圧倒Ⅳ
3階……。
「な、なんなんだ、こいつ、は」
「召喚獣、だが、今まで見てきた召喚獣とは違うっ!」
「ひぃっ!? く、来るなァァァァガッ!!」
武装者、魔導具を身に着けている武装者は襲い掛かってくるそれの対応をしていた。だがそれらは銃器や術に対しての攻撃が全く効いていないのか一度たりとも怯むことなく距離を詰めていき、そして1人、また1人と戦闘不能していく。そんな光景を
「ふぁああああ。何もしないでただのんびりするだけだから楽だなぁ」
抱き枕のようなものを浮かんでおり、その枕に抱き着いて呑気にお菓子を食べている少女がいた。
「あーむ。…ん~。やっぱりお菓子は人を堕落させる食べ物だなぁ~」
少女のサバには1人の人物がいる。その人物は何も言うことなくその少女にお菓子を食べさせ、飲み物が入っているコップを近づけ、そのまま少女はコップについているストローで中身のジュースを飲むのだった。
「ん~。やっぱりだらだらサイコー」
ぷはっ。とジュースを半分ほど飲み、幸せそうに言うのだった。
「……はぁ。それにしたって、なんでこんなに広い場所を僕1人で対応しないといけないの? 他の場所はここよりも半分だからきっともうそろそろ終わっているよなぁ。ご主人はやっぱり僕をこき使うよなぁ…」
3階は他の階と比べて倍ほど広い。そのため、少女のいる場所にも人質が何か所集められている。
「……まぁ、いいや。ご主人様から今度新しい惰眠グッズを作ってもらえるから、その分だけ動けばいいや」
そうして少女の周りに突如として何かの陣のようなものが浮かんできて、その中から様々な動物のような生物が何十体と一気に出てきたのだった。そしてその生き物たちは一斉に散開していき、しばらくしてから「な、なんだ! こいつらは!?」「撃ち殺s ぐぁあああ!!!!」「怯むな!! 相手はたかが動物! 俺たち人間の恐ろしさを見s ゴフッ⁉」………と遠くから様々な阿鼻叫喚が聞こえてくるのだった。
「それにしても、ここの人間って、なんか変なもの付けていても大したことないなぁ~」
そうして眠たげな少女が現れてから僅か数分後にはこの階にいる数十人の武装者たちは1人残らず倒れていたのだった。
4階では、人質の数は他の階と比べて裕福そうなお客が多かった。何せ4、5階は高級店が多くそこでは高価な宝石から高価な装飾品、高級品の品々がより多く取り揃えていた。そのためか4階にいる人質は店員合わせても少なく、数か所で分けることなく一か所でまとめられていた。その数はおよそ100人前後である。そしてその人質を武装している者や魔導具をつけている術者たちが取り囲んでおり、彼らは目的された依頼が終われば依頼主からは好きにしていいと言われている。それは文字通り好きにしていいことで身に着けている宝石からネックレスを好きなだけ奪えて、好きなだけ店内にある商品を抱えきれないほど奪っていいということと捉えている。
彼らは何とも良い依頼だと思っていた。何故ならこの場には自分たちを捕まえられるような実力者は見たところ1人もおらず、両手に高級そうな宝石をしているだけのただの無術者しかいないのだから。よってこの場は彼ら武装者たちにとって楽園のようだと思っていた。
そう、数分前までは……。
「……ゴフッ!」
1人の武装者がその場に倒れたのだった。その胴体は何かに食い抉られていたのか半分近くなくなっておりもう間もなく死に至るところだった。
この場にはすでにほとんどの武装者や術者たちが大量の血を出しながら倒れており、中には首が何かに食われたような痕を残して死に絶えていた。
そして最後の1人は何か化け物ような姿をした何かに首を掴まれそのまま持ち上げられていたのだった。
「な、なんなんだ、お前たちはぁ!!」
その思いの丈を叫びながらその化け物に言う。それに対して
「ねぇねぇ? 今どんな気分かな? こんな小さい子供相手に何も出来ずにただただ蹂躙されて、あっけない終わりをしようとしている感想は?」
その化け物は外見からして7~8歳くらいで無邪気そうな男の子だった。
「ゼル。早く終わらせろ。ご主人様からは迅速に終わらせろと仰せつかっている」
「わーてるって。だから俺1人でごみ処分しただろ? これでご主人様喜んでくれるかな?」
「……少なくとも、この惨状を見たらご主人様にまた怒られるぞ」
「それもそっか。じゃあ、さっさと終わらせて散らかっているものを片付けよーっと」
「ちなみに僕は手伝わないからな。怒られるのもゼル1人だからな」
「えー、何でだよ。俺たち3人一蓮托生っていうやつじゃん」
「何でその一蓮托生に僕とベルが巻き込まれなければいけない」
置いてあるソファーに優雅に持っている本を読んでいる男の子と、隣で可愛いぬいぐるみを見ている女の子がいるのだった。どちらも7~8歳の子供と思われる。女の子に関してはぬいぐるみに夢中なのか会話に入ろうとしなかった。
「…お、お前、たち…」
「おっ、まだ生きてたんだ。えらいなぁ~。そうだ。最後の遺言くらいは聞いてあげるよ。はいどうぞ」
持ち上げている男が何かを言うことに対してゼルは待つのだった。そして男は
「……くたばれ」
ゼルに向かって男は何かを投げた。それは小型のグレネードですでに安全ピンは抜かれていた。そして
ドォン!!
