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創られた世界に破壊を込めて  作者: マサト
国立大病院

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面会 ~安藤小夜~

 先の事件後、彼女は本来生きているのがあり得ないと思えるほどの状態だった。体は全身火傷で侵されほとんどの皮膚が剥がれ落ち、手足すら動かせない、声も一言も発せられるような状態ではない瀕死の姿であった。だが、彼女は今もなお生きており現在国立大病院で療養中であった。療養始めは全身を侵した火傷がひどすぎたため鼻と口以外はすべて包帯で巻かれた状態でベッドで安静にしていた。勿論、面会は謝絶状態で治療に集中の日々が続いたのであった。それから2週間ほどでようやく火傷で侵されていた皮膚がある程度は元に戻ったため包帯はいくつかの箇所は外れていた。本来は皮膚がある程度元に戻るのにもっとかかるのだが術者だからだろうか通常よりも早く治癒するのであった。恐らく体内にある魔力が傷や怪我を塞ぐ細胞が常人よりも多い、あるいはその細胞の働きが常人よりも活性しているからだろうか入院するほどの怪我なら約1週間、今回のような大怪我なら1週間半から2週間ほどである程度は治るのであった。それからは少しずつ食事を摂取していくも完全に完治したわけではないためベッド上で絶対安静状態がさらにしばらく続き、そして1週間が経つ頃には火傷で侵されていた箇所はほとんどなくなり体調も問題ないことからリハビリが開始された。彼女は3週間もベッド上で過ごしていたため足の筋力が落ちていた。なので再び歩けるように訓練を行うのであった。そうしてそれを何度も繰り返している内に少しずつ足の筋力が戻っていき現在では歩行状態も問題は無くなっていた。

 そんな彼女に1人の少女が面会に来たのであった。彼女は面会謝絶が解除された頃から来ており週に数回ほど訪れているのであった。始めはその少女が来るたびに素っ気ない態度をとって1秒でも早く帰らせていたがそれが何度も何度も続くと彼女はようやく諦めたのか少しずつその少女と会話をするようになったのであった。最近あった出来事や、最新の流行のファッション、流行りのお菓子…等々を話すのであった。面会時間は最大で1時間となっておりその1時間でその話題を雑誌やカタログを持って来て話すため彼女は内心では、よく話が続くな…。と思っているのであった。

 そうして今日もその少女は彼女の面会に来るのであった……。


 「来たよ! さーちゃん!」

 「…はぁ‥‥‥また来たの? というかここには他の患者もいるんだからもう少し声を抑えてっていつも言ってるでしょ」

 「えぇ~、だってさーちゃんと昔のようにお話しできることが嬉しくってつい…ね」

 「全く、やめてよね。じゃないと面会謝絶にするわよ」

 「それだけはダメぇ!」

 2人のやり取りに他の患者(お年寄り)は微笑んでいるのであった。彼女こと安藤小夜の元に来たのは影山優美である。優美は数週間前から週に3~4回ほどこうして小夜の面会に来てはいつも小夜に何かしら言われるのであった。

 「…というか優美、また無茶な特訓でもしているんじゃないの?」

 「えっ、そ、そんなことない、よ?」

 「…相変わらず嘘が下手なのね。その服の下にでも特訓中に出来た傷でもあるんじゃないの?」

 「…そんなことない、よ?」

 「…そう。じゃあ、今すぐその服を捲り上げなさい」

 「そ、それは、ちょっと…」

 躊躇している優美の服を何の躊躇いもなく捲り上げる小夜であった。その際「さ、さーちゃん!?!?」と大きな声を上げる優美だがそんな声にビクともしないで胸部と腹部をじっくり見て、

