暗闇にて
そこはどこかにあるであろう市場であった。日中はそこで日用品や雑貨が多く売られているであろう場所で人が多く寄せることだろう。だが現在は深夜帯という事もあり人々は誰1人としておらず店のシャッターはすでにどこも閉まっている。だというのに1人の少女が息を切らしながら走っていた。まるで急いでいるように、まるで何かに追われているかのように‥‥。そしてその少女の背後には遠くからだが複数の人物が向かってきていた。その人物たちは黒いスーツを着ており手には拳銃や魔導具を所持しておりすぐに撃てるようにトリガーに手をかけていた。そして1人の人物が
「いたぞ! あそこだ!」
と叫びながら遠くにいる少女を指したのであった。その距離は50メートルほどでこのまま詰めれば追い付くことが出来るであろう。だがその少女は息を切らしながらでも追いかけてくる複数の人物との距離を何とか離すことが出来ていた。少女はすでに数キロほど走っており息を切らしている、だというのに走る速度は未だに落ちていない。そして少女は狭い通路を見つけそのまま進んでいき当然追いかけている複数の人物もその通路に入っていく少女の姿を確認しているため後を追うように入っていくのであった。
その通路は1本道で並んで進めるような広さではなかった。少女にとっては問題はないが追いかけるその者たちにとっては不利であった。だがその者たちは少女が入った通路の先には何が待ち構えているのかがすでに分かっている。だからそのまま少女を追いかけるのであった‥‥。
「はぁ、はぁ‥‥あともう少しで出口のはず。これであの男からようやく逃げ切れる」
少女はこの薄暗く狭い通路を進んでいくなか背後に違和感を覚えた。先ほどまで追って来た人物の気配が少ない。と。そんなことを思っている所に出口の明かりが見えた。このまま行けば開けた場所に出られるかもしれない‥‥という可能性が見えた瞬間であった。そして出口から出た瞬間その可能性は一気に瓦解した。
「微かな可能性を見出せていたが、残念だったな」
少女が見た光景は先ほど思っていた開けた場所だった。近くには隠れる場所が多くありそうなデパート店、食べ物が多くあるであろう食堂、明かりが点いている商売店が見えたのだが少女が見たのは黒いスーツを纏った十数人の人間であった。
「そ、そんな‥‥どうして貴方がここにいるの‥‥」
「どうしてって? それは‥‥」
持っていた拳銃を少女の太股めがけて発砲した。
「~~~~~!!」
撃たれた太股からは大量の血が流れ、悶絶するほどの痛みと共にその場に崩れ落ちるのであった。
「逃げたペットにきついお仕置きをするために決まっているだろう」
「だ、誰がお前のペットになるものか‥‥」
「なんだ、飼い主に向かってその目は‥‥どうやら躾が足りなかったようだな」
何とかこの場から逃げようとするが後ろにはすでに先ほど追ってきた人物たちがおり、左右もすでに同じような人物で固められており逃げるに逃げられない状況となっていた。そんな少女の前にその男はずかずかと向かい、そして同じ目線にいきなり合わせたと思いきやパンッ! と今度は肩に拳銃を発砲したのであった。
「~~~!!」
「さて次はどこを撃って欲しい?」
「ふ、ふざけるなっ‥‥! 私たちを弄んで何が楽しい!」
「あぁ、楽しいさ。何故ならお前達獣人族は所詮はそこら辺にいるペットと変わらない。だが違うのは人のような姿をしており、言葉だって喋れる、それに‥‥他の女に負けないくらいの良い体をしている」
反対の手で少女の胸部を強く揉むのであった。
「こ、この手を離せ! 薄汚い人間め!」
「何だ、顔を赤くして‥‥まさか恥ずかしがっているのか? 俺たちはもう互いの体を曝け出した仲だというのに‥‥」
「口を閉ざせ! お前はどこまで私を辱めればいいんだ!」
「そうだな‥‥お前の心を完全に屈服させ何もかも絶望する瞬間までだな」
「き、貴様ぁぁぁぁぁ!!!」
「おっと」と同時に少女は撃たれていない反対の手で拳銃を奪おうとしたが難なく躱されそしてその腕めがけて拳銃が三度発砲された。
「がぁぁぁぁぁ!!!」
「拳銃を奪って形勢逆転を狙おうとしたが残念だったな。俺は相手の動きが通常より遅く見えるんだ」
そして仕舞には少女の腹部めがけて蹴り上げたのだった。そしてどさっと音を立てて血を出し過ぎたのか、それとも激痛によるためか今まで保っていた意識が落下した瞬間糸が途切れるように失うのであった。だがその瞬間少女は誰にも聞こえないほどの声量でこう呟いた。
「誰か‥‥助けて‥‥」
意識を失ったことを確認するとその男は部下に「連れて行け」と命令し複数の部下が少女に近づこうとした。そして少女の体に部下たちが触れようとした瞬間、上空からものすごい速度で何かが降ってきた。その衝撃でその部下たち全員は数メートルまで吹き飛ばされ、そして部下に指示した男が見たのは竜巻のような風と共に1人の人物が意識を失い倒れている少女を抱えてこの場から立ち去る光景であった‥‥。




