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創られた世界に破壊を込めて  作者: マサト
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2度目の魔族襲来 Ⅰ

 結論から言えば鳳星桜学園に突如として現れた謎の空間から出てきたのは魔族たちだった。その数はおよそ百前後で、ゴブリンやオークといった魔物をはじめオーガやハーピィー族といった攻撃や空中に特化した種族が確認されたのだった。そして彼らは空間から現れると鳳星桜学園の各箇所めがけて一斉に襲撃を開始したのだった。ある部隊は正面から、ある部隊は上空から、ある部隊から窓ガラスを割って侵入、ある部隊は壁を一撃で壊して中へ侵入…と様々なやり方で学園に入っていくのだった。

 そもそも魔族はどうしてこの学園を襲撃したのか? 以前の第3術科学校の場合だとこの学校には術者という贄が大量に存在していた。魔族にとって魔力とはある野望のために必要なものであり、これまで何度も人間もとい術者を襲撃しては捕らえ贄として捧げてきた。だから彼らは一気に捕らえるため機会を待ちそして襲撃をしたのだった。だが、この学園には術者という贄となりうるものたちが全体の3割ほどしかおらず、仮にその3割を全員捕らえようともこの学園の術者たちは以前の第3術科と異なり魔力量も大して低くせいぜい米粒十数個程度である。では何故この場に魔族が現れたのか? それは…


 「…なぁ、本当にここにその、なんだっけ? 大いなる…何とかがあるのか?」

 「大いなる力、でしょ? まぁ私も詳しいことは知らないけどそうじゃないの? 先に先行したミザリーからの報告ではそうらしいし」

 「なぁ、それってどんな力なんだ? もしかして俺がさらに強くなれる力なのか?」

 「違うでしょ。あれはあのお方を目覚めさせるのに必要なものでしょ」

 「あぁ、そうだったな。それさえ手にすればあのお方が目覚めるんだったな。そしてこの人間世界を本格的に進行開始できるんだったな」

 オーガ族であるタイロスは基本的に戦闘のことしか考えていないほどの戦闘狂である。そして隣にいるのが…

 「それで、いつになったら俺たち行動していいんだっけ? オリーナ?」

 「私たちは基本的にここで待機でしょ。私たちだとここを制圧するのに対して時間かからないでしょ」

 「あぁ~、そうだったな。ここって力を持つ奴が少なくて俺たちが前線に出たら一瞬で終わっちまうんだったな」

 「なんだ知ってるんじゃないの? 上からではここにいる魔力持ち以外は全員好きにしていいみたいだし、折角ならやる気満々のゴブリンやオークたちに先行して襲撃させればいいって話だったでしょ」

 「あぁー、あいつらかぁ。あいつらって常日頃から発情していて人間の雌を見る度に襲い掛かっては孕ませているんだろ? そうか、だからあいつらはあんなにやる気なんだな」

 「全く、気持ち悪いってありゃしないわ」

 「良いじゃねぇか。そのおかげもあって最近ではゴブリンとオーク族の繁栄に困っていなさそうだし」

 2人は基本的に後方に待機を命じられており、状況に応じては前線に向かわなければいけないのだが、今のところそれがく、もしかしたら最後までここに居座り続けるだけかもしれない。それほどこの襲撃は魔族たちにとっては容易すぎて欠伸が出るほどだった。

 「ふぁ~……なぁ、そういえばゴブリンたちと一緒に先行したはずのあいつからの連絡ってあったか?」

 「連絡? …そういえば一定時間ごとに連絡が来るはずだけど…」

 この襲撃が始まってすでに十数分が経過していた。その連絡は10分ごとに連絡が来る手はずとなっていた。だがその連絡が一度も来ていないことに気付き、「全く…何やっているのかしら」と持っていた通信用の魔石を取り出し連絡を試みようとした。

 だが、その必要はなくなった。何故なら、2人の近くにいきなり何かが降ってきたのだった。そしてその衝撃で舞っていた砂煙が晴れるとそこにいたのは先行していたはずの剣を持った竜族が完膚なきまでに倒されており、そしてその竜族の傍には1人の人物が立っていたのだった……。


 時は魔族の襲撃のほんの少しだけ時間を遡る。

 「おはよう、麗奈。…ん? 何かあったの?」

 生徒会室に入ってきた篠宮優香は資料に目を通している鳳凰慈麗奈を見るなりそう言うのだった。

 「あぁ、いえ、先ほどまで星乃さんと話していたんですけど…」

 「あっ! そうか、そういえば今日だっけ、星乃君がこの学園に編入するのかしないのかって話、もう、そうだったら私もこうしてギリギリに登校しなく済んだのに」

 「いや、毎日遅刻ギリギリに登校しないでくださいよ。それだと生徒会長として示しがつきませんよ」

 「良いじゃん良いじゃんそんな小さいこと。それで? 星乃君はなんて言ったの?」

 「…結論から言えば()()、とのことです」

 「保留? それって編入するかしないかってまだ迷っているってこと?」

 「そうなりますね。彼が言うにはこの5日間、生徒たちとの交流を通して今通っている学校とは良い意味で違うって言っており、気の合う友人も出来たって言っていました。もし編入出来たらどれだけ良いことか…と」

