只々暴力的に‥‥
裏社会の人間には様々な種類がある。社会に適合しなかった者、何もかも失って行き場を失くした者、金に眩んで犯罪を起こした者、何人者の人を殺した者、只単に刺激を求める者‥‥等など様々で彼らも先ほど述べたような者‥‥日の当たる社会から追い出された者たちであった。
そしてこの裏社会で生きていく中で彼らはとある男性に拾われた。その男性はこの国をより平和に導こうとしている仕事をしており人手が足りないからと殺し屋や窃盗などの犯罪経歴関係なく1人、また1人と経営している会社へ雇うのであった。その会社はなんでも近い将来この国を脅かすであろう獣人族や魔族やこの世界から1人残さず撲滅さるために日々獣人族や魔族が住んでいる場所を特定しそして見つければ人の恐ろしさをその身に徹底的に刻んでから殺すという仕事であった。以前まで獣人族、特に女子供は男と比べて非力が多く奇襲さえすれば容易に捕らえることが出来ていた。だというのにここ数か月どういうわけか獣人族を捕らえに行っていたグループが音信不通となっており未だに連絡が返ってきていなかった。これまで何十のグループがその場に向かったのだが同様に連絡どころか誰1人として帰って来なかった。この事に会社の社長から状況報告の説明を行方不明となるグループが出るたびに求められるのであった。当然理由は分かっていない。どのグループにも裏社会で長く生きている者で実力もプロに近い実力を持っている、だというのに音信不通でそれ以降何の報告が上がってこないため「申し訳ありません!!」といつも決まった言葉しか返せなかったのだった。これによりその男性はストレスが溜まる一方でその解消に捕らえた獣人族を徹底的に痛めつけたり、そのまま交わりの行為を行う日々が続いていたのであった‥‥。彼らはストレスが溜まっているその男性を見る度にもし気が変われば俺たちが獣人族のようなひどい目に遭うのではないかといつもビクビク怯えていたのであった。
だが彼らは知らなかった‥‥。あともう少しで裏社会で生きた者としての最期の末路をその男性と共に迎えることに‥‥
「おい、そっちにいたか」
「駄目だ、もう1回部屋を探し回ったがどこにも居ねぇぞ」
「こっちもだ。天井をこじ開けて確認したがどこにもいない」
2手に分かれてからしばらく経った。この廃墟ビルは1階の広さがそこまで広くないため各部屋1人ずつ再び捜索を行うのであった。今度はただ部屋中を探すのではなく天井を魔武器で切り裂いてから天井の中を調べた。だが見つかったのはネズミやGの付く虫などの生き物ばかりであった‥‥。
「くそっ! もう2手に分かれて探し始めてからすでに15分は経っている! だというのにどうして未だに見つからないんだ!」
捜索グループを仕切る彼は未だ見つかったという報告を聞けずそう叫ぶしかなかったのだった。
「なぁ、そろそろ除去グループの所に戻らないか? もしかしたらもうすぐ瓦礫の除去が終わるかもしれないしさ」
「そんなことをしていればあの人の怒りの矛先が俺達の方に向かって来るかもしれないんだぞ!」
「分かってるさ。でももしかしたらあの獣人と人間は1階にいるかもしれないぞ」
「‥‥どういう事だ? 1階は全部調べたはずだぞ」
「俺はさっきまで風の魔術を使って部屋1室ずつに風を送り込んでいたんだ。この風には広範囲でそよ風程度の風を送るんだけど、もしこの風が2人に反応すればこの風は真っすぐじゃなくて物体の横を通るように過ぎていくんだ。そしてこの術はまだ1階にはしていないから1階のどこかにいる可能性が高いという事だ」
「だ、がそうだった場合もう外に逃げているんじゃないのか?」
「そこは問題ないよ。このビルに入った時に唯一の扉を出入りできないように爆破術を仕掛け済みだよ。あっ、勿論後でちゃんと解除するよ」
「な、なるほど‥‥それなら急いで除去グループに戻って早く1階に行かないとな」
彼が言うには最後に入ってきた際にこっそりドアに強力な爆破を発動させる術を施していた。発動条件は誰かがドアに触れた瞬間にこのビルが崩壊するほどの爆破を起こす‥‥である。勿論施した術者が解除できないようならばこの術により彼らは命令をこなすことが出来ても永遠にこのビルから出られなくなるのであった。そんな術をかけた彼は最近この裏社会にやって来たばかりのようで自分たちを雇ったその男性にかわれて今現在この場にいるのであった。術の実力はプロと同等のレベルで何でもエネミー複数体を相手に難なく撃破するほどのレベルとの事であった‥‥。まぁ目上の人間に対して言葉遣いがどうかと思うがそこは置いておこう。