という音がした。
ゼルのお腹の中で。
「…咄嗟に口を開けたんだけど、何だったんだ? 一瞬何かはじけたような感覚がしたんだけど……」
先ほど男はグレネードをゼルに向けて渾身を込めて投げたのだった、自分も無事では済まない覚悟で。だが、その覚悟はゼルの単純な行動によって砕かれた。あろうことかゼルは投げたグレネードを何かの食べ物と間違えたのか口に入れてそのままお腹まで入っていき、そのまま中でグレネードが炸裂したのだった。もしグレネードがお腹出炸裂すれば間違いなく体の内臓全てが飛び散るどころかその全てが跡形もなく消滅するだろう。だが、そんなことは起きなかった。ゼルの体は今もピンピンしていた。
「……まぁいいや。それじゃあ、遺言も聞いたしそろそろお別れだね」
「や、やめt
そうしてヒョイっと軽く上に投げてそのまま
「いただきまーす!」
そうして、そのフロアにバリバリ、グシャグシャと何かをかみ砕くような音が響き渡るのだった……。
再び、1階。
(…うっ、俺は一体何を……。そうだ、仲間にあのガキを殺せと指示をした。それから……)
そう思い顔を上げると武装者たち全員その場で倒れており、人質は全員意識がなかった。だが死んではいなかった。どうやら深い眠りについているようだった。そう思いながら腕を動かそうとするが、
(な、なんだ、動けない、何故、だ……)
今の男の姿は大の字のようにうつ伏せとなっていた。他の武装者たちに関しては意識がなく、呼吸をしているかどうかすら分からなかった。そして男は腕に痛みがあることに気付きそこを見てみると短剣のようなものが突き刺さっていたことに気付いた。それを何とか取ろうにも反対の腕が全く動かなかった。そして両足も麻痺しているのか少しも動かすことすら出来ずにいた。そんな時
カツ、カツ、カツ……。
足音がしたのだった。男は誰が来たのか確認しようとするが顔すら動かすことが出来なかった。そして、
「……お前が、この馬鹿どもの首謀者か」
その声は男、それも少年のような声だった。その少年は武装者のすぐ近くにいる。動かせない体でこの状況を切り抜けるか考える。
「我が主からの問いに答えることすら出来ないのですか」
ヒュン。反対の腕に強烈な痛みが襲い掛かった。おそらく先程つく刺さっている短剣なのか、この状況では何が突き刺さっているのか分からなかった。それにさっきの声はあのガキの声だった。そしてそのガキは男に対して我が主と言った、つまりこの少年をうまく使えばこの状況を切り抜けられるのでは? そう思い、
「もう一度問うぞ。お前がこの馬鹿どもの首謀者か?」
「……ちがう。俺は、ただ、雇われた者だ。俺たちの、リーダー、そして依頼主は、別館の4階に、いる」
「……そ」
そう言い残し男の足音が少しずつ遠ざかっていく。
「待って、くれ。俺たち、を、助けて、くれ。本当は皆、こんなこと、するつもりは、なかったんだ……」
その声は届いたのか、少年は再び近づいてくる。
「…ふ~ん。そっかー。本当はしたくなかったんだー。そっかそっかー」
「あぁ、だから、頼む。助けt
近づき、そして
「……で?」
懇願している男性のホルダーから拳銃を取り出し、そのまま頭部に突きつける。
「お前は馬鹿なのか? 助けてって言えば誰彼助けてくれるとでも思っているのか? ならばそれはただの夢物語だ、ただの空想だ。現実は助けてといった程度で誰も助けてはくれない。それくらい裏社会の人間なら分かりきっているだろ」
容赦なかった。少年は何の躊躇いもなく拳銃を助けを求めている男に突きつけた。だが、
「………なんか、冷めたなぁ…。……ティナ」
ヒュン。と突き付けていた拳銃を少女に投げ渡される光景が見えたのだった。そしてその少女はそのまま
「はい。我が主」
冷たく、冷酷な表情のままこちらに拳銃の照準を合わせて、そして
パンッ!
その銃弾が体を動かせない男に向かっていき………。




