1-Gが行動開始するまで・・・
「子供如きが図に乗るな!!」
再生した2本の剣を零に向けて振り下ろした。だが結果は先ほどと同じく零の剣に触れた瞬間に真っ二つとなった。だが怪物はそれが狙いだった。両手で1本の剣を支えながら構えている状態の零の足元に大きなクレーターが出来ていた。誰であろうと強力な一撃を受け切ってもわずかだが次の行動に移る時間が遅れる。それは目の前にいる子供も例外ではないと怪物はそう思い先ほどよりも強力な一撃をお見舞いした。そして2本の剣が真っ二つとなったと同時に鋭利な刃となっているムカデ足を繰り出した。その素早い攻撃に対して零は防御動作を行っておらず刃が腹部に吸い込まれていくのだった。今から防御動作を行っても間に合わずそのまま串差しにされ致命傷を受けてしまうだろう。だが、もし今起きていることが前もって分かっていたらどうだろうか……そう、先ほどよりも強力な一撃を防いだその隙を狙ったかのようにムカデ足による腹部めがけて繰り出されることがすでに分かっていたら…
「【ホーリー・プロテクション】」
光輝く障壁が腹部めがけて向かっていた刃を難なく防いだ。
「なっ!?」
「【黒閃烈火】」
繰り出されたその黒い剣は漆黒の炎を纏い怪物を斬り裂いた。だが例えどんなに切り裂かれようともすぐに回復してしまうのが再生能力である。だが、
「ッ!! ば、馬鹿な! 斬られたところが再生しない!? な、何故だ!」
斬り裂かれた胴体が塞がらないどころか漆黒の炎がみるみる燃えていく範囲を広げていくのだった。
【黒閃烈火】は斬った所を漆黒の炎で燃やし続ける効果を持っており、そしてこの炎は水をいくらかけて消火しようが消えることはなく、対象が完全に燃え尽きるまで永遠という時間まで燃やし続ける。そして怪物の持つ再生能力ではこの炎を上回る回復速度に満たないため一向に攻撃跡が塞がることはない……
「次で仕舞だ」
怪物は思った。その言葉は偽りではない。本当に次の攻撃で自身は完全に消滅させられるのだと。だがそれは認めない、認められなかった。なぜならその怪物には例え人を辞めこのような怪物として生まれ変わっても果たさなければいけない目的があった。それを果たすまで例え目の前に対峙している者が自身よりも怪物であろうとこんなところで果てるわけにはいかない。だから…
「すべての僕よ、我に集え!!」
2本の剣を地中に刺し、その地中に魔力を注いだ。するとその地中の中から武士の姿をしたような者たちが出てきた。その数おおよそ千体。そしてその者たちを怪物は1人残さず体内に取り入れ始めた。その影響だろうか、今まで燃えていた漆黒の炎が徐々に消え始めた。考えれることは武士のような者たちを取り入れることで再生能力が大幅に強化され燃え続ける炎の速度に回復速度が勝りそのまま消化されたのだろう。だがそれで終わらなかった。肉体が急成長し全長15メートルから3倍の45メートルとなり、肩からボコッと音を立て新たに2本の剣を持った腕が生え計4本となり、ムカデ足も100から200ほどまで増えた。そして「■■■■■ーー!!!!」と先ほどまでの人のような姿から一転し顔立ちがもはや人の顔という姿を保っていない。更に追加で先ほどの叫びで空中に窓ガラスのようなヒビが入った。そしてそれを意味するのは……
第7術科女学院内におよそ100体のエネミーが現れた。どれもD、C級だがとにかく数が多い。そしてエネミーたちは近くにいるであろう生命体を刈り取るために動き始めた。それは勿論この場にいる第7、第4、第3の1学年の生徒たちである。生徒たちはそんな向かって来る真っ黒な光景に恐怖の叫び声を上げながら一目散に逃げ始めた。中には同級生を守るために自身の持ち得る術で何とか対応した。だが対応できているのはほんの一握りの生徒だけであり、ほとんどの生徒たちは自身が術者であることを忘れ、逃げることばかりに夢中だった。やがて対応していた生徒たちも数の暴力という圧倒的理不尽に打ちひしがれたり、魔力が尽き攻撃手段を失ったりと万事休すであった。そして数体のエネミーが1人の生徒の命を刈り取るための一撃を繰り出した……
