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創られた世界に破壊を込めて  作者: マサト
合同交流会

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抑えていた想い

 上空に謎の爆発音からしばらくして零は再び第7女学院に転移してきたかのように姿を現した。辺りはエネミーの影響によりクレーターや運動場にある建物が瓦解していた。そして地下シェルターに避難していた生徒達も恐る恐る出てきて辺りを見渡しようやく危機が去ったと理解したのだった。そんな中山影実憂が零の元へ「優美ちゃん!!」と言いながら駆け付けた。零は今影山優美を抱えている。先ほどの一撃で怪物を完全消滅する寸前で依り代となった彼女を回収したがすでに存在そのものを保つための何かしらの力が限界に達したのか消えかかろうとしていた。あと数分後には影山優美という存在が完全に消滅するだろう‥‥

 「‥‥よ、よかった、みゆを…かけがえの、ない、ともだちを、きずつけなくて‥‥」

 「いや、いやだよ‥‥これからもずっと一緒にいたい、幽霊姿でも良いからずっといたいよ‥‥」

 「うん‥‥わたし、も、いっしょに、いたかった」

 「もう弱音を吐かないし、いじめにも負けない、勉強だってもっと頑張る‥‥だから、だからぁ‥‥」

 涙が、嗚咽が止まらない。そんな彼女の涙を拭うように手を差し伸べる。だが手がすり抜けて触れることが出来なかった。それでも‥‥

 「だい、じょうぶ、だよ。わたしは、いつでもみゆを、みまもって、いる、から、もう、なかないで」

 「~~~~ッ、優美ちゃん! 優美ちゃん!!」

 そしてそれが最後の遺言となり、ついに影山優美の存在そのものが消え————


 「【時ノ領域(クロノス・ゾーン)時間停止ロック】」


 その一言で何もかもが止まった。こちらに向かって来る1-Gの5人、飛んでいる鳥、そして何より時計の針が15時になる寸前でピタっと止まった。それはすでに消えかかろうとしている影山優美の存在すらも止めたのだった。

 『‥‥‥え? 一体、何が起きたの?』

 体は動かせない。だが意識はちゃんとある山影実憂はそう思うのだった。一体誰がこのような現象を起こしたのか何とか探そうとしたところに

 「解除」

 その一言で体が急に動くようになったため声のした方を向くと虹色の杖を持った星乃零がいた。

 「あの、この現象は一体なんですか? それに‥‥‥優美ちゃんが未だに消えていないのは‥‥」

 「簡単だよ。数分間ほどこの世界の時間を停止させたんだよ」

 「…‥‥‥‥‥‥え?」

 理解できないのも当然である。何せ時間そのものを止めるような術はこの国に、それどころかこの世にすら存在するわけがないのだから。

 「今はそんなことは良いだろ。‥‥‥それで、貴方はどうしたい?」

 「どう…って?」

 「決まっているだろ。このまま大切な友人とお別れするのかどうかだよ」

 「…‥‥!! そ、そんなの…‥‥そんなのいやに決まっています! これから、これから思い出を増やしたいと思っていたのに‥‥こんな、こんな‥‥」

 「こんな結末は嫌、と」

 「はい…」と頷き、「でも、私じゃあどうすることも出来ません。私には大した力もなければ誰かに頼られることもありませんから‥‥」と言うのだった。その言葉に

 「‥‥‥貴方は何か勘違いをしている」

 「‥‥え?」

 「力とは何も腕力や魔力量じゃないし、誰かに頼られるためにパシリとして利用される必要もない。そんな風に考えていたらさっさと切り捨てた方がいい。そして何か1つでも大切な物を心の中に入れていればおのずと強くなれる」

 「で、でも、そうしたら、私は‥‥」

 「‥‥あの脅迫動画の事か」

 その一言にビクッとなった。だが零は言葉を続ける。

 「質問を変えるけどさ、山影実憂の一番大切な物は何?」

 「それって、どういう‥‥」

 「単純だよ。今この瞬間貴方にとって絶対に失いたくない大切な物、あるいは人でも構わない‥‥例えばそこで今にも今生の別れをしてしまいそうなかけがえのない友達‥‥とかね」

 先ほどまで絶望しかなかった状況から一筋の希望を見出せた気がした実憂だった。もしここで大切な名前を言えば目の前の彼はどう思うだろうか。我がままと思われるだろうか、呆れられるだろうか、それとも見捨てられるだろうか。そう考えるとやはり怖くて大切な名前を言うことが出来なかった。

 「‥‥いきなりこんなことを言っても信じてもらえないけど、俺には不可能を可能にするある力を持っている。この力は横暴や理不尽な思いを、そして何より最悪の結末(バッド・エンド)から最高の結末(ハッピー・エンド)に変える事が出来る。だから‥‥」

 目の前の彼————星乃零は実憂に手を差し伸べた。


 「一度だけで良いから、信じろ」


 零だってこのまま最悪の結末を迎えたくなかった。何せ数週間ほどだが影山優美とは記憶を失っていたとしても共に過ごしてきた仲だ。だからこのまま消滅させるわけにはいかないし、これから過ごせるであろう2人の仲をこのまま引き裂かすわけにはいかないし、そして何より今も泣きそうな表情をしている彼女をこのまま今生の別れにさせるわけにはいかない。例えこの結末がこの世の理だとしても零自身がそれを認めないし、認めさせない。だから零はその結末を、運命を完膚なきまでぶち壊すのだ。そしてそれを成し遂げられるほどの力を零を持ち合わせているのだから‥‥‥。

 その一言に山影実憂は‥‥

 

 「わ、私…私だって‥‥私だってこれからも優美ちゃんと一緒に過ごしていきたい! 辛いことも楽しいことも全部共有したい! 一緒に学校生活を送って一緒に卒業したい! 休みの日には2人で可愛い洋服を着たりおしゃれをしたりしてお出かけしたりしたい! 大人になってもずっと仲良しでいたい! …‥‥なのに、なのにこんなお別れ何てあんまりだよぉぉぉぉぉ!!!!」


 涙を再び流しながら今まで抑えていた感情を爆発させるように吐き出すのだった。そして最後に

 「だから、だから‥‥お願いします。大切な友達を、優美ちゃんを()()()()()()()‥‥」

 涙ながらに今まで誰にも言えなかったその一言を伝え手を伸ばした。そして‥‥

 「あぁ、任せろ」

 差し伸ばした小さな手をしっかり掴んだのだった。

 

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