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創られた世界に破壊を込めて  作者: マサト
天使顕現

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306/349

瑠璃と莉羅

 「…どうやら成功したみたいかな」

 互いの一撃がぶつかり合う中で天使ヴァレンティアの背後に水河瑠璃が接近、そして持っていた1本の鍵を心臓に突き刺すことで彼女はヴァレンティアの中、精神世界に入ることに成功したのだった。その影響か先ほど放っていた眩い一撃は途中で霧散し、そのままフッとまるで機械が動かなくなったかのように伸ばしていた腕の力が抜けたかのようにダランと落ちるのだった…。

 「これで、後は2人が帰ってくるかだけど…」

 そんなことを言っていると

 ドゥンッ!!

 何かからの強い衝撃波のようなものがこの会場内に響くのだった。その何かとは

 「…まぁ、これで大人しくなるような奴じゃないよな。むしろ…」

 「私は愛を司る天使! 先ほどの者の非礼すらも私の愛の前では無力も当然!! むしろ、私の力である愛の力を増幅させてくれたことに感謝です! これで邪悪なる者を天へと召すための力を取り戻すことが出来ました!」

 本来持つ力を取り戻せたのか溢れんばかりの力がこの会場内に霧状として広がっていくのだった。

 「さぁ、天の祝福を持つ人間よ。今こそ邪悪なる者を召さしなさい!」

 そう告げると漂う霧は徐々に大きくなり会場内にいる術者の持つ魔力に反応、そのまま近くにいた術者を飲み込むと

 「なんだ、力が、力が更に…」

 「さらに溢れて…ッ!?」

 「溢れてくガァアアアア!!!!」

 「体が、体がぁアアアアア!!!!!」

 魔力の波に飲み込まれて数秒で人の姿から一瞬にして怪物の姿へと変わるのだった。その怪物は2足歩行で、腕は人とは思えないほど何十倍も太く、顔は怪物のような人外でその姿はまるでエネミーの様であった。1人1人姿は4足歩行のエネミーや飛行型のエネミーとそれぞれ異なるが体の色はこれまでの黒ではなく白色をしていた。

 そして姿が消えた次の瞬間には、目に入った術者を嚙みちぎり、突き刺し、首の骨をへし折るほどの剛腕で先ほどまで仲間だったはずの術者を絶命させるのだった……。

 それを合図に会場内のそこら中から阿鼻叫喚と化した悲鳴が聞こえるのだった……。

 

 白い怪物はこれまで確認されたエネミーと同じような姿をしていた。だから目の前にいるのも同じだと思い、術者たちは連携を取りながら4体の怪物の対処にかかった。だが、それが甘かった。まず速度がこれまで確認されたエネミーと比べて速い。その速度はこれまで確認されたA級エネミーよりも数倍は速く最悪の場合4体の怪物はS級並の強さを持っていることとなる。よって、この場にいる術者たちではどうすることも出来ず、只々防戦一方の状況が続くのだった……。

 「あぁ!! 素晴らしい! 貴方方4名は愛の寵愛を受けたことによりこれまでにない力を得たのですね。その力で邪悪なる者を滅ぼしなさい!」

 果たしてその天使は、姿通りの天使なのか、それとも天使の皮をかぶった何かなのか、それはこの状況では誰も分からないでいた。

 「今の私なら4人だけでなく、この会場にいるすべての人間に愛の寵愛を授けることが出来ます! さぁ、皆さんも愛の寵愛を受けて邪悪なる者を天へと召さしましょう」

 そうして再び霧状の波が広がっていく。その霧に抵抗手段はなく防戦一方の術者やすでに倒れ伏している術者たちを次々と飲み込んでいく。そして新たな白い怪物が生まれていくのだった……。

 そうしてその霧はついに観客席にも届いていき、逃げ遅れた観客たちを飲み込んでいく、そうして抵抗できず怪物へと変わり、その数はこの時点で数十体となり逃げている観客たちに襲い掛かるのだった。

 ヒュンッ!

