不運な巡り合い
この状況を見て、その人物たちを見てこう思った‥‥ほんっと、俺は運気を持っていないよな。と。
どれくらいかというとニュース番組の最後に占いコーナーがある。そして俺が見ている時だけ何故か100%最下位となる。そして必ずその日のうちに何かしらの悪運に見舞われる。例えば鳥の糞が目の前に落ちてきたり、ビルから花瓶が落ちてきたり、挙句の果てには何かしらの殺人事件や暴力沙汰の現場にもよく巻き込まれてしまう。まぁ、どれもすでに慣れているのでどうという事はないが‥‥逆に占いコーナーを見ないでその場を離れると何故か100%1位となる。まぁ1位になったとしても特にその1日が特別になることは決してない。結局は気持ちの問題なので1位だろうと最下位だろうといつもと変わらない日常をこれまで送ってきた。
強いて言うなれば見ている中で1位の瞬間を見てみたいのが本音である。ちなみに誕生月は2月で日にちは4年に1回あるあの国際的競技大会がある年にしかないと言われている29日である。
話は相も変わらずずれたが俺たち3人の目の前には複数の名も知らない男性と手足と口を丈夫な布で拘束されていた未成年らしき少女たち数名であった。
「ど、どうしてこんな所に人が!? 確か入口の方に立ち入り禁止の看板を置いていたはず‥‥」
あぁ、あれこの人がしたんだ。確かにここに来る途中そんな看板を見たが、
? 何ですかこの看板、こんな看板じゃ私は止められませんよ。さあ兄さん早く行きましょう。
そう言いながら愛花は看板をものともせずぐいぐい引っ張りながら進んでいったっけ‥‥
「そ、それに俺の幻陽術でここまで誰も辿り着かないようにあらかじめ用意していたはず‥‥」
あぁ、それもこの人がしたんだ‥‥確か‥‥
さぁ星乃さん、早く行きましょう。大丈夫ですよ。どういうことか分かりませんがここ周辺に何かのまやかしが施されておりますが私にかかればこれくらいどうという事はありませんよ。
まるでこの先の道のりが手に取るように分かるように麗奈さんがこっちです、次はあちらです、次はこっち‥‥と誘導してたっけ…そしてそのまやかしに迷うなくここまで辿り着いたわけだが‥‥
「おい、待て、この男とそこの女は知っているぞ‥‥昨日はよくも世話になったな。貴様たちのせいで俺は警察署に連行されたじゃねぇか‥‥・」
ポキポキ手を鳴らしながらその男性はこちらへやって来たのであった。
「‥‥あぁ~~‥‥ん? でも確か警察に引き渡したはず‥‥」
「はっ、残念だったな! 俺の親はなぁ政治家なんだよ! だから俺がどんなことをしても、どんなに捕まろうが高額な金を察に渡せばすぐに釈放される! この女どもだってな、俺の出す高額の金に引き寄せられてこんな所にいるんだよ! いいか、この世はなぁ! ありとあらゆる事全部金で決まるんだよ!
‥‥あぁ良い事思いついたぞ。俺たちは7人、2人の女連れにお前1人、このままじゃあ、きっと死ぬだろうなぁ…何せこの光景を見てしまったからなぁ…生きて帰れねぇだろうなぁ…だけど、俺も鬼じゃあねぇ。お前にくっついている女2人を俺らに寄こしな。そうすれば男のお前だけは生きて帰してやる。それとも…ここで一緒に俺らと楽しい