 「それだったら編入すれば…」

 「いえ。彼が言うには、この人が当たり前だと思えるような幸せを送る資格を持ち合わせていない、この幸せは愛花にこそふさわしい……と」

 「…それって、彼は真っ当な幸せを送ったらいけないってことなの?」

 「それは分かりません。…話は変わりますが以前彼について近辺調査を行ったことがあるのですが、少しおかしいのです」

 「おかしいって、何が?」

 「彼と愛花さんは数年前に起きたとある大災害の唯一の生存者、ということは分かっているのですが、それ以前の記録がなぜか見当たらず、出自どころか星乃さんの親の名前すらも確認出来ないのです」

 「大災害…それって有名なデパート店が何の前触れもなく消滅したっていう? それに、星乃君の出自と両親の記録が確認できないって、それってまるで…」

 「まるで何かによって綺麗さっぱり消された。ということですね」

 そう結論付ける他なかった。鳳凰寺家の情報網は日ノ本十二大族と同等、あるいはそれに近しいものである。選りすぐりの人材、高度なネットワークを用いて様々な情報を調べ上げてきた。そのおかげもあって鳳凰寺家は日本国内でも数少ない最大規模の財閥家となるのだった。だが今まで何度も調べても分からなかったのが星乃零という人物であった。彼は先ほど篠宮優香が述べたように、とあるデパート店が何の前触れもなく消滅した事件の生存者である。そしてその事件によってもう1人の生存者である星乃愛花は入院生活を余儀なくされたが、星乃零は何故か入院することなくそのまま日常生活へと戻っていたのだった。その後彼は喫茶四季に居候という形でそこで暮らし始めたのだが、それ以降の情報は何も得ることが出来なかったのであった。

 「…そもそも思ったんだけど、()()()()()()()()()()、なのかな?」

 「…それってどう意味ですか?」

 「あぁ、いや、なんとなく、なんとなくなんだけど、星乃君って何か私たちとは違った雰囲気があるんだよね。うまく言葉にできないけど、人であって人ではないっていうか…」

 その意味を問いただそうとした所で外から窓ガラスが割れたかのような大きな音がしたのだった。2人は何が起きたのか外を見ようとしたのだが幸いにも優香がこちらへと向かってくる何かに反応し「っ‼ 麗奈‼」と窓へと向かう麗奈を勢いよく引き戻したのだった。もしそうしなければ割れた窓ガラスが麗奈に直撃し、皮膚を切り最悪の場合目にガラスが刺さり失明していたかもしれない。そんな倒れ伏せている2人のいる生徒会室の窓ガラスを突き破って入ってきたのはゴブリン5匹とハーピィー3匹だった。顔を上げた2人がゴブリンとハーピィーを見るとゴブリンたちは2人の顔を同じく見ると「オ、オンナ、ダ」「オンナ、オンナ」「ギャハハハ!!」「クウ、クイタイ」「ハラマセル、ハラマセル…」と食事に今でも食いつかんとばかりに襲い掛かろうとしていた。その表情を見た麗奈たちは急いでこの場を離れるため扉の元へと駆けるがそうはさせまいと1匹のハーピィーが瞬時に回り込むことで逃げ場を無くすのだった。そして袋のネズミ状態となったところでゴブリンたちは一斉に襲い掛かった。そしてゴブリンたちは持っている武器で完膚なきまで痛めつけ、服を剝ぎ取り、そして泣こうが喚こうが繁殖行為を何度も何度も行うのだった…。


 だがそれは誰一人、何者の乱入がなければの話だった…。


 「『嫉妬蛇ノ死鞭(エンヴィー・ウィップ)』」

 見えない何かによって一斉に襲い掛かる5匹のゴブリン、人間とゴブリンを見下ろしていた3匹のハーピィーは何が起きたのか理解する前に四肢を無残にも切り裂かれそのまま意識すらも刈り取られたのだった。その時間は僅か1秒ほど。そして襲われる瞬間目を瞑っていた2人はその場で誰かの声を聴いたのだった。

 「フフフ…これで主に褒められる」

 その後恐る恐る目を開けた2人が見たのは先ほどのハーピィーとゴブリンがいくつにも肉の塊と分かれ、血だまりとなった場所に無造作に落ちては死に絶えている姿であった。

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 大体1分ぐらいで見終われるように書いております。  内容次第では少し長くなります。
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