喫茶四季のとある朝
そこは、とある小さな公園だった。
その公園には、男の子と女の子がいた。女の子は男の子に何かを言っているようだがここからだとよく聞こえない。そして、女の子の母親らしき人がやって来て女の子の手を引っ張り帰ろうとしていた。その際引っ張られている女の子はどうしてか泣いていたのだった‥‥‥
そして、その映像は終わる。
「……夢、か」
その一言で星乃零は目を覚ました。時刻はもうすぐ7時なるところだった。そして今日から星乃零は高校へと進級するのだった。
「顔でも洗うか」
そう呟いて洗面台へと向かった。そしてドアを開けると
「……‥‥‥え」
それはどちらからが発したのか分からなかった。何故ならその洗面台の所には下着どころか何も着ていない四季有紗がすでにいたのだから…透き通るような肌から火照っているのか僅かばかりに湯気が出ていた。そして大きめのバスタオルを持っていたため丁度大事なところは零からは見えていなかった。つまり彼女は先ほどまで寝起きのシャワーを浴びていたのだった。
そして、時間が再び動き出したのだった‥‥
「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
投げられたボディーソープの容器が零の顔面に向かって吸い込まれたのだった。
「まだ痛い…‥」
「ふん。零が勝手に開けるからでしょ!」
朝食時、有紗からそう怒られたのだった。
以前もこのような事があったのにどうして気付かなかったのだろうと反省する零であった。次からは入る前にノックをして確認しようと思ったのであった。
「はいはい、有紗も零君も今日から学校でしょ。これ食べて許してあげなさい」
すでにいた四季春奈がそう言うと、有紗にシュークリームやプリンといった甘いデザートを提供したのだった。いや、さすがにこれで許せるわけが…
「うん。許しちゃう! 零、今度から気を付けてね」
あっ、許せちゃうんだ…
有紗が将来デザートをあげれば何でも許してしまわないか心配になってしまう零であった。と、そこに
「やっほー、零」
と声と同時にいきなり後ろから抱き着かれた(首に)
「夏希さん。く、苦しい‥‥」
「おっと、ごめんね」
そう言うと零の首を開放したのだった。
「夏姉さん、零さんにそんなことしたら駄目ですよ」
「分かってるよ。ちょっとした挨拶しただけだよ」
「それが駄目だというんです」
零に首に抱き着いたのはここの『喫茶四季』の次女である四季夏希。彼女は髪が短くボーイッシュな女性である。そして体を動かすことが好きで先ほどまでこの辺りでジョギングしてきたばかりのためか高校の時のジャージを着ていた。そして零も時々付き合わされているのだった。
そんな夏希に注意したのは三女である四季秋実。彼女は髪を二つに結びもといツインテールにしており、片手に文系の小説を片手に持っていた。とても真面目でクールな性格で喫茶四季での作業を黙々と行うところを時々見ることがある。そして何より、眼鏡系女子である。
「あっ、冬美。おはよう」
「えっと、お、おはよう」
そして最後に四女である四季冬美が降りてきたのだった。彼女は二人よりも物静かで背も零より少し低い。髪型はロングストレートで冬のように髪の毛は白く整っており、先程まで喫茶店の手伝いをしていた。そのため洋服の上にエプロンをしていた。
「はーい、みんな揃った?」
そして最後にやって来たのは長女である四季春奈。彼女は冬美と同じく喫茶店の手伝いをしていたためこちらもエプロン姿である。彼女は冬美のような長い髪型をしているため髪を一つ結びもといポニーテールでやって来た。彼女は『春』という名前がついているように笑顔を見せれば辺り一帯の気温が2~3度高くなると言われている…らしい。
そして彼女たち4人はこの『喫茶四季』の看板娘で、近所の人たちからは『春夏秋冬の女神たち』とも言われている。
「じゃあ、今日から新学期。零は高校生、有紗は大学2年に進級、私たちは大学4年に進級しました。ここにいる皆ケガや病気をしないように常日頃から体調管理をおろそかにしないよう‥‥」
「春ねぇ、長いよ。もっと短く簡潔に」
「むぅ~~、じゃあ、夏希はどう言うの?」
「そうだなぁ‥‥」
そう言うと座っていたテーブルを立ち、
「この一年間がんばろー! カンパーイ!」
「えっ! それだけ!」
「まぁ、夏姉さんに賛成ですね。春姉さんは意気込みが長いです。もっと短くても構いません」
「う、うん」
秋実、冬美も夏希に賛同したのだった。
そして有紗は乾杯の音頭と共に朝食を食べ始めたのだった。
零はと言うと「アハハ…」と苦笑いしたのだった。
「うぅ~せっかく考えたのに~~」
と春奈は悔しがっていたのだった。
「…ふふ」
そんなやり取りをここの店主である四季博は微笑みながら見ていたのだった。




