情聴取を行いました」

 「…それで、彼らはどう答えた」

 「それが、『さぁ?』『知らない』『こっちも巻き込まれただけ』等という話を聞いた生徒との話と食い違う内容を話されていたようで……」

 「……そうか」

 そう朝比奈海斗は言い、

 「当主様、でしたらそこにいる『欠陥品』に聞いてみればどうでしょうか? その者は生徒をまとめる立場だというのに無様に魔族に敗北し、学校の品格を落とし挙句の果てには生徒たちを危険な目に遭わせたまさしく『欠陥品』にふさわしい存在。ですが、少しはあの場で何があったか話すことは出来るでしょう」

 そう言い朝比奈海斗から少し離れた朝比奈莉羅を見るのだった。そうして「やはり欠陥品は所詮は欠陥品ということか…」「俺なら恥ずかしくてこの場にいられないな」「魔族如き日ノ本の者なら容易く対処できるはずだというのに…」「情けない」「それでも朝比奈家の者かしら?」という罵詈雑言が莉羅の耳に届くのだった。

 そんな中、莉羅は

 「………申し訳ありません。魔族に連れ去られた後の記憶が曖昧で、気付いた時には病院のベッドの上でした…」

 そう答えるのだった。だが、

 「『欠陥品』ごときがそんな嘘をつけるとでも思っているのか! お前が『無能』に抱えられて生徒たちの前にみっともない姿で現れたということはすでに報告を受けている! それともお前は当主様であり親の前で平気で噓をつくような人間だということか!」

 その者は術者たちから聞いた話をすでにまとめており、当然当時の莉羅の状況が分かっていることから彼女が嘘をついていると一瞬で分かったのだった。

 「そ、それは……」

 莉羅はあの時見たことを話すことが出来るのだが話そうとはしなかった。何故ならあの場で起きたことを話せばもしかすれば彼、星乃零に多大な迷惑がかかり最悪彼の住んでいる喫茶四季という場所まで日ノ本たちが押し寄せる可能性があると思い、彼や彼の周りにいる人たちに日ノ本が関わらないようにするためには嘘の発言を言うしかなかった。だけどそうなれば当たり前のように自身に『欠陥品』や彼女を貶めるような発言が飛び交うのだがそれはこちらが我慢すれば何の問題はなかった……。

 「お前たち、もう良い」

 罵詈雑言が飛び交う中、朝比奈海斗がそれを止めるのだった。すると先ほどまでの騒がしさが嘘のように止まり、

 「…お前が何故そんな分かりやすい嘘を言ったのか、この際どうでもいい」

 「お父、様?」

 「だが覚えておけ。お前がそんな態度をとり続けるなら『欠陥品』という汚名はいつまでもなくなることはないぞ」

 「…………はい」

 その目は親が子を叱るような目、ではなく、本当の意味で子ではない、まるで赤の他人…。そんな意図があるようだった。

 「当主殿。その辺でおやめになられてはいかがでしょうか?」

 そこへ1人の人物が入ってきた。その人物はご高齢だが、まだまだ元気そうな姿をしており着ている服はどこかの修道院に居そうな神父の姿だった。

 「当主様、こちらのお方はどなたでしょうか? 見たところ日ノ本の者ではないようですが…」

 その神父が来ることはどうやら誰も知らなかったようで、

 「皆にも紹介しよう。こちらはセインという術者教会を管理している者で、これまでに我々日ノ本と協力関係を結びたいと前々から申していた。だが、今回の件を受けて我々と教会はこの度更なる協定を結ぶことに決めたことを報告するためにこの場に来てもらった。このセインという者は教会の中でも上位の地位におり、これまで以上に日ノ本と教会は手を取り合えることとなるだろう」

 そう言うと「おぉ!」「これで魔族が来ても大丈夫ですな!」「さすがは当主様だ!」等という海斗を褒め称えるような発言をするのだった。

 「改めて皆さま、初めましてセインと申します。この度協会は先の件である魔族の襲来を受けて対策防止という形で皆様日ノ本十二大族との連携を決意いたしました。本来協会と皆さまとは別々の位置におります。ですが、我々協会は魔族襲来、そしていずれ来る厄災に対抗するため本日をもって日ノ本と連携をとることとなりました」

 そう言いお辞儀をするのだった。そんな中、

 「セインと申されましたか、先の、その、厄災とは何でしょうか?」

 1人がそう言うと周りもザワザワと騒ぎだすが、その質問が来ることが初めから分かっていたかのように「これより説明いたします」と言い

 「厄災、一言で言うなら魔族の王、つまり魔王の目覚めが近づいていることです。そして魔王が目覚めればすぐさまに全ての魔族に命ずるでしょう。我々人間たちを滅ぼせ。と」

 その口調からしてどうやら冗談ではないと誰もが気付くのだった。

 「…ですが、ご安心ください。魔族、そして魔王に対抗できる手段はあります。それは、【天使の魔力】という絶大な力をこの地に顕現させることです」

 そう盛大に言うのだった。

 「もしその【天使の魔力】があれば来るべき魔族たちに対抗できるということでしょうか?」

 「はい。ですが、これだけでは足りません。更には別に【大いなる力】という【天使の魔力】と対になる力も必要となります。そうすることで常人を超えた力を得て人類の未来は守られることでしょう」