「【ソード・スラッシュ】!」
「【フレイム・バースト】!」
「【ウインド・インパクト】!」
3か所にて繰り出した斬撃が、炎が、風が、ものすごい音を立ててエネミー数体を吹き飛ばしたのだった。その音をした方角をエネミーに対応していた生徒たちが見るとそこには大和里見、小笠原陽彩、柏木理沙の3人がいたのだった…
それは影山優美が実体として現れる少し前……
「エネミーがここに現れる?」
私こと柏木理沙はそう言うのだった。それは彼こと星乃零君が他の1-Gの5人を集めたときである……。
「今から10分後、この第7術科女学院にエネミーが現れる」そう彼が言うのだった。そしてその間彼は少し外せない用事があってそのエネミーを倒している暇がないと言っていた。その言葉に私たち5人は「?」と疑問に思った。一体どういうことなのかと聞こうとしたがその直後、試合場に突如謎の女生徒が現れたのだった。5人はその突然の光景に思考が止まったがそれと同時に彼はすでに手に持っていた虹色の槍を投擲したのであった。そしてその場に向かう際にこう言った。
あっ、そうそう、エネミーの数だけど、おおよそ100体はいるけど、まぁ、今の貴方たち5人だけでなら十分問題ないでしょ。今日までの特訓の成果を見せてね。
そう言い試合場へと跳躍して向かった。私たちはさらに頭上に「???」とさらに疑問に思った。そんな疑問の中彼の戦いぶりを見ていた。一言でいえば凄かった。戦っている相手も強いが彼はそれ以上だった。あの強さについてはすでに知っていたが私たちが今まで見てきた強さぶりを今起きている戦いで超えてきたのだった。一体彼の強さの上限はどこまであるのだろうかと戦いの余波で起きている風を受けながら思うのだった。その後突如試合場が光に包まれたり、7人の女生徒による【魔力接合】にて発動した【インフェルノ・ブラスター】が先ほどまで彼と戦っていた謎の女生徒に直撃と予想外の展開に見舞われていた。だがこの後それを上回る展開が起きた。その女生徒が持っていた黒い剣から突如黒い霧が大量に放出されそしてその霧に女生徒は成すすべもなく捕らわれ、やがて繭のような変わりそして中から得体のしれない怪物が出てきた。その怪物は見ただけでも恐ろしいが彼はそんな怪物の振り下ろされる2本の剣や、隙を突いたであろう鋭利な足の刃を繰り出していたがそれら全て一度も受けることなく圧倒していた。これならいけると思っていたが、その怪物は呼び出したであろう僕たちをあろうことか体内に取り入れたではないか。そしてさらに大きくなり、腕も2本から4本となり、足も倍に増え最早正真正銘の怪物となっていた。
その後エネミーを呼び出したため私たちは彼が言ったことはこのことだったのかと理解した。そして私たちは行動に移した。それは至極簡単。エネミーを討伐するためである。隣で寝ていた寧々を引っ張り起して私たち5人はエネミーのもとへ向かった……
当り前だが100体という数は多すぎ以前に対処可能かと疑っていた。何せ100体という数はプロでも対処困難と聞いたことがあるからだ。だけど彼は問題ないでしょ。と言っていた。そう言い切れる確証が一体どこにあるのか正直分からなかった。でも今動けるのは私たち5人しかいない…だったらやるしかないのだ……。
そんな柏木理沙たちは100体のエネミーに対して本当に5人で勝てるのだろうかと心配していたがそれは杞憂に終わるのはこの時はまだ知らないでいたのであった……




