合同交流会 Ⅷ
昼食の時間となり第4術科男子校等学校内では生徒たちが食堂や中庭、運動場などの広い場所でお昼を摂っていた。がとある5人グループの第7の女生徒は人通りがない所で爪の手入れや化粧のし直しを行っていた。ここは先の場所から少し離れた所にある校舎裏であった。今の時間帯ほとんどの生徒はこのような場所には来ずに食堂や中庭で学食やお弁当を仲良く食べている事だろう。それ故に大きな声を出しても誰にも気付かれることはないだろう。それではなぜこの5人はこのような場所にいるのかというと、1人の女生徒を待っているからである。
「お、お待たせ‥‥」
「遅い。1分遅刻、これで何回目なの?」
「す、すみません‥‥」
「庶民のアンタがここにいられるのは誰のおかげなの?」
「はい‥‥化粧メーカーの大手社長の娘である井上さんのおかげです」
「分かっているならいいの。それでお願いした注文の料理5人分は買えたの?」
「‥‥すみません。所持金がもうなくて‥‥」
「はぁ? ふざけないでよ。私はちゃんとあらかじめ頼んでおいたわよね。今日は高級寿司が食べたいって。それなのにお金がない? じゃあだったらどんな手を使ってでも高級寿司5人分を買ってきなさいよ」
「そ、それって‥‥犯罪じゃあ‥‥」
「は? 何言ってんのよ。そこら辺にでもいる金持ちの男にアンタの体を使ってお願いすればいいじゃないの。私の初めてをもらってくださいって」
「い、」
「い、何? もしかして嫌なの? もし断るってならあの事をネット上にばら撒くけど‥‥」
「お願いします! それだけは、それだけはどうか‥‥‥」
「きゃはははは! 何の躊躇いなく土下座なんてだっさー。ねぇ考えてみてよ。そこら辺にいる金持ちの男に初めてを捧げて、そして捧げた対価としてその男から沢山のお金をもらう、そしてそのお金で高級寿司を買える‥‥‥まさにwinwinの関係になるんだから何にも迷う必要ないじゃん」
「そうそう」「それな」「さっさと行って来いよ」と他の者たちも土下座をしている女生徒に対して言いたい放題であった。
「それで行くの? 行かないの? あと3秒で決めて」
「わ、私、は‥‥」
震える口で答えを言おうとした。が、近くから「ん? 誰かいるのか―」と声がしたため答えを聞く女生徒は「チッ」と舌打ちをしそして「興覚めだよ」と言いながら土下座をしている女生徒の横腹を思いっきり蹴り上げその場を去り他の4人もそれに付いて行き「今日は私が持ってきた高級寿司でも食べて午後から頑張ろうか」と言葉に「流石は井上さん。私達が食べられないような高級料理を持って来ているなんて感激ですよ」と井上という女生徒に対して媚を売っていた。そしてその場にはその女生徒————山影実憂があまりの痛みで横腹を抱えるように蹲っているのだった。
そしてこの一部始終を遠くから軍服の少女が腕を組みながら見ていたのだった‥‥‥
『‥‥‥クズの集まりじゃん。あいつら』
零はそう思うのだった。昼食時折角という事で山影実憂に一緒に食べないかと声を掛けたが、「私は大丈夫です。それと体操服を洗っていただきありがとうございました」と断るのだった。始めは何か用事でもあるのかなと思ったが人通りの少ない所で出会ったあの少女は何かに怯え、苦しんでいる様子だったので彼女には悪いが尾行という形で後をついていくことを決めた。そしてその尾行を丁度空いていたグレンに頼みそしてその場から数十メートルから離れた場所から様子を見てもらい、そして【視覚共有】を使用し先ほどの一部始終を見ていたのだが、結果はあの様である。やはりというべきか案の定というべきか、いじめだった‥‥
いじめにはレベルがある。0~4は1対1のやり取り、5~7は数名でのやり取り、8~10は集団でのやり取りである。特に8~10は重度クラスで服を脱がせたり、万引き、窃盗、恐喝、暴力、そして自殺の強要、人間としての尊厳を否定する行為を行う。星乃零の場合だとレベル5であり、山影実憂はレベル7にあたる‥‥
『主様』
『ティナか、どうした?』
『はい、先程からグレンが今にでも暴走しだしそうなのですが、いかがなさいますか? あの人間どもを殺しますか?』
『‥‥やめろ』
