1月3日 Ⅰ
日付が変わり1月3日、今日は喫茶四季の全員と初詣へと向かう日である。本来ならば元旦に行うのであろうが元旦当日の神社は人が多く、何かとトラブルが起こりやすい。ということもあり話し合いの末に「じゃあ1月3日に初詣に行こう」ということとなった。神社の場所は喫茶店から徒歩、そして電車に乗り、そこから約20分ほどかけて目的地の神社のある駅に到着。更にそこから10分掛けて歩くと目的地の神社の入口が見えるのである。そしてその入口には
「あっ、おーい! こっちこっち!」
俺達の姿を確認すると手を大きく振って存在を大きくさせたのだった。その人物は成宮千尋、そしてその隣には立花豪志がおり、更に隣には
「あっ、来た来た!」
影山優美、山影実優、そして安藤小夜がいたのであった。
さて、どうしてこの5人が喫茶四季の全員と一緒にこの場にいるのかというと···
少し遡り、1月2日の昼食後··
零たち7人が次に訪れた場所は喫茶四季であった。ここならば人混みがない且つ落ち着ける場所ということで来たのであった。·「ただいま帰りました」と零がそう言いながら中に入ると「あっ、おかえり」と四季春奈が珈琲を作りながらそう言うのだった。
「星乃くんの後ろにいるのはお友達かな? 待ってて。今なにか用意するから」
「別に大丈夫ですよ。折角の休日になにか用意してもらうのは悪いですから」
「気にしなくていいよ。好きで用意するんだから」
そう言いながら珈琲のできる合間に簡単な菓子類を用意して珈琲のできる頃には零を入れた7人分の菓子類と人数分の珈琲がカウンター席に用意されたのだった。ちなみに零は珈琲が飲めないためカフェオレである。そうして7人は一息つくのだった。
「あっそうだ、明日初詣に行くんだけどもし良かったらみんなで行かない?」
その提案をしたのは四季春奈であった。
「本当は元旦に行くのがいいと思うんだけど私たち人混みが苦手だから少しでも人が少ない日にちの日に行くんだけど、でもせっかくこうして会えたんだし何かの縁と思って…ねぇ、どうかな?」
そしてその返答は
「良いですね! 実は私まだ初詣には行っていないので折角なら一緒に行きたいです!」
行く気満々の影山優美であった。「ねぇ一緒に行こうよ。さーちゃん、みーちゃん」と隣にいる2人にそう声掛けすると
「何言っているの。出会って間もない私たちが人様の用事に参加できるわけないでしょ」
「きっと、迷惑かかります…」
小夜と実憂は行く気ではなかった。
「あっ、もしかして何か用事事とかあったかな? それなら無理しなくていいからね」
微笑みながら春奈はそう言うが
「えぇ~、いいじゃんいいじゃん、一緒に行こうよぉ~。さーちゃんどうせ明日も1日中家にいるんでしょ?」
「何勝手に決めているのよ。私だって色々やることあるんだから」
「それじゃあ、私も手伝うから一緒に行こうよぉ。一緒に初詣行こうよぉ」
「ちょっ、そんな目で見ないで」
つぶらな瞳で小夜と実憂に交互に訴える優美、まるで子犬のようであった。
「……う、うん、じゃあ私一緒に行きます」
「ちょっ⁉ 貴方正気⁉ さっきまで行く気なかったでしょ⁉」
「うっ、そ、そうなんだけど、私を見つめる優美ちゃんがなんか、可愛くて、つい…」
「ついって…貴方、優美に毒されてない?」
こうして実憂は明日の初詣に参加するのだった。
「さーちゃん(ウルウル…)」
「あたしは行かないわよ」
「(ウルウル…)」
「…行かないわよ」
「(ウルウルウル…)」
「…い、行かないわよ…」
「(ウルウルウルウル……)」
「い、行かない、わ、よ…」
「(ウルルウルウルウルウル………)」
「……あぁ~~、もう‼ 分かったわよ! 私も行けばいいんでしょ!」
「わーい! さーちゃん大好き~~!!」
「ちょっ! 抱きつくな! 珈琲が飲めないでしょ!」
こうしてなんだかんだで小夜も明日の初詣に参加するのだった。ちなみに2人のやり取りを見ていた者たちはというと
((((チョロい(ですな)!))))
