無能クラス
第3術科学校は、小等部から高等部まである一貫校である。そのため、クラス替えしても何度も顔を見ていたり、遊んだりしているため別にどうという事はない。だが、新学期になるたびに他校からの転入生が斬ることがあるため、在校生たちにとって新学期の楽しみと言えばそれくらいしかない。ちなみに、星乃零は中等部から途中で来た転入生である。
「あぁ~、今日から高校生かぁ」
「何言ってんだ星乃。高校生になれば、出来ることが増えるだろ」
「‥‥一応聞くけど、例えば?」
「それは勿論、彼女を作ってキャッキャウフフなことが出来るだろ(キラン)!」
「…‥‥‥」
何も言わなかった。
「なぁ、どうして黙るんだよ! 高校生だぞ! 大人の一歩手前だろ! 青春ライフだぞ!」
「……‥‥‥」
再び何も言わなかった。
「星乃君は和也の言う事に呆れているだけよ」
今まで零と一条和也だけだったが、そこに三条絵里奈がやって来て零が黙っているのかの理由を説明したのだった。
「何だよ委員長! いいじゃねぇか! 俺だって青春送りたいんだよ!」
「青春青春何度も繰り返しているけど、そんなに青春送りたかったら私が一緒に送ってあげましょうか」
「なっ、委員長と青春だって! 冗談じゃねぇぞ! もしそうなったら勉強ばかりさせられそうだ! ここは一時撤退だ!」
そう言うと和也は急いで高等部の校舎内へと向かったのだった。
「ちょっと待ちなさいよ!」
絵里奈はそう言うと和也を追いかけたのだった。
「朝から元気だなぁ」
二人のやり取りを見て零はそう思ったのだった。
クラス分けは校舎内で行われる。クラスは全部で7クラスある。それぞれA~Gまであり、生徒のクラス分けの仕方はバランスよく決められているためAが優秀ばかりやGが落ちこぼれ…という事はまずない。そのはずである。そして星乃零のクラスは、
「…‥Gか」
そう呟き、目的地のクラスに行くとそこは‥‥
「…‥‥は?」
そのクラスは他のクラスよりも異常、いや、異常過ぎた。何故なら、
クラスの机と椅子が1セットで全部で6個しかないからである。
「えぇ~、今日から君たちの担任となった松島だ」
担当となった松島という男はそう気だるそうに言ったのだった。そして
「はぁ~~、教師歴数十年となるというのに、なぜこの私がこんな落ちこぼれを受け持つこととなった。くそ、最悪の気分だ」
生徒たちがいるにも拘わらずそう呟いたのだった。その台詞に一人の男子生徒は手を上げた。
「先生、それはどういうことですか。貴方には教師としての矜持はないのですか」
「黙れ小笠原家の欠陥品、お前ごときが松島家に何か言える立場なのか、あぁ?」
「くっ‥‥」
どうやら図星なのかそれ以上何も言うことなく席に着いたのだった。
「ふん、欠陥品が…調子に乗るなよ」
舌打ちをしたのだった。
「では、新学期という事で始めに言っておいとく。俺はお前達6人全員自主退学させるつもりだ」
その教師の一言に小笠原ともう一人の女子生徒が思わず立ち上がった。
「な、何故ですか先生! 私はこの学校で学びたいことがあるのです! 理由を教えてください」
「しゃべるな、大和の無能! 貴様如きに命令するな反吐が出る!」
「っ‥‥」
大和という少女は俯きながら席に座るのだった。
「いいか、俺はなぁ大きな野望がある。それはこの学校で一番の権力者とることだ。そしてその暁に貴様たちのような無能をこの学校の門をくぐらせないようにし、俺が認める者だけを入学させるそんな学校に作り替える。そのためには時間がいくらあっても足りない!」
そして、最後に自分より下の者を見下すように笑いながら、
「だから、な、お前達、さっさと退学しろ」
そう言い終えると朝のホームルーム終了のチャイムが鳴ったのだった。
今日は朝の授業がないためそのまま下校しても良い。新学期初日の授業は明日からとなっている。だが、零を含んだ他のクラスメイトはこの世の終わりのような顔をしていた。まぁ、無理もない。期待を膨らませた学校でいきなり教師からあんなこと言われたら誰だって今のようになるだろう。この場からさっさと離れたいが、少し気がかりなことがあるので他のクラスメイトにとある提案を出したのだった。




