花里マリィからの罰
「ディア、よくも私の寝姿を晒しだしたわね!」
「いや、俺もまさか未だに下着姿で寝ていると思わなかったぞ。もう11月なのに…」
「私は暑がりだから常に薄着姿じゃないと汗だくになるからよ! それはディアも分かっているでしょ!」
ディアと呼ばれている星乃零は現在マリィに胸ぐらを掴まれており叱られているのであった。どうしてこのような状況になっているのかは数日前のお昼の際に零はマリィにクラスメイトに『HSP』の解散理由を聞いてみる? という事でマリィに連絡をしたのだがその時にテレビ通話の状態で話していることを教えると顔を真っ赤にしてそのまま聞けずじまいとなっていた。そして今日学校から喫茶四季に帰ってみると何故かマリィがおり零の姿を見るや否すぐさま零の元へ駆け寄りそのまま胸ぐらを掴んでさらに逃がさないように零を瞬時で用意した水の鎖で手足を拘束して現在絶賛説教中となっているのであった。
「俺が前に作ったひんやりローションを持っていたはずだろ。あれはどうしたんだよ?」
「とっくに切れているわよ! 前日に切らしたからディアにまた作ってもらおうと思っていたのよ!」
「あぁ、そうですか‥‥。それはすみませんでした‥‥」
「謝って済もうなんて思ってないでしょうね‥‥」
「いや、まぁ、付き合いの長いマリィの事だから謝っても簡単に許してくれる‥‥訳ないよね」
「へぇ、分かってるじゃない。そうよ。乙女の姿を他の人間以外に曝け出したのだから許すわけないでしょ」
「‥‥他の人間ってなら、もしかして俺だけが見たのなら許してくれたのか?」
「今、何か言った?」
「あ、いえ、何も‥‥」
「とにかく、罰として日曜日に私の買い物に1日中付き合ってもらうわよ」
「えぇ~~、1日中?」
「あら、1日中じゃ足りないなら、1週間、1か月の方がいいかしら?」
「いえ、1日中でお願いします!」
「ふん、分かればいいのよ」
そうしてようやく水の鎖と胸ぐらを掴まれた状態から解放されたのであった。ちなみに喫茶四季では先ほどの状況下でも絶賛営業中でシフトとして入っていた四季春奈と四季秋実は一体何が起きたのか状況が追い付いていおらず唖然としており、そこに居合わせたお客も「何々? 喧嘩?」「あの水の鎖はどこから出したんだ?」等と零達を見ていたのであった。その中には「あぁ、俺もあの美少女に縛られたい!」「鎖と胸ぐらを掴まれるセットで罵声を浴びさせて欲しい!」「このブタ‥‥って罵って欲しい!」「むしろ足で頭を踏んで欲しい!」などなど店内にいる一部のお客(特に男性)はマリィの行動を見てはぁはぁ…吐息を切らしており、「次の連載はSMプレイものに決定! あぁ! 筆が進む進む!」と叫ぶ女性もいるのであった。
この店には変わった性癖を持っている人が多いのかな? と不思議に思うのであった。
そして喫茶四季が閉店しその後は夕食を摂るのだが、その中に何故かマリィがいるのであった。マリィは『HSP』が解散した後は一体どういうわけか喫茶四季でバイトを始め、そして時々だが一緒に夕食を召し上がるのであった。マリィは現在この店で住んでおらず元いたマンションで過ごしているがこの場所がそれほど気に入ったのかバイトの日に限ってここで寝泊まりをしているのであった。これまでマリィは居候のため正式なバイトではなくお手伝いとしてここで働いていた。理由は「ただで住まわせてもらうのは悪いから給料とかいらないから接客でもするわ」と言うとすぐにこなしていた、それも容易くに、だ。これは聞いた話だが居候期間が終わると何でも店長である四季博に正式にここでバイトをしたい。と申したらしい。そして『HSP』の解散翌日から正式にここの従業員として働くこととなった。一体どういう風の吹き回しか後日聞いてみたところ「ん~~、まぁ、単純にいい人間たちだったから」と一言告げるだけであった。
マリィは極度の人間嫌いである。どうしてそうなったのかは昔ある出来事が起きてそこで人間にあることをされたからである。それ以降マリィは人間に対して強すぎる警戒心を向けており、それは小さな子供や女性、高齢者に対しても同様の事が言えるのであった。そしてもしマリィに危害を加えてくる人間や欲望を満たすために弱者を虐げる者がいれば何の躊躇もなく殺すのである。だがその行為は裏返せば人間は嫌いだが欲望や願望のためだけに喰い殺される人間や横暴や理不尽に振り回され挙句の果てにはそのまま死ぬ結末を迎える人間を見るのは同じくらい嫌いとも言える‥‥‥かもしれない。そんな矛盾だらけの彼女は人間嫌いだがそんな悲しい末路に向かわせないため、幸せな生を全うして欲しいがためだけに人を何の躊躇もなく殺しているかもしれないとも考えられないこともないだろう‥‥。
そしてマリィの与えた罰が決行される日曜日となった。零はあるデパートショッピングの入り口の前にいるのであった。そのデパートの営業は10時からとなっており現在の時刻は9時50分、つまり営業開始まであと10分であった。マリィから送られたメールには集合時間は9時半と書かれていた。だというのにすでに集合時間から20分も経過していた。朝が弱いならお昼からでもいいのではないのか? とメール返信しようと思ったがそうすれば『何? 文句ある? 罰を3か月に変えるけどそれでいいの?』と返ってきそうなので心の中でそう思うだけで返信を止めたのであった。そして営業開始まであと残り僅かとなったところですぐの通りからザワザワと何やら騒ぎ始めた。そしてその人々の目線の先には1人の女性がいた。オレンジ色のチェックジャンパースカートにリボンのついたブラウス、キャスケット、可愛らしいショルダーバッグ、リブのタイツで秋色満載のコーデをその女性はしていた。そしてその女性は茶髪で髪はミディアムヘアでストレート姿であった。そんな女性はどういうわけか零の目の前で止まり「それじゃあ、行くわよ」と告げるとすぐさま入り口の方へと向かうのであった。その後ろ姿を「何か一言ぐらいあるだろ…」と愚痴りながらも追いかけるのであった。
零にはその女性が一体誰なのかは見た瞬間に分かっていた。髪の色やいつも見ている髪型、そしてあまり見慣れない洋服を着ていても付き合いが長い零から見ればすぐに分かる事である。結論から言えばあの女性は花里マリィである。




