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創られた世界に破壊を込めて  作者: マサト
合同交流会

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153/349

蘇る記憶、そして・・・

 昼休みが終わる数十分前‥‥人がいないとある教室にて

 「それでアイツの一番大切にしている物は分かったの?」

 「うん。アイツはいつも押し花で作られている本のしおりを形見はなさず持っているよ。そしてさっきこっそり見たところポケットに入れていた所を確認したよ」

 「そう‥‥それじゃあ、アイツはもう使えないから一番大切な物を壊したらあの事件をネットにばら撒いて死んでもらいましょうか。社会的に、ね」

 「さんせー。昼休みが終わったら次は運動場で実践式の模擬試合があるからそこで行おうよ」

 「異議なーし」「いいね」「文句なし」と3人も意義はなかった。5人の企てたこの計画を止める者は生徒誰1人としていない。何故ならここは別館の3階、よほどの用事がなければここに来る生徒はおろか教師たちも月に1、2回程度しかここには来ない。だからここでどんなに今から行うであろう残酷な計画について話し合ってもそれを聞く生徒は誰1人としていない。そう、生徒は誰1人としていない。では、ネズミや昆虫といった居ても気にも留めない生き物が聞いていたら? そしてそれが誰かの使役していた動物や昆虫だったら誰も聞いていないという事になるのだろうか‥‥‥


 3校1学年の生徒は全員運動場にいた。同じことを言うがこの運動場はとにかく広く例えこの場所に1000人いてもまだ余裕があるような場所であり各術科の学び舎の中で1番疲労と言っても過言ではない。そしてその運動場の真ん中には模擬試合を行うための試合場が用意されていた。大きさ的にはテニスコート4つ分ほどあり周りには観客席のような場所もあり多くの生徒たちはそこに座っていたり立ったままの状態で試合場を見ていた。そしてその場に1人の生徒が出てきた。安藤小夜である。

 「それでは皆さん、あと10日ほどで最終選抜メンバーが発表される日となっております。そして本日行うのはこれまでの練習の成果を披露、そして今日行ったこと見たこと全てを糧として残りの日にちを有意義に過ごして頂きたいと思い提案しました。皆さん、本当はお忙しいはずなのに集まって頂いたことに感謝しております。ともにこの貴重な時間を使い体育祭や今後の術の向上に生かしていただければ幸いです」

 パチパチパチ‥‥と観客席にいる生徒から拍手が送られたのだった。

 「それではこの模擬試合のルールを説明します」

 そうして試合のルールが説明された。

 1.制限時間は5分、1対1で行い、途中で降参を告げればその時点で試合終了

 2.使用する術は初級と中級のみ

 3.危険行為である過度な術の使用は即失格

 といった内容である。

 この試合は勝敗ではなくあくまで体育祭本番の練習という事なので5分の間で決着がつかなくても特に問題はない。そして対戦相手の決め方だがくじ引きらしい。この模擬試合は5日前からすでに行うことが決まっており、この試合に参加したい生徒がいれば各練習場所に用意されていた目安箱の中に自身の名前を紙に書いて入れるだけでいい。そして後は当日になるまで術の向上や模擬試合を何度も繰り返し待てばいいだけである。そして試合場に2つの目安箱が出てきて代表して安藤小夜が1つずつ目安箱から中の入っているくじを引くのだった。そして‥‥

 「それではまずは第1試合目は‥‥」


 「そこまで! 勝者長瀬竜也!」

 うおおおおぉぉぉぉぉ!! と観客席、特に第4術科の生徒たちから歓声が上がった。今のですでに7試合ほど行って始まって30分ほどが経過していた。これまでの試合で第3術科は3勝、第4術科は2勝、第7術科は2勝、と各校なかなかの成績だった。佐藤光一、平岡涼介、椎葉美恵、安藤小夜、長瀬竜也‥‥等といった候補リストの生徒たちは対戦相手の生徒に勝利を収めていた。そして第8試合目‥‥

