1月3日 Ⅲ
酔っぱらった有紗はしばらく経つと休憩場にて爆睡したのだった。寝ている彼女のことは四季姉妹たちが見ているとのことなので零と麗奈は一緒に来ていた影山優美たちの所へと向かうのであった。ちなみに冬美の人酔いからすでに回復しており今では焚火の所で温まっている様子を確認したのだった。
「…ところで星乃さん、先ほどのことでお話があるのですが…」
「先ほど? 何か変なことでも話したっけ?」
「いえ、変なことではないのですが、有紗さんのことをまるでいつも見ているような発言をしていたのですがあれはどういう意味なのでしょうかと…」
「…あぁ、そういえば話してなかったっけ? 俺今は喫茶四季っていう喫茶店で居候させてもらっているんだ。あることがきっかけで帰る場所を無くしたことを言ったら何だかんだで住まわせてもらえたんだ。…まぁ、ちょっとした条件付きでだけど」
「条件?」
「簡単に言えば四季有紗、所長の助手を引き受けるのが条件だったんだ。…まぁ、居候のあては他にもあったんだけどそこだとちょっと面倒なことを受けることは目に見えていたから助手を引き受けると同時に喫茶店に住まわせてもらえるようになったんだ」
「はぁ…。でも、どうして有紗さんは星乃さんを何の助手にしたのですか?」
「所長は探偵家業をやっているんだけど、これがもう全然駄目で設立してから数年発つみたいけどこれまで受けた依頼はほとんどが落し物探しや脱走したペットの捜索といった探偵でもない人でも出来そうな内容しかやってきてないんだ」
「これまで殺人事件とか、浮気調査とかしてないのですか?」
「……まぁ、これまでいくつかしていたみたいなんだけどその全部失敗で終わっているらしくて、犯人の特定に失敗するわ、調査相手にバレるわで散々な結果になってそれっきりそれらの内容の依頼は来なくなったらしいよ」
「探偵家業というものは大変なのですね」
他人事のように言う麗奈であった。まぁ、実際他人事なのだが。
そんなこんなで話していると影山優美ら3人がいるおみくじコーナーへ着くのであった。そしてその先で見たのは
「うわーん!! 大吉が出ないよぉー!」
「そんな大吉ごときでそこまで泣かなくてもいいんじゃないの」
「どうして、どうして私だけ大吉が出ないのー!!」
おみくじが入っている箱をシャカシャカして下の穴から出てきた結果の入った小さな筒を開けてそう叫ぶのであった。
「一体何があったんだ?」
「あっ、星乃さん。実は…」
山影実憂が事の顛末を話したのだった。
「……つまり、影山さん以外の2人が大吉を引いたけど本人だけは何回引いても大吉ではなく小吉や凶といったものしか出ないと?」
「そうよ。そのせいで店員に迷惑が掛かっているんだからさっさとあきらめればいいじゃない」
「駄目だよ! 私だけ大吉が出ないだなんてそんなのあってならなあああぁぁぁ!!! また吉ぃー!!」
これで15回目らしい。ちなみに2人は1回で大吉を出したとのことらしい。すごいなと思った。
その後も大吉どころかいよいよ凶ばかり出るようになり優美の心はポッキリ折れて「う、うぅ…だ、大吉ぃぃぃ~~~」と膝を地に着き泣いていたのだった。そんな彼女に
「じゃあ、次は俺やろうかな」
と零が今度はおみくじを引くのだった。料金を支払い、箱をシャカシャカ振りながら
「…なぁ、影山さん、この世には大吉どころか吉、それどころか凶すら引けない人だっているんだぞ」
「…ふぇ?」
そうして零の持つ箱から小さな包みが出てきたのだった。そしてそれを開いて「ほら見てみろ」と落ち込んでいる優美に見せるとそこには
大凶。
と書かれていたのだった。
金運、仕事運、健康運、恋愛運…それら全てが最悪で一番下に書かれている言葉なんて『この1年間全てが上手くいきません。お気をつけてください』と書かれていたのだった。そして何を思ったのかおみくじの入った箱を今度は5回連続で引いてその5回の全てを再び優美に見せたのだった。
大凶、大凶、大凶、大大凶、大大大凶。
そう書かれていたのだった。書かれている一言も『今年死ぬでしょう』『原因不明の病にかかるでしょう』『何らかの事故に365日巻き込まれるでしょう』『ご愁傷さまです』と書かれていたのだった。
「なっ!」
「…いや、なっ。と言われても私はどうしたらいいの?」
「吉も小吉も、凶だって俺から見れば大吉だ。それに例え悪い結果だったとしても境内で結んだり、持って帰ってお守りにすればいいことが起きるんじゃないのか? それこそ大吉を引いた時と同じくらいの感動とかさ」
「…あぁ、うん、そうだね…。それじゃあ、今まで引いたものは境内で結んで1枚は持って帰ってお守りにでもしようかな。…えっと、ありがとうね」