 襲う前に何かが怪物の傍を通り抜けた。そして1秒経たずにその怪物の胴体は全て砕かれ、肉片がボロボロと落ちていくのだった…。

 「この外道が! 無関係な者を襲うなど言語道断!! よって貴様らは万死に値する!!」

 軍服の女性が数十体の怪物を見下ろしそう言うのだった。

 「グレン、加減を間違えてこの会場を破壊しないでくださいよ」

 「分かっているさティア! 我が君の言われてことを忠実にこなすつもりだ!」

 「はぁ、本当かしら…」

 そうして2人はこの会場内にいる数十体の怪物を相手にするのだった。

 

 「…さて、第2ラウンドといこうか天使、いや、偽りの天使ヴァレンティア」

 こんな状況下でも冷静でいる仮面の少女は目の前にいるそれに言うのだった。

 「来なさい邪悪な者よ。この私が貴方を天へと召さしましょう」

 再度2人は互いの一撃を放つのだった……。


 「…はぁ、はぁ……くっ」

 水河瑠璃はすでに満身創痍でいた。体はすでにボロボロで魔力もすでに半分を切っていた。対して朝比奈莉羅は今いる場から1歩も動いていなかった。何故なら

 「お願い瑠璃ちゃん、もう、帰ってよ…」

 莉羅の傍で動いている複数の木の枝が瑠璃めがけて一斉に襲い掛かるのだった。そしてそれを

 「【炎の符:炎の矢】」

 魔力で作った護符からすぐさま屋の形をした矢を放つのだった。だが繰り出した矢の数に対して枝のほうが倍あり、全て撃ち落とすことが出来す枝の数本が瑠璃の足と横腹に掠るように命中したのだった。

 「私は、絶対に帰らないっ、莉羅をここから連れ戻すまではっ!」

 何度攻撃を受けてもそう言いながら立ち上がる。その言葉を自身の鼓舞にして…。

 「私はそんなこと望んでない! 私は私の意思でここにいるの! 瑠璃ちゃんは、私の意思を尊重してくれないの…?」

 「…私にはね、分かるわよ。貴方のその意志は上っ面で本当はこんなこと望んでいないってことが…」

 「そんな、そんなことない!! 瑠璃ちゃんなら分かってくれるって思っていた! 信じていた! なのに、どうしてそう言い切れるの!!」

 莉羅の傍にはすでに鋭利な枝が瑠璃を捕らえている。そして合図すれば確実に瑠璃を殺すことが出来るだろう。だが、それでも水河瑠璃は、

 「…だって、貴方昔からいつも分からない問題があれば真っ先に私に聞いてくるじゃない。学校の課題や宿題の時に泣きながら聞いてくるじゃない…。そして誰にも言えないような時にはすぐに顔に出る。だからまた何か抱え込んでいるんだなってすぐに分かる」

 そう言いながら莉羅の元へ歩み寄る。体はすでにボロボロで至る所から血も出ている、だというのにその身に宿している目には強い意志があった。

 「もう、もうやめて!!」

 枝たちは一斉に瑠璃の体めがけて放たれ、そして次々と突き刺していく。

 「もうやめて! もう来ないで! もう関わらないで! ……もう、私の決意を揺らがさないで……」

 

 「……静かだなぁ…」

 ようやく目の前にいる友達が止まってことを確認してからそう呟いた。そういえばまだ辺りを見渡していなかったなぁと思い辺りを見渡す。ここはやはり私と瑠璃ちゃんが初めて出会った場所で大切な思い出の場所だなぁと再確認した。この場所があったおかげで私は瑠璃ちゃんという唯一の友達が出来た。それまでの私は友達もおらず、家族や親せきからは『欠陥品』として疎まれていた。でも、瑠璃ちゃんとお母様だけは違った。瑠璃ちゃんは『欠陥品』と呼ばれている私に対してどこにでもいる普通の子として接してくれた、お母様は『欠陥品』と言われている私に対してでもたくさんの幸せや愛情をくれた。おかげで当時の私はどこか救われたような気持でいた。でも、

 「……お母様…」

 私が小学生低学年の頃にお母様は突然いなくなったのだった…。亡くなる前まではいつも通り元気に私を見送ってくれた。でも帰ってきた途端に糸が切れたように倒れていたのだった…。あの朝がお母様との最期になるとは私は思っていなかった……。

 「…だから私は、お父様から()()()()()()()()()()()()()として『天使の魔力』に封じられた天使を顕現させるということに協力するって決めたのに…」

 そう、1人となったこの場でずっと誰にも言えなかった言葉を言うのだった……。


 「ようやく、言ったわね」


 ガシッ!

 誰かが莉羅の肩を掴んだ。いや、その誰かだなんて思い当たる人物は1人しかいない。

 「……瑠璃、ちゃん、どうして…」

 「やっと、捕まえた」

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 大体1分ぐらいで見終われるように書いております。  内容次第では少し長くなります。
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