 「それでは第8試合目、1人目は‥‥‥土谷陸翔さん」

 それを聞いて「陸翔だ!」「陸翔頑張れよ!」「【スピード・スター】の力を見せてくれ!」と歓声が上がっており観客席は熱気に包まれていた。そんな中‥‥観客席から遠く離れた場所に星乃零が壁に背を預けながら試合の様子‥‥は見ておらず手に持っているある資料を見ていた。そしてもう片方の手には使役用の式神符を手にしておりこの符は使役として校舎内の情報収集を行っていた動物と昆虫のネズミとハエである。そして先ほど得たとある5人グループの話を盗み聞きしていたネズミと1人でポツンと1人で食事をしている女生徒の監視を行っていたハエに戻ってくるよう命令しこうして式神符の状態へと戻ったのだった。そして現在得た情報と6日前にローズがまとめた報告書類を照らし合わせていたのだった。そんな零の元に

 「星乃君は試合は見ないの?」

 小笠原陽彩がそう声を掛けにきたのだった。

 「ん? あぁ、俺は別に興味ないから別にいいや、そういえば他の皆は?」

 「あぁ、皆は観客席で試合を見ているよ。それにしても星乃君は一体何をしているの?」

 「あぁ、まぁ、ちょっと、ね」

 チラッと目を合わせるもすぐに資料に目を通しに戻った。

 「……そういえばもう歩き回れるほどまで回復したんだな」

 「あぁ、そうそう、その事で星乃君の所まで来たんだよ。ありがとうね。他の4人もすっかり体力だけでなく魔力もほとんど回復しているよ」

 「そう‥‥ならいいけど」

 「ねぇ、聞いても良いかな? 星乃君ってどうしてあんな凄い物を作れるの? それだけじゃない、魔族の国の時だったり、黄菜子ちゃん、だっけ? 連れ攫われた時もあんな凄い力で他の生徒、そして亜人族の猫族と兎族を全員生き返らせた‥‥‥。星乃君、君は一体」

 「何者?」と問いただす前にこう言った。

 「悪いけど、今の貴方たちに俺のことを話すことは出来ない。だけど、まぁ強いて言うなれば俺は理不尽や横暴によって苦しんでいる人、その人の目の前に絶望が立ち塞がったり、そして大切な人や物のためにこの力を使う‥‥今言えるのはこれだけだ」

 「…‥‥‥そっか。じゃあもっと星乃君に認められるような強さを手に入れてその隠していることを聞き出そうかな」

 「‥‥辞めといたほうが身のためだよ」

 「それじゃあ、他の4人にもこのことを話して今よりもっと強くならないとね」

 「はぁ‥‥忠告はしたよ」

 溜め息交じりにそう言い終えると同時に「そこまで勝者、土谷陸翔」と立ち合いの教師がそう言い終えると観客席から歓声が起こり陸翔コールがここまで聞こえるのだった。そしてそのコールが鳴りやまないうちに次のくじが引かれた。

 「それでは次の第9試合目の1人目は井上咲綾さん、そしてもう1人は山影実憂さんです」

 しばらくしてステージには2人の女生徒が対面していた。1人は井上咲綾、そしてもう1人は山影実憂である。2人はステージに上がり、そして互いにお辞儀をしその後は「両者構え、試合開始!」と教師がそう合図を鳴らしたのだった。

 「あの人、確かこの前星乃君が連れて来た、確か山影実憂、さんだよね。あの人も目安箱に入れていたんだね」

 そう陽彩は言うが零はというと

 「いや、あの表情はどうして自身の名前が目安箱に入っていたのか理解が追い付いていない。という表情だね」

 「えっ、それって‥‥」

 「誰かが意図的に目安箱に入れたんだろうね」

 「まぁ、誰が入れたかはもう分かっているけどね」と付け加え陽彩にこう告げた

 「悪いけど陽彩、今から大至急他の4人をここに連れてきて、少し話したいことがある、それも結構重大な内容の‥‥ね」

 

 どうして私の名前があの目安箱に入っているのかが分からなかった。だって私はこの1週間目安箱には1度も近づいていないどころか今日まで私はずっと1人で過ごしてきた。それに私はこの学年の中では1番弱く、成績は常に最下位で赤点ギリギリの点数ばかりを取るのだから仮に私が出ても足を引っ張るのがオチ、だから書かないようにしていた‥‥‥だというのに