 おぉっ!! とこの場にいる者たちは思わず声を上げるのだった。

 「質問です。その【天使の魔力】と【大いなる力】というものはどこにあるのでしょうか? それは何かの形をしているのでしょうか?」

 「ご安心ください。【天使の魔力】の在りかはすでに把握済みです。そして、【大いなる力】についてもすでに在りかは把握しております。ですが、こちらの【大いなる力】に関しましては少し問題があります」

 「セイン殿、その問題とは?」

 朝比奈海斗はそう伺うと、

 「【大いなる力】の傍にはとある人物がおります。その人物を説得しない限りその力を手にすることは極めて難しいでしょう」

 「その人物とは? それとその人物は1人なのか?」

 さらに海斗が質問し、

 「………星乃零」 

 その言葉に朝比奈莉羅ははっと顔を上げるのだった。

 「星乃零、それってあの『無能』のことか? なぜその者の名が挙がるのだ?」

 「確かにあの者は皆さまの仰る通り無能かもしれません。…ですが、もし、彼がわざと無能として振舞っていたらどうされますか?」

 「振舞う? 何を馬鹿なことを言う。あいつは多くの術者たちが次々と生まれていく中で過去最低、いや、この歴史上で術者ではないはずなのに術者として生まれた史上最悪の『無能』だぞ? 何を恐れることがある!」

 動じずにセインに言い返すのだった。

 「……そうですな。申し訳ありません。私の出過ぎた発言でした。この事はどうか忘れてください」

 そう謝罪し「フン、全くだ…」と呟きその場に再度腰掛けるのだった。

 「…話を戻すが、『天使の魔力』はすでに把握済みといったが、どこにあるのだ?」

 話を進めるかのように海斗はセインに声を掛けるのだった。

 「はい、それは…」

 そうして足を動かし、

 「貴方の心臓の中にあります」

 その人物の前まで行き目線を合わせるかのように腰を下ろすのだった。

 

 「………え?」

 私はそう呟くしかなかった。

 「『天使の魔力』は貴方の心臓の中にあります。朝比奈莉羅さん」

 そう確信したように言うのだった。そうして「あの『欠陥品』が?」「だが、あの当主様が信用されるお方が言うには…」「だが信じられないな…」という言葉が聞こえるのだった。

 「朝比奈莉羅さん。確かに今は信じられないでしょうが、いずれ自身が素晴らしい奇跡を身に宿していることを自覚するでしょう。なので今は落ち着いて考えて……」

 そう神父さんは収めようとするが

 「莉羅、今すぐ決めなさい。その力を持って我々人類を救うと」

 だが海斗はこの場で考える時間を与えずすぐに決めさせようとするのだった。

 「お待ちください。当主様。魔王の復活にはまだ時間はあります。今すぐ決めるというのはまだ早いかと…」

 「今すぐ決断しなければ時期に迷いが生まれる。迷いが生まれれば救えるはずの命が救えなくなることは当たり前だ。そのせいで…」

 悔やむように言い顔を下に向けたのだった…。

 「いいか莉羅。この際だから言うが、お前の母を殺した者を私はこの目で見た。そしてその者はこう言いその場から消えた。

 【ジェネシス】と」

 そう言うのだった。そして

 「莉羅、これまでお前には辛い目に遭わせてきた。それこそさっきもだ。……すまなかった」

 大勢がいるこの場で私に向けて頭を下げるのだった。

 「だが、あえて言わせてもらう。日ノ本に、いや、私の、莉羅の大切な母親のためにその力を使い魔族、魔王、そしてジェネシスを倒してくれないか」

 ……お父様はこれまで私には何の干渉もしてこなかった。それこそ誕生日や学校の発表会には一度たりとも来てないし、おめでとうとの一言だって聞いたことがなかった。でも、ここまで頭を下げるくらい必死な様子で頭を下げるような姿は生まれて初めて見てきた。

 …だからだろうか? こうも言葉がすんなりと出てくるのは。

 「……分かりましたお父様。私の身に宿している【天使の魔力】をこの国のため、そして母の仇のために使うと誓います」

 そうして星乃君、そして瑠璃ちゃんといった周りの誰にも言うことが出来ない秘め事を私の心に刻むのだった……。

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 大体1分ぐらいで見終われるように書いております。  内容次第では少し長くなります。
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