 「…ほら、やっぱり痣が出来てる。しかも前来たよりも痣の数が増えてる」

 「い、いいの! こんなところ誰も見ないから!」

 「じゃあ、今私が見てるのだけど、それはいいの?」

 小夜の言葉に「うっ…」と否定できない優美であった。

 「…優美は私なんかよりも綺麗な体をしているんだからもっと自分を大事にしなさい」

 「そ、そんなこと…」

 「そんなことあるの。私は、優美と違って醜い存在なんだから…」

 安藤小夜が自分を醜い存在だというには理由がある。きっかけは両親がある一族によって殺された時から始まった。幸い彼女は諸事情で家から離れていたのだが家に帰って来た時にはすでに両親は息絶えていた。一体誰が両親を殺したのか、その犯人は意外にもすぐに分かるのであった。その犯人は影山家の者たちであった。その者たちは影山家の娘である影山優美を一番にするためならばどんな手段でも用いた。そんな中安藤家の存在が目障りとなり本来は娘ともども始末するつもりだったが結局両親だけを始末することとなったのであった。それが分かると彼女の心には影山家に対する復讐の炎が生まれたのであった。それからは優美との一切の関係を絶つため優美と同じ学校から離れ、絶対に殺してやる…そう誓うのであった。そうして数年後に幻陽術で優美の友人である実憂の姿へとなり、そして屋上から突き落とした。意外とあっけなく終わったと思いきやそれから1年後、予想外の展開が起きたのであった。それは死んだはずの優美が再び小夜の目の前に現れたのだった。そしてそんなバカげたことを行ったのが星乃零という無能と呼ばれている少年であった。一体どんな方法で生き返らせたのか分からない、だが、分かることは優美同様あの少年も殺さなければいけないという事である。そして体育祭で彼と少しだけ戦ったがその強さは異常だった。こちらの攻撃が全く通用しないどころか逆に遊ばれていたのだった。こんな惨めな思いをしたのは初めてだった。だから得体のしれない力と分かっていながらもその力をその身に宿したのだった。そして結果はおそらく過去1番と言えるほど酷いものだった。力をつけるために男女関係なく何人も殺しては提供された武器を強化していったのだが、その挙句の果てにはその武器の力に飲み込まれてしまうのだから自業自得な結末だった。正直このまま死ねるならそれでもいいとも思っていた。何故なら死ねばもう一度両親に会えると思ったからだ。だがそれを優美は止めたのだった。そして止める瞬間、小夜は僅かばかりだが見えたのだった。優美が小夜を一太刀の剣で元凶である炎の剣を斬るその一瞬、あろうことか笑っていた。それもとびっきりの笑顔で‥‥‥。

 だからこそいつか聞いてみたいと思った。どうしてあんな笑顔を見せてくれたのかを…。

 「優美、貴方は…‥‥‥いや、何でもない」

 どうして酷い事や、殺そうとしたのにも関わらずこうして会いに来ては笑顔で接してくれるのか、それを聞きたいのだが、それを聞く資格はきっとないだろう。何故なら私は‥‥‥

 「…ところでさーちゃん、そろそろ…服をおろして欲しい、な。いくらさーちゃん相手でも恥ずかしいから…」

 服を未だに捲り上げ続けられていたためか優美の頬が赤くなっているのであった。

 それからも優美の一方的な話を小夜は渋々聞き続けるのだが、そんな2人の様子をまるでずっと見ていた1匹の虫がもう用は済んだかその場から飛び去るのだが当然ながら2人はその虫の存在に気付いていなかったのであった。


 その虫は一言でいえばハエである。そのハエはまるで何かに連れ戻されるかのように飛んでいきそして辿り着いたのは1回にある売店だった。そんな売店に入る際この病院で働いている医師がいたため一緒に入るのであった。ハエ1匹では当たり前だが扉のセンサーが気付けるはずがない。だからそのハエは売店の中に入るためにはこの売店に入る誰かに紛れ込む必要があるのであった。そしてそのハエが向かった先は売店の角にある本のコーナーであった。そのコーナーには様々な雑誌からコミック本が売られておりこの売店で購入して病室で読む患者はよくいるのである。そんなコーナーに1人の少年がいるのであった。そしてそのハエはあろうことかその少年の肩に止まるのであった。本来なら誰もがそのハエを払いのける、または叩くのだがその少年は肩にハエが止まったのを確認すると何かを唱えるとそのハエは瞬時に本来の姿である1枚の紙へと戻るのであった。先ほどのハエの正体はその少年が用意した式神の札で作られたハエである。式神の札には種類にもよるが札の所持者を守ったり、所有者と共に攻撃を加えたりと様々である。そしてその少年の手にある式神の札には対象を追尾するという隠密系が備わっているのであった。

 「…そういえばこの病院には安藤小夜も入院していたのか。…確かにジュダルがそう言ってたな」

 その少年こと零は式神の札を収容袋の中に入れながらそう呟くのであった。

 (…まぁ、今のあいつには影山優美を殺す理由がないだろうし、しばらくは様子見で良いだろうな。少なくとも殺気は見られなかったし…)

 そう思いながら時間潰しで読んでいた雑誌を閉じるのであった。ちなみに零が読んでいたのはファッション関連の雑誌である。当然ながら今の流行についてはからっきしなのでよく分からなかった。そうして売店で何も買わずに出て出入口の方へと向かうのだが零の進行方向から集団で医師がこちらに向かって来るのであった。例えるなら医療ドラマで腕のいい、もしくは地位の高い医師が横並びで前を歩くような冒頭辺りでで見られるようなシーンである。そんな医師たちに関しては当然ながら零は知らないし、関わりは全く持っていない。だからさっさと帰ろうと歩き、そしてその集団の医師の近くを通り、そして通り過ぎると、ふと零は足を止めるのであった。どうして零は足を止めたのか、そしてどうして通り過ぎた医師の集団…正確にはその内の1人を見たのか、その後医師の横を通り過ぎる他の者は誰1人として分からないだろう。だが少なくとも零はその集団にいる1人から良からぬ気配が滲み出ているのを肌で感じてしまったのであった…。

 

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 大体1分ぐらいで見終われるように書いております。  内容次第では少し長くなります。
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