精霊族を統べる者
「…それで、そっちの容態はどうだ?」
「うん! ディアからもらった霊薬を掛けたら体に回っていた毒がきれいさっぱり消えたよ」
倒れている精霊獣の傍には心配そうに見ている3人の幼い精霊がおり、中にはもしかして死んじゃったのかなと不安そうに見ていたがそれは杞憂に終わり
「……う、うぅ…私は、死んだはずでは…」
意識を取り戻したのかゆっくり瞼を開きながら顔を上げると「うわぁあああん!!!」「いなくなるかと思ったよぉ…」「ヒクッ、ヒクッ、うぇえええ…」と泣き叫びながら精霊獣に抱き着くのだった。対して「これ、そこまで泣かずとも好かろう…」と少々困った様子で3人を泣き止ませるのであった。その途中、2人の姿が目に入り…
「そちらの獣人族はもしやアリス様? それともう一方は人間のようですが、貴方は?」
「…あぁそうか、この姿で顔を見せるのは初めてだったな。…ディアと言ったらわかるか?」
その名を聞くと精霊獣は目を見開いて、
「…ディア…… !? もしやあのディア様なのですか!! それにしてはずいぶん様変わりしたと申し上げますか…」
「まぁ事情があってな。今はこの姿で動いているんだ。……それで俺たちが今日来ることはシエルから聞いているか?」
「はい。ジュダル様の伝言は承っております。本来はこの道の防衛システムを切る予定でしたが、ここ最近複数の人間がこの道辺りで何やら奇妙な行動を行っているようでして…。申し訳ありませんがシステムを切ることが出来ませんでした。…どうかお許しください」
「許す。…それにジィも先ほどのダメージがまだ残っているんだ。無理して体を動かさなくていい」
「感謝します。ところで先ほどの人間たちは…」
「その話は中でしようか。ここだと子供たちが安心できないだろ。…それに」
ディアと呼ばれる少年が幼い精霊族の傍をチラッと見るとこちらに気付いたのか思わず精霊獣の後ろに咄嗟に隠れるのだった。「これ、お前たちこの方から逃げるなど…」と注意するも
「別に気にしてないよ。先ほどまで俺のような人間からの怖い思いを受けたんだ。その子たちがその行動をとるのはむしろ当たり前のことだ」
「…気遣い感謝します。それでは我らが女王の元へとご案内しましょう」
ジィと呼ばれる精霊獣に案内されて空洞の中へと入るのであった。
そしてその空洞へ向かう背後姿を気配を隠しながら複数の者たちが見ていたのであった……。
その空洞の中は一見ただの洞窟である。中は外の気温と比べて氷点下と思えるほど寒いし、洞窟の上からはポタ、ポタと水が落ちてくるし、岩の隙間からどこから流れてきているのか湧水がチョロチョロと流れていたり…とどこにでもあるような洞窟であった。そんな洞窟をしばらく進むと大きな湧水へと着くのであった。そこに溜まっている水は一切の濁りがなく自然から作られたといっても過言ではないと思えるような…もはや大きな天然の池であった。だがその先の道のりはなくこの場所で道は終わっていた。だが精霊獣が何かを唱えるとその大きな池の上に大きな白い扉が、そして扉が開くと同時にまるでそこに導かんとばかりに扉と同じ色の白い階段が現れたのだった。「この先です」と言い精霊獣が先頭に立ちそのまま扉の中へと入りそれに続くかのように幼い精霊も入っていくのであった。「ふぃー、やっとシエルのところに行けるにゃー」と伸びをしながらアリスも入り、ディアと呼ばれる少年も何の躊躇もなくまるでその先へ何度も入ったことがあるような足取りで中へと入るのであった。
