海の家と依頼調査 ②
少し早い昼食を済ませ時刻は丁度12時となっていた。有紗と零は店を出でこの後どうするのかというと、昼食時零は有紗にこんなことを言っていた。
このあと少し歩いたところで知人と会うのでよかったら来ますか?
何でもその知人は零と旧知の仲らしい。ジュダルさんの様な外見と似合わないような落ち着いた物言いにあの3人の子供なんか零の事を主様とか言うもんだからいよいよ零って何者なんだろうと思う四季有紗であった。そうして数分歩いて付いた目的地はアイスクリーム屋であった。バニラやチョコ、イチゴ、抹茶味など様々な種類のある屋台であった。そんな近くに1人の少女が座っていた。その少女は麦わら帽子を被っているが水色の長い髪に真っ白なワンピースに可愛らしいショルダーバッグを掛けていた。一見その少女はどこにでも良そうな女の子、だというのに並ならない雰囲気を出しているのは気のせいだろうか‥‥そう思っている有紗に対して零はなんともないようにアイスクリームを注文した。「所長は抹茶味でしたっけ?」と聞いてくるため思わず「う、うん」と答えた。そうして零は注文したアイスが出来るまでブルーハワイ味という珍しい味のアイスを食べている水色の髪をした少女の所へ向かい‥‥
「それで、話って何? というかそっちから連絡を入れるなんて珍しいな」
「そうかしら? まぁそれはいいわ。実は私、海の家特集としてレポーターの仕事があって数日前から現場を見ていたんだけど海に何か気配を感じたからジュダルに相談したんだけど、そしたら今日貴方が来てその事について調べているって聞いたんだけど‥‥もしかして」
「あいつ、どこでそんなことを‥‥まぁいいや。丁度それについて調べていた所だったし」
「へぇ、何か分かったの?」
「確証はないけど、大体は分かったかな」
そんな会話に
「…ねぇ零、その人って‥‥」
有紗が割ってきたのだった。
「‥‥あぁ、そういえばまだ言ってなかったな。俺の知人のマリーだよ」
「こんにちは。マリーって言います。よろしくね」
そうして有紗とマリーは握手を交わすのであった。
「へぇ‥‥今はそこで生活してるんだ」
「そうそう、そして私はそこで探偵事務所を開いているんだよ」
「探偵かぁ‥‥でも大変なんでしょ」
「うんうん、そんなことはないよ。探偵をやることは私の夢だったんだから」
数分後有紗とマリーはすっかり打ち解けており今では笑いながら様々な話をしていた。喫茶四季の事、探偵の事、そして零の事を話しているのであった。
「へぇ、ディ…零はそこでちゃんと生活しているんだね」
「‥‥まるで俺が生活能力低いって言い回しようだな」
「まさかぁ、零のことは大抵わかっているし、知人として心配しているだけだよ」
「ホントかぁ‥‥」
「ほんとほんと」
‥‥この言いようは信じていないようであった。
そうして俺たちは今、春奈さんたちがいるであろう海の家まで戻っていた。その途中にこうして話をしており‥‥当然だが未だにこの海のどこかに潜んでいるであろう謎の生物、そして行方不明となっている漁師についても話しており、
「‥‥結論から言うけどその漁師たちなら生きているわよ。そして今も洞窟に身を潜めているわ。船も近くにあるけどどうやら故障しているみたいで帰れないでいるみたい」
海の家にある椅子に座りマリーがそう言うのであった。
「それじゃあ、急いで救出に…」
「いえ駄目よ。今あそこはその気配のする何かがいてその洞窟を取り囲むようにゆっくり回っているの。下手したら救出に向かった瞬間その漁師の二の舞になるわ」
有紗が提案したがすぐさま却下された。「じゃあ、どうすれば‥‥」と考えているとマリーが零の方を見つめており‥‥
「まぁ、というわけで零、分かるわよね」
「‥‥はぁ~~、その生物の撃破だろ、まぁ言われなくてもやるけどさぁ‥‥」
まるで、ちょっとおつかい行ってきて。というやり取りであった。
「え、え、ど、どういう事?」
「? どうもこうも零にその生物を倒してもらうってことだけど‥‥」
「つまりその生物ってそんなに危ないものなの?」
「危ない危なくないで言えば並の人間、並の術士やの場合だったら危ない、危なすぎるってことになるかな。まぁでも零なら大丈夫でしょ。それに貴方は前に見ていなかった? 零の戦っている姿を」
その事を聞いて思い出していた。それは2か月前に起きた黄菜子誘拐事件である。そこで僅かだけど狂化した黄菜子の姉である緑と戦っている所を。その時零はというと‥‥
「まぁ確かに見ていたけど、あの時って確か‥‥」
「あぁそうだったわね。あの時零はあの姿だったものね」
まるで初めから零の実力を知っているような口ぶりだった。
「だったら丁度いいわ。零の実力をその目で見た方が確実ね。じゃあ、今晩にでも終わらせましょうか。その方が皆にとっても私にとっても都合がいいし…いいでしょ零」
「まぁ、初めからそうするつもりだったし…それじゃあマリー、守りはよろしくね」
「えぇ良いわよ。その代わり私からのお願い事を聞いてね」
「‥‥出来る範囲でね」
「ふふふ‥‥どうしようかな~~」
その笑みは何かしらの含みが入っている‥‥そんな気がしたのであった。
決行までまだ時間がある。それまでどうしたのかというと‥‥
店内の掃除、水回りの掃除、コップや食器を洗い綺麗にしたり、看板の制作を行ったり‥‥と海の店開店準備に追われていた。零と有紗は勿論だが、何故かマリーも一緒に手伝っていた。本人は「何か楽しそうだから」という理由で手伝っておりそして気付けば開店準備が終わった時にはすでに日が沈んでおり時刻は19時となっていた。準備後は高木さんからお礼として近くのホテルで営業しているバイキングへ招待してもらった。肉や野菜、揚げ物類は勿論の事近くに意味があるとの事で海鮮料理も用意されていた。そしてどれも美味しかったが、他の客の話を小耳にしたがどうやら最近謎の生物の影響で魚料理が少し少なくなっているらしい。今日でも十種類と結構多いと思っていたが、ここの客にとってはこの数は少ないくらいらしい。本来はいくつあるのだろうと気になるのであった‥‥
時刻は午前0時を過ぎていた。春奈と夏希はというと今日は高木さんが宿泊用の宿を用意しておりそこで休んでおり、当然寝息を立てて休んでいたのであった。そしてマリーが言うにはこの時間帯頃に謎の不確定生物が動き出す頃合いとの事らしい。
「‥‥ここら辺でいいか」
零はそう呟いた。前方はだだっ広い海、左右には不規則な岩、後方にもだだっ広い海が広がっていた。現在零のいる場所は目的地の、その謎の生物がいるであろう沖‥‥が見える自然に出来た小さな陸地の様な所だった。
「…さてと、早速始めるかな」
そう言い零は虹色の剣を構えるのだった。