 「水よ集え・流れに従い・敵を切り裂け【アクア・カッター】」

 井上さんが繰り出した水魔術が私めがけて襲い掛かって来た。私は何とか紙一重で躱した。

 「ほら、あんたも術者なら攻撃してみてよ」

 未だに頭はこの状況に追い付いていない。だけど、このままやられっぱなしはきっと後悔する‥‥と思う。だから私は反撃を行おうとした。

 「風よ集え・切り裂く刃となり・敵を吹き飛ばせ【エア・

 その時頭の中にある動画の光景が浮かび上がった。その動画の結末はとても、とてもひどく、残酷なものだった、そしてその動画でそれを行ったのは‥‥‥

 術を放とうとした瞬間その動画の事を思い出したためかもう少しのところでその術が煙のようにフッと消えたのだった。

 「炎よ集え・形を変え・敵を穿て【ファイア・レイン】」

 私が隙を見せた瞬間井上さんは詠唱を唱え周囲に小さな炎の針のような鋭利な形に変えそしてその炎が私にめがけて襲い掛かって来た。私は何とか身を守るため腕を使い顔と体を守るように身を丸めた。そして数秒間の攻撃の後には腕の皮が剝がれていた。初級とはいえ防御結界もなしに防いだのだから当然痛かった。そして私はある物が落ちていることに気付いた。それは私がポケットに入れていたこの世で一番大切な押し花で作られているしおりだった。それを急いで拾おうと駆け寄ろうとしたが、何故か何もない場所で躓いた。躓いた場所を見るとそこには先ほどまでなかったはずの小さな窪みがあった。恐らくこれに足の先が引っ掛かり転んだのだろう。だが今はそんなことはどうでも良かった。急いで早くあのしおりを拾わないといけない。何故ならあのしおりは私が一生償うための贖罪として片時も離さず持っていたのだから‥‥

 そして私が後もう少しの所でそのしおりを拾うことが出来るというその瞬間‥‥

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()‥‥‥‥‥

 きっともう1発隠し持っていたのだろうか、でもどうしてもう1発隠し持っていたのか分からなかった。だけどその答えはこうもあっさり聞けるのだった‥‥井上さんが転んだ私の元にゆっくり駆け寄り耳元でこう囁いた。

 「もう貴方は用済み。だからあなたの一番大切な物を壊して、そしてあの動画をネットに流すから。貴方がどれだけ抵抗しても、どれだけ謝ってももう手遅れ。今まで私たちのパシリになってありがとう、そして、さようなら」

 その言葉は私にとって絶望の言葉だった。今の言葉が本当なら間違いなくこの試合が終わった後にあの動画をネットにばら撒くつもりだ。もしそうなれば私の居場所は完全になくなり顔も知らない人たちに死ぬまで一生叩かれるのだと。そしてその行き着く先は自殺の一択しかなくなる。もう、私はもう戦えない、戦う理由がもうない。観客席から私に対して何かひそひそと話しているのだろうがそれすらも聞こえなかった。今でも押し花で作ったしおりが燃え尽きようとしていた。急いで水魔術で消化すれば間に合うだろうか‥‥いや、もう間に合わないだろう。術の詠唱と火が消えるまでの時間、どちらが早いかは誰でも分かる。私は一体どこから間違えていたのだろうか、あの時別れたところから? あの時声を掛けたところから? あの時いじめから救ってくれたところから? もう、分からない、分かりたくない、だからもう早くこの場から逃げたかった。そして私はついに燃え尽きたしおりを見終えると‥‥‥‥‥‥

 「こ、降参し‥‥」

 と言い終えようとした。ふと誰かの気配がしたため思わず顔を上げた。そこにいたのは1人の女生徒だった。その生徒はこの第7術科女学院()()()の制服を着ていた。顔は下に下がっており一体誰なのかは分からない。だがその生徒は普通の人とは異常なほどの雰囲気を出していた。そしてゆっくり顔を上げ始めこう呟いた。

 

 「()()()()()()()…‥‥‥」


 その顔を見て私は、井上さんはあまりの衝撃に言葉が出なかった。

 何故なら今目の前にいるのは今から1年前にとある場所にて死亡した、そして唯一の友人にして私をいじめから助けてくれたかけがえのない存在である()()()()()()()が目の前にいたのだった‥‥‥

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 大体1分ぐらいで見終われるように書いております。  内容次第では少し長くなります。
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