その扉を出ると目の前にあったのは大きな大樹であった。その長さは全長30メートルほどだろうか、その辺りには一軒家や池、果実の木々が遠くまで続いており、まるでここが一種の街のようであった。その街には人が買い物をしたり他愛のない会話をしており人間の暮らしとあまり変わらないような生活光景が映っていたのであった。そんな街のところから何やら声を上げながらこちらへと向かってくる者たちがいたのであった。一体誰なのだろうと思っているとその姿が近くまで来ると精霊獣の傍にいた幼い3人の精霊はその者たちに飛びつくような勢いで向かっていき、対するその者たちも幼い精霊がこちらに向かってくるのを確認すると腕を大きく広げてそのまま抱きしめる構えを取り、そしてそのまま3人の精霊を強く抱きしめたのであった。どうやらあの者たちと3人は親子なのだろうなと思うのだった。そして子供たちを抱きしめたままこちらへと向かってきて
「精霊獣様!! 子供たちを助けていただきありがとうございました。このご恩は忘れません!」
「後日また伺わせてください! その時にはささやかではありますがうちで育った果実を献上いたします!!」
精霊獣、それも長く生きている生命体は精霊族にとっては敬われる対象である。
「献上はよい。それにその子たちを助けたのは私ではなくこの者たちだ」
精霊獣はこちらに顔を向きながらそう言うのであった。
「そちらは獣人族の…アリス様!? …それにこちらは人間!! こ、これは一体どういうことなのですか!?」
……まぁ、何も知らない者が人間である俺を見てそう動揺するのは無理もない、か。
「馬鹿者! 確かに姿形は人間であるが、この方は我らが女王と対等なる存在であるディア様だぞ!」
「ディ、ディア様!? た、確か、最後にお姿を見たのは数十年前のことですが、それにしてはだいぶお姿が変わられておりますが……」
その者たちがディアと呼ばれる少年の姿を見ながら動揺していると
「いいえ。その人間はディアで間違いないですよ」
と透き通るような声が聞こえるその方向へと目を向けるとそこにはこの町に住んでいるであろう精霊族から見られながらこちらへ向かってくる者がいた。その者はメルヘンファンタジーの世界に住んでいる女の子が着ていそうな可愛らしい純白なドレスを着ていた。そのドレスは肩がはみ出ているがそのはみ出しこそがその者の魅力をより一層引き出しているのではないかと疑うほどの着こなしであった。そしてその者の頭にはこの国を統べる象徴の証としてのティアラが飾られていたのであった。先ほどまでディアたちを見ていたその親子はティアラをしたその者の姿を見るや否
「シ、シエル様!! これはご機嫌麗しゅう…」
「そんなにかしこまらなくて構いませんよ。それに私はそんなにかしこまってはこちらの対応が困ってしまいますわ」
「も、申し訳ありません! 以後気を付けます!」
そういうとその親子は下げていた頭をすぐさま上げるのであった。
「やっほーシエル! ディアと一緒に会いに来たよ!」
そんなやり取りなんて気にしないかのようにアリスはシエルに対してフレンドリー感覚でそう挨拶をするのであった。
「アリス、それにディア。ジュダルから話は聞いているわ。立ち話もなんだから移動しましょうか。…では皆さん、また」
そう街の者に挨拶を済ませシエル、アリス、ディアの3人は大きな大樹のある所へと移動したのであった。
この精霊の街にある大樹はこの町に住む者にとっては神聖な場所と言われている。そしてこの町に住む者にとって大樹とは近づくことなんて恐れ多いと敬われると同時に恐れられているのであった。そのわけは何でもこの大樹を生み、育てたのが精霊を生み出したと言われている天上の使いと言われているからである。ではその天上の使いが何者かいうなれば実は誰も知らないらしい。ある者が言うにはこの街を見守る慈愛に満ちた偉大なるお方。そしてある者が言うにはその大樹の下には異形なる化け物が封印されているのではないのか。と様々な見解を出しているのだが未だどちらの見解が正しいのか分かっていないらしい。だが、だからと言ってそれを確かめようとする者は誰1人としていない。何故ならこの大樹は精霊族にして現女王にして歴代の精霊王または女王を抜いて最強と言われているシエルが管理しているのだから…。




