合同交流会 Ⅴ
その扉の先には人工芝が生えたドーム内だった。観客席があったり、実況席があったりなどテレビやスポーツ大会で見るような普通のドームだった。そして今でも状況に追い付いていない5人の元に零がやって来て
「それじゃあ、特訓を始めようか」
それを開始の合図とし特訓が始まった。
一方、第3学校のとある場所にて‥‥
「それで、あいつの弱点とか聞き出せたの?」
「す、すみません‥‥そんな話はしていなくて‥‥」
「はぁ? だったらお前が言い出せばいいだろ、この能無し」
「すみません‥‥」
その少女はその者に謝る事しか出来なかった。この場には2人以外にも4人の人物がおり、その4人とも謝っている少女の方を見て「使えねぇ」「役に立ってないじゃん」「パシリの方がまだ使える」等と言いたい放題であった。
「ねぇ、何でアンタは私たちのグループにいるんだっけ?」
「そ、それは‥‥」
「分かってるでしょ、あんたは所詮アイツと同様、大した力しか持たないただの庶民。そんなアンタをこの私たちが上手く使っているんだからそれなりの結果を示さないと‥‥」
「わ、分かっています! だ、だから、あのことは‥‥」
「分かっているならいいの。でも、私たちはいつでもあんたの人生を終わらせることなんて造作もないんだからね」
「…‥‥はい」
その少女はそう返事するのだった。
「分かったならさっさと私たちの視界から消えな。目障りだからさ」
そう少女に言うと急いでこの場から去るのだった。
「さて‥‥次はどんな事をさせようかな」
その表情は玩具を使って楽しそうに遊んでいる子供の様であった。
そして2時間後、零が用意したドーム内では零以外の5人が倒れるように座り込み肩を上下に揺らしながら息を整えているのだった。今から2時間前零は1つの練習メニューを出した。
今から2時間以内に俺に攻撃術を当てたら俺の弱点を教えてあげる。
そう言ってきたのだった。5人とも零の強さに関してはすでに知っており、まさか弱点があるとは思っていなかった。なので興味本位で聞いてみたいと思い5人とも零に攻撃術、それも無詠唱の攻撃術を零に当てようとしていた。だが結果は零に攻撃は当たるどころか掠りもしないで繰り出される攻撃を全て躱されるのだった。一見1対5は不利に見えるが零にとっては5人という人数なんて実に容易であった。そして今の時間へと戻るのであった。
「どうした? もう息切れか?」
「はぁ、はぁ、どうして、星乃君、は、息、1つ、も、してない、の?」
「そりゃあ、俺ほとんど動いてないし‥‥」
「いや、星乃君、私から見たら、だいぶ、動いていたよ」
「あぁ~~、じゃあ、5人とも動きに無駄があるかもね」
「む、無駄?」
「だって5対1という有利な状況なのに5人とも動きがばらばらでタイミングが合っていない。だから連携が取れてないし、動作1つ1つに無駄がいくつかあったし‥‥」
この数時間でいくつものの無駄な動きを言うのだった。
そして10分後‥‥
「‥‥まぁ、口で言っても分かりにくいと思うから今度はこれと相手にしてもらおうかな」
そう言うとドームの真ん中に1つの大きな岩が現われた。それはやがて手や足を突き出して動き始めそして平均な人の背の3倍はあるであろう大きな岩の怪物、いわゆるゴーレムが現われた。
「出現するロックゴーレムを5人で協力して今から2時間で倒すこと。それがこの特訓の課題ね」
巨大なエネミーを倒す際には必ず複数の術者同士で連携をとらなければいけない。連携の種類にもよるが複数存在する。例えば1人が防御結界で受け止めその間に他の術者が強力な術で攻撃をし撃破をする。少数の場合は1人が受け止めている間に1人が支援術を攻撃役の術者に与えてからの通常より強力となった攻撃術で一撃必殺をお見舞いする。相手の体勢を崩して体勢が整えるまでの間に支援術を付与、そして一網打尽。等など様々な連携や戦術が存在する。勿論1人でエネミーと戦う際にもこれらの様な戦術を行わなければいけない場合もある。
それらはこのロックゴーレムでも同じであり‥‥
「【ウォーター・バレット】」
陽彩がゴーレムに向かって複数の水の弾を撃ち込み、ゴーレムの体は全身びしょ濡れの状態となり
「【アイス・レイン】」」
すかさずいくつものの氷の礫を周りに出現させ、そのまま繰り出した。そして水で濡れていた箇所が徐々に凍り始め、ゴーレムの動きもゆっくりとなりやがて動かなくなったところに
「【フレイム・スラッシュ】」
「【ヒート・ナックル】」
里見と理沙の同時炎攻撃により腕と足が切断、粉砕していきそして陽彩による魔術の追撃によりゴーレムは力尽きたのか大きな音を立てて後ろに倒れたのだった。
「や、やっと、倒したー」
「疲れたー」
倒れ込むように再び座るのだった。
先ほどのゴーレムを倒すまでに30分以上もかかった。始めは硬い岩で出来ていたため5人の攻撃術がほとんど通らなく苦戦したが、陽彩はこの特訓の意味を考えていた。この特訓はただ単に術を使い倒せばいいだけの内容ではないかもしれない…と。そこでゴーレムの動きを観察することに集中した。そこで気付いたことは相手の攻撃パターンが腕を振りかぶりからの勢い良く振り降ろすだけという事に気付いた。そこで陽彩は香蓮にゴーレムが腕を振り下ろす瞬間に防御結界を張ることを指示し、そして受け止めて動きが止まった瞬間に寧音が召喚術で相手を体勢を崩す召喚獣を呼ぶように指示、そしてその間に3人で攻撃を行いなんとか倒すことが出来たのだった。
零が言った特訓内容は2時間以内にロックゴーレムを倒すことと言っていた。だがそのゴーレムは30分以上かけたが倒し終えている。これで終わりなのかと思ったところに、何か違和感を感じドームの真ん中を見てみると先ほどまでなかったはずの大きな物体があった。それは先ほどのゴーレムと同じような色と形をしており‥‥そして手と足が出てきて先ほどと全く同じのロックゴーレムが再び現れたのだった‥‥この光景に5人は唖然とし、
「誰が1体倒せば終了って言ったかー。まだまだ終了時間まで時間はまだまだあるぞー」
出てきた1体のロックゴーレムを倒して。と零は一言も言っていない。つまりこの2時間はどれだけロックゴーレムを倒しても次々出てくる仕掛けとなっていた。5人のうち3人は1体倒すのに魔力を4割はすでに使ってしまっており‥‥つまり、あと1、2体の撃破が限界であった。
そしてその後は1時間もしないまま音を上げ、結局何とか計3体を倒した時点で今日の特訓は終了するのであった‥‥‥




