合同交流会 Ⅲ
体育館にはステージのような部隊はない。その代わりに体育館内の殆どは模擬試合として使用することが出来る。全体の広さは縦横共に120平方メートル、で模擬試合を行う範囲は100平方メートルである。そしてその真ん中には先ほど零を指名した1人の女生徒が待っていた。そして零と向かい合っての第1声が
「ふん、近くで見るとやっぱり陰キャ、しかもドが付くほどのド陰キャね」
クスクス‥‥と女性と同じ学院の生徒が笑い、他校の生徒も同じように笑っていた。
「それに、貴方の事はかねがね聞いているわよ。何でもこの学生や教師から『無能』って言われているみたいね。そして今日この日までこの学校で過ごしてこの私の前に立っている‥‥。ではここでクイズです。これから君の身に起こることは何でしょう。A、手も足も出ずに敗北。B、降参して私の犬になるか。さぁ、どれでしょう」
Aだろ、Aに違いない、いやBでしょ、Bだったら傑作だよね‥‥‥と勝手にその女生徒が出した問題にあれやこれやと好き勝手に言うのだった。
「まぁ、今ここで貴方が上半身裸になって何か面白い事でもしたら、その面白さに免じて貴方の勝ちってこどでいいわよ。まぁその場合この第3術科学校の恥攫いになるかもしれないけど‥‥プププ…」
我慢できなかったのか最後の方でお腹を抱えて大笑いをするのだった。
そんな女生徒の横顔にヒュン、と何かが横切る音がした。そしてそれは後ろの壁にドォォォン…と大きな物音を立てた。その壁には術耐性の防護後結界を張っているため壁には傷1つ付かなかった。だがその物音はその結界の耐久値の7割を削るのに十分な威力だった。
「ごちゃごちゃうるさいな。御託は良いからさっさとかかって来いよ」
初歩の初歩である【魔力弾】を手に持っている杖から放った零が言うのだった。
陽キャは嫌いだ。いつもうるさくて、自分を中心に世界は回っていると思っているし、友達の多さっぷりをいちいち自慢してくるし、その人の人柄を勝手に決める‥‥‥そして何より陽キャは陰キャ、いわゆる人間的に劣っている負け組の人間に悪口や何かとちょっかいかけてくるし、スクールカーストが常に上位に入っていることから下位の人間ならどんなことをしても良いというくだらない、しょうもない発想転換する奴が多い。まぁこれらは全て俺が今まで関わってきた陽キャであろう生徒や人物を例に出しているため全ての陽キャが全て同じというわけではない。例えばその人物Aが1人で読書をしていたり動物と触れ合ったりしているとしよう。それを見たBがこう言った。あいつっていつも1人でいるから友達いないんじゃねぇ? そしてそのAは次の日からは陰キャと呼ばれるようになり誰もその人物に近づこうとしなくなった。ではもし陰キャといったBよりも多くの友人がいたら? この学校には友達がいなくても他の学校にいたら? 他にも友達がいなくても毎日が楽しい。と言っていたら? この事から言えることはただ1つ‥‥
周りの評価で全て決まるだなんて実にくだらない。である。
この勝負の勝敗は結論から言えば零の圧勝、無傷の完全勝利であった。
模擬試合の開始の合図とともに初歩の初歩である【魔力弾】を目の前の少女…の後ろにある壁に向かって放った。そして持っていた杖で放たれたそれは通常よりも数倍以上はあるためドォォォン…という何かが爆発したかのような音が鳴った。しばらくその少女は何が起きたのか理解できなかったがすぐにはっと意識を戻しすぐさま魔術攻撃の詠唱を唱えるのだった。その詠唱はたらたらと遅くそして術式が完成、そして放たれた【ファイア・ボール】を発動した。その速度はまぁ遅かった。どれくらい遅いかというと幼い子供が走る速度と同じくらい、大きさは術者が放つ平均の【ファイア・ボール】よりも小さい程度だった。その攻撃は手で叩き落とせる程度だったのでバチンと叩き落してそのまま消滅した。その行動を見ていたその女生徒は「嘘でしょ!」といちいち騒ぐのだった。いやこっちが先ほどまで大見得を切っていたあの自信と術者としての実力が全く違う事に「嘘だろ…」と声に出したかった。まぁ、出さないけど。そして今度は先ほどよりも9割ほど手加減した【魔力弾】を今度は後ろの壁ではなく女生徒に向けて放った。個人的には今放った【魔力弾】は並みの術者なら防御結界で難なく防げれる…とそう思っている、いや、思っていた。では何故このような過去形かというと、詠唱を唱えて防御結界を展開までは良かった。だが次の瞬間、パリィィィィン! と何かが割れた音、つまり展開したはずの防御結界が割れる音がし、そして勢いが途中で止まることなくそのまま女生徒に直撃からの意識喪失であっけなく零の勝利で終えたのだった。
とんだ拍子抜け。と思うのだった‥‥
その後は大きなトラブルもなく合同交流会1日目が終了するのだった‥‥
翌日、零は昨日と同じ指定された教室で教師の任意講義を受けていた。その内容は零にとっては退屈極まりないものだった。早く終わらないかな。と思うほどだった。この講義が終われば次はお昼休み、つまり昼食の時間となる。昨日はちょっと食べる暇がなかったが今日こそはあそこで食べようと思い意気込んでいた。
そしてようやく講義の時間が終わり急いであそこで行って食べよう。と思い早歩きで教室を出ようとしたところに
「あ、あのっ!」
と後ろから声がしたので振り返るとそこには1人の女生徒がいた。髪は下ろした三つ編みに、眼鏡をかけており着ている体操服はピンクのラインがあることから第7女学院の生徒の1人とすぐに分かった。そして少女はこう言った。
「あのっ、よ、良ければ、私とお昼ご飯を、た、食べませんか!」