自身よりも結果の悪い内容を引いた零を見たのか優美は立ち上がり境内へと向かうのだった。
「星乃さんは優しいのですね。わざと優美さんよりも悪い結果を引いて励ますだなんて、私でもできるかどうか…」
麗奈は先の光景を見て感心したように言うのだった。だが、
「? 何言っているんだ? 俺は今まで大凶よりも上の結果を引いたことなんて1度もないぞ?」
「……ふふふ、ご冗談のつもりですか? いくら私でもその冗談には騙されませんよ」
「いや冗談じゃないぞ? 見ていろ」とおみくじの入った箱を今度は7回引いたのだった。そして…
大大大凶、大大大凶、大大大大凶、大大大大凶、大大大大大凶、大大大大大凶、大大大大大大凶。
麗奈が見たの7枚全てにはまるで何か呪いに憑りつかれ、そして所々に血のような真っ赤な液体が付着し、身も毛も弥立つほどの大凶を上回る結果が書かれた内容であった。
「いやぁ、驚きましたぞ。まさか同志があんなすごい美少女とお知り合いだったとは」
場所は変わり、零たちは現在甘酒が売っているテントの近くにいたのだった。そこで立花豪志と成宮千尋と話していたのだった。そして愛花は麗奈と甘酒を飲みながら焚火の近くで仲良く話していたのだった。
「そうなのか? 見た感じどこにでもいそうな女子っぽいけど…」
「あれ? 星乃君は知らないかな? 彼女の名字である鳳凰慈家って結構有名でこの国を支えている数ある名家のうちの1つで、あの日ノ本十二大族同じくらいすごい家系なんだよ。それに鳳凰慈家はいろんな事業にも関わっているからもしかして星乃君がこれまで行った場所ももしかしたら鳳凰慈家が関わっているかもしれないよ」
「へぇ…」と愛花と未だに話している麗奈を見て零はそう言うのであった。確かに以前とあるデパートにマリーと一緒に行った際偶然にも麗奈と会っていたのだった。そしてあの時、彼女はデパートで事件があったから来たと言っていたのでもしかしたらあのデパート店全体は鳳凰慈家の関わっていた建物かもしれない。
「そういえば神社に並んでいる人たちですが見たところ朝よりも減っている気がしますぞ」
「あれ? 確かに本当だ。今日って何かイベントごとなんてあったっけ?」
そう言いながら持っているスマホで辺りでイベントがないか調べてみると「あっ、これかな?」と言いこちらにスマホ画面を見せて
「ここから少し離れたところで多数の有名店が一挙に集まるイベントが行われているみたい。もしかしたらこのイベントの影響で並んでいる人が減ったかも」
そのイベントは何でも有名なチェーン店の料理が一か所の場所に集まり、どの料理店が一番好評なのか競うイベントらしく、当然ながら決める方法は料理店が提供する料理を会場に来た人たちが召し上がり最後に票を入れるという内容である。そういえば長蛇の列にいた大半の人たちはそのイベントがあることを知っていたのかお参りが終わると入口のほうへ向かいながら「早く行こうよ」「早くしないと食べ損なっちゃう」「いっぱい食べるぞ」等と言っていたのでもしかしたらそこへと向かっていったのかもしれない。
「千尋殿は神社参りが終わった後はどうするのですぞ?」
「うーん、私は帰ったらコスプレの製作や貯め込んでいるアニメがあるからなぁ…それの消化とかかなぁ」
「なるほど、拙者も似たようなものですぞ」
この2人は三度の飯よりも趣味であった。
「星乃君はこのお参りが終わったらどうするの?」
「ん? 俺ですか? そうですねぇ…」
「あっ、星乃さん少しよろしいですか?」
零がこの後のことを考えていると麗奈が零の元へと来たのであった。そして傍にはどういうことか愛花もいるのだった。
「あれ? さっきまで2人で話していたんじゃないのか?」
「はい。先ほどまで無事に退院できたことを祝っていたり、最近あった星乃さんのことについて話していました」
「…そこは世間話じゃないのか」
「まぁ、それは置いといて…実は折り入って相談事があるんですがよろしいでしょうか?」
「はぁ、大丈夫だけど…」
「それは良かったです。この話は星乃さんだけでなく愛花さんにも少々関係がありまして…すでに愛花さんには少しお話はしておりますが、詳しいことはこのお参り後にお話しいたしますね」
最後に「では私は星乃さんたちのお参りが終わるまで四季さんたちのいる休憩場でお待ちしていますね」と言いその場所へと向かうのであった。
「…なぁ愛花、何の話をしたんだ?」
「……その、私の今後のことを、少し…」
愛花の表情は何やら浮かばない様子であった。
その後、零たちはようやく長蛇の列から解放された神社の参拝を行うのであった。列に並んでいる時もお参りをしている際でも愛花の表情は浮かばないままであった。