そしてもうすぐ瓦礫除去を行っているグループの元に辿り着くという所で何か違和感を覚えた。まずはこの先にそのグループがいるというのにまるで人1人もいない静寂したような静けさであった。そしてもう1つは血の匂いだった。何か起きたのかと思い急いでその場に向かうと、そこには
瓦礫周辺を覆うほどの盛大な血がバケツでばら撒かれたのかというほどにぶちまけられていた‥‥。
そこにあるのは赤、赤、赤‥‥と他の色が確認できないほどの多さであった。そしてすでに死んでいるであろう複数の遺体には何か巨大な刃物のようなもので一撃で切り裂かれており、中には体の中にあるであろう各臓器がそこら中に散らばっていた。そして共通点があった。それは‥‥
‥‥ボトン、ボトン、ボトン‥‥
と放心状態となっている彼らの足元に何かが転がって来てそして恐る恐るソレを見ようとすると
「う、うわああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
1人がそう叫んだ。そして見たのは血の付いた生首だった。その生首は先ほどまで共に行動をしていたメンバーで瓦礫所を任せた者であった。瓦礫除去を任せたメンバーは5人、その5人ともすでに生首だけの状態となっていた。
一体誰がこんなことをしたのだろうか、この廃墟ビルにいるのはあの2人の他にすでに死んでいる者たちも含めてメンバーは17人だ。獣人を連れて行った人間がやったとは考えられない。何故ならあの超級魔術を使ってこの僅かな時間で回復できるとは思えない。獣人か? 嫌荒れの繰り出す爪の場合は致命的な一撃を食らうだろう。だがその場合除去している者たちでもすぐに気付けるだろう。そしてこちらに合図を送るはずだ、だけどその合図は2手に分かれて以降全くなかった。
「‥‥一体誰がこんな事をしたのでs
隣にいた1階の扉に爆破術を施した彼がその言葉を言い終える前に
ブシャアアアア!!!!
その音共に首が床に落ちてそのまま深紅の赤い液体が先ほどまであったはずの首から盛大に飛び出したのだった‥‥。そしてそれがきっかけか今までついていた僅かな電気がフッと消え、辺りは何も見えなくなったのだった。
『なっ! 一体何が起きた! 先ほどまで俺たち以外の人間はいなかったはず‥‥』
真っ暗となった状況下でこのグループを仕切る男はそう思っていたが近くで術を使用し明かりを点けようとする者がいたため思わず
「よせ! 今明かりを照らすな!!」
その言葉をかけるのが一足遅かった。明かりを術で照らした瞬間その者の体が何の前触れもなく上から真っ二つとなったのだった。そして見えはしないが臓器がぶちまけられたかのような音がしたのであった。さらにはあまりの恐怖に「い、嫌だぁぁぁぁ!!!」「し、死にたくない!」とどこかに逃げる複数の声がしたのだがその者たちも同様にブシャアアアア‥‥!! と盛大な音共にバタンと倒れる音がしたのだった。その後も次々と断末魔を上げながら殺されていく者、手当たり次第に術を放ちその行動により場所を特定されたことに気付かずそのまま文字通り真っ二つにされる者、体を震わせ恐怖で身動きが取れずそのまま胴体と足が切断される者と只々殺されていく一方であった‥‥。これはまさに暴力的な光景であった。
‥‥‥どれくらいの時間が経ったのだろうか。どれくらいの叫び声を正常に機能しているか分からないこの耳で聞いただろうか、どれくらいの殺されていくメンバーの噴き出す血を浴びただろうか、この場には後誰が残っているのだろうか? そんな事しかもう考えられなかった。術を使えば、この場から動けば、少しでも声を出せば間違いなく瞬殺される‥‥そのため手も足も出せず、動かせずで何も出来なかった。そんな彼の耳元に
「‥‥さて、後は貴様1人だが何か言い残すことはないか」
そんな声がしたのだがその声の主は目の前にいない、どこにいるのかもわからない、きっこれは幻聴なのかもしれないと思えたのだった。だから
「‥‥は、はは、ははは、はははははははははははははははははははははは‥‥‥
もう力なく笑う事しか出来なかった。
そしてそのが最期の言葉となりそのまま僅かに見えた巨大な大斧で首を斬られたと認識すると同時にその男性の視界はどこまでも続く暗闇に包まれたのだった‥‥。
その後この廃墟ビルは巨大な大斧を持つ少女により一瞬で崩壊したのだった。
「‥‥こんなところか」
その廃墟ビルが崩壊する瞬間を見届けた星乃零はその後傍に未だに気を失っている獣人の少女を抱えて現在保護している他の獣人のいるホテルへと向かうのであった。