『‥‥分かりました』
若干不機嫌そうにそう答えた。ティナはともかく、恐らくグレンの事だろうから腕組みしている所から痣が出来るほど力を入れていてカンカンに怒っているだろうな。と思うのだった。正直に言えば零もティナやグレンと同じ気持ちだった。本当は今からでもあの女生徒を肉体と精神を分離させた後にミンチになるほど体の原型を留めないほどまで切り刻み、その後はミンチと化した肉体に移しそして捏ねてハンバーグにしてエネミーの餌にでもしてやりたい気持ちだった。まぁエネミーは食事なんて取らないけど‥‥‥だが今苦しんでいるのは零ではなく山影由美だ。それを間違えては解決しても意味がない。そして今も【視覚共有】で右目を通して流れている映像でもお腹を抱えて苦しんでいた。こんな時こそ誰かが手を差し伸べれば良いのだが、一体誰が適任なのか‥‥
『あ、あの! 私が行ってきてもいいですか!』
『‥‥‥どうして?』
『えっと、上手く言葉にはやっぱり出来ませんが、私はあの人を放っておけません。それにあの人、どこかで見たことがある気がします。もしかしたら何かを思い出せるきっかけになるかもしれません。そうしたら少しでもあの苦しみを和らげられる、かもしれない‥‥‥からです』
今まで零の傍にいた幽霊少女がそう提案してきたのだった。その表情は助けたい、力に少しでもなりたいという意志が込められていた。
『‥‥分かった。じゃあ、任せるよ』
『はい! 精一杯頑張ってきます!』
そう笑顔で返答したのだった。
『‥‥とは言ったものの、あの人はどこにいるんだろう‥‥』
昼食後、星乃さんがドーム内から出してもらいこうして第4術科男子校等学校を手当たり次第という形で探していた。この体はとても便利だ。何せ壁をすり抜けられ、他の人から認識されることがないのだから。それにしても人が多いなぁ。術の練習をしていたり、模擬試合をしていたり、体力づくりのためかランニングをしていたりと様々な行動を行っている生徒を堂々と見られる。どの生徒も体育祭で良い結果を残すため一生懸命頑張っているようで汗水たらしており私はそれが羨ましいと思った。きっと生きていた頃はあんな風に術を用いて同年代の人と切磋琢磨していたのだろうか‥‥
おっといけない。早くあの人を探さないと‥‥これまで運動場や体育館と様々な所に行ったけどあの人はどこにもいなかった。一体どこに行ったのかのかなぁ‥‥じゃあ次は学校から少し離れた運動場に行こうかな。
そして幽霊少女がその目的地へ向かう途中、生徒どころか誰1人もいないはずの教室からこんな会話内容を聞くのだった‥‥
「なんか、飽きてきたな」
「飽きたって?」
「山影を使い勝手のいい玩具として扱うのが。あいつは時間を守らない、言う事を聞かない、口答えをする、他にもたくさんあるから、さ。そろそろ潮時かもね」
「そだねー。まぁ、■■の方が山影より扱いやすかったよねー」
「あー、分かるぅ、だってあいつどうしようもない弱虫でさぁ、ちょっと脅しただけですぐに泣くし、ちょっと優しくしただけで喜ぶし、何ていうか‥‥馬鹿丸出し?」
「そのままじゃーん、うけるー」
「まぁ、もう死んでいる■■の事は置いといて、そうと決まれば来週辺りにでも山影の一番大切にしている物でも探して、そしてそれを私たちが完膚なきまで壊した瞬間あいつはどんな行動をとるんだろうね」
「もしかしたら、■■と同じ末路になるかもね。あははははは!」
「まぁ、あんな奴が死んでも私たちは痛くもかゆくもないけど、もしそうなった時には‥‥」
「どうするの?」
「それはぁ‥‥あいつの墓にでも泥でも糞でも撒いておこうかな!」
「あははははは!! うける~」
幽霊少女は5人の女生徒の近くでこのような品がなければ、人が話すような内容とかけ離れている会話を聞いていた。山影とはおそらく今探している人物だとわかった。だが1点だけ気になることがあった。それはいくら近づいても途中で出てくる名前がどうしても聞こえない、いや、その部分だけ女生徒が言う瞬間、何故かザザザ‥‥という雑音が重なり、まるでその部分だけは幽霊少女に聞かせないようにするためかのようだった。それは何故か、分からない。の一択だった‥‥