心の中でそう突っ込む他なかった。
ちなみに立花豪志と成宮千尋は明日は予定が特にないため明日の初詣に参加するのであった。
そして明日の初詣に向かう神社には各自現地集合ということで決まりその後はのんびりと喫茶店で過ごすのであった。
その神社は何でも有名な場所らしく、以前テレビでも紹介されたことがありその神社で絵馬に願い事を書けばその願い事が叶うといわれている。実際にその願い事が叶った人が多くらしく志望校に受かった、恋人ができた、子供ができた、お金持ちになった…等々の願い事が叶ったとネット上で書かれていたらしい。そのためか……
「……結構、多いわね」
人の出入りは三が日の最後というにも関わらず未だに人が多く参列していた。その長さからして参拝するまで最低でも数十分、長くて1時間はかかると予想される。時刻はまだ9時だというのにこの長さ、前にいる人たちは一体どれくらい待っていたのだろうか、考えるだけで相当長く待ったのだろうと思った。
「ごめんね。まさかここまで人が多くいるなんて…もう少し日が経ってから来るべきだったかも」
「春ねぇは悪くないでしょ。それに去年はここまで人が多くなかったから、きっとテレビの影響で人がこんなに多くなっただけだろうし」
「夏ねぇの言う通りだと思う。メディアの影響って私たちが思っているよりも凄いから」
「うっ、ひ、人が多い…」
「わわっ! 冬ねぇ、大丈夫⁉」
四季姉妹たちが話している中、四季冬美が人の多さのあまり顔を真っ青にしていたためそれに気づいた四季有紗は近くの休憩所まで一緒に向かいそのまま休ませるのだった。その際話の途中だった姉妹たちも一度中断し、その同伴として来た四季博も一緒に付き添うのだった。
「う~む、千尋殿、どうしますぞ? あの参列に並ぶのですかな?」
「うーん、あそこまで長いとさすがに並ぶ気はなくなるかなぁ」
「拙者も同感ですぞ。…ですが、折角来たのですから何かお祈りでもしたいですぞ」
「それは私もだけど、あの長蛇の列が短くなるまでどれくらい待てばいいのか分からないわね」
豪志と千尋は長蛇の列に並ぶか並ばないかで迷っているのだった。零と愛花の2人だけとなったのだった。
「ねぇねぇ見て! あそこに甘酒売ってるよ! あっ、あそこにお守り売ってる! 3人で行こうよ。行列はそこまで多くないみたいだし」
「お守り? 私はいいわよ。2人で行ってくれば?」
「えぇ~、やだやだ! さーちゃんも一緒に行こうよぉ」
「ちょっ! 服を引っ張るな! 破けるでしょ!」
「ま、待って2人とも~」
優美、実憂、小夜の3人はそのままお守り売り場へと向かうのだった。
「…甘酒、か。私、ちょっと行ってこようかな。ちょうど何か飲みたかったし」
「おぉ、それはいいですな。もしよければ拙者もご一緒してもよろしいですかな?」
「勿論良いわよ。…あっ、そうだ、愛花ちゃんも一緒に来ない? 甘酒なら未成年が飲んでも大丈夫だと思うし」
「えっ、良いんですか! …あっ、でも…」
「良いじゃないか、退院して前と変わらない生活を送れるんだから折角の甘酒を飲んできなよ」
「わ、分かりました。…あっ、兄さん、くれぐれも迷子にならないでくださいね」
「俺は子供か」
そう言いながら豪志と千尋と愛花は甘酒売り場へと向かうのだった。
そうして入り口に残ったのは零だけとなったのだった。
「…さて、これからどうしようかな?」
辺りを見渡してどこに向かおうかなと思いながら適当に歩いていると絵馬に願い事を書く場所のほうに不自然なほど男性数名が1人の人物を取り囲んでおりそれが思わず気になって近くまで向かったところ
「ん? あれは…」
その男性たちに囲まれている人物がチラッと見えるとその人物は零の見覚えのある1人であった。
(はぁ、困りましたね。折角着物を着てこの有名な神社でお参りをしたというのにまさかこのようなことになるなんて…)
そう、その人物はすごく困っていた。何せ
「ねぇねぇ、俺たちと一緒にご飯食べない。奢るからさ」
「そうそう、それにその着物すっごく綺麗だからさ、もっと近くで見たいし」
「それに君可愛いからさ、今日だけじゃなくてまた後日にでも会おうよ」
「そうだ、今から近くに俺の知り合いが運営している店があるから行こうよ」
ナンパを受けていたのだった。しかも見た感じ体を鍛えているのか手足や肉体がその人物よりも大きく、太いためもし掴まれでもすれば振りほどくのは不可能だろう。それにこの状況をほかの人も見ているのだがこの男性たちに関わるときっと痛い目にあうだろうという恐怖から誰もこちらのことに気づかないふりをしていたのだった。まぁ、それ自体は仕方がない。人というものは痛いことや怖いことには極力関わらないようにする生き物なので決してそれが悪いことではない。だから1人でこの状況を何とかしないといけないのだが先ほど述べたように男たちの体つきはとても大きく太いためちょっと強く掴まれでもしたらきっとその男という生き物に手も足も出ないだろう。
(はぁ、もしこの場にあの人がいたらいいのですけど、それは何とも都合が…
その人物がそう思うもそれは何とも都合がいいものである。何せそう思う人物と今日会えるということなんて何十、何百、それ以上の確率……それこそ神頼みレベルである。
「よし決まりだな。それじゃあ、あれたちと一緒にここから近くの店に行こうぜ」
その人物の思考を遮るかのように1人の男性がその人物の華奢な腕を掴もうとして手を伸ばしてきて、そうして
「あれ? そこにいるのって、鳳凰慈さん?」
腕を掴まれる寸前に何気なく声をかけてきたのは星乃零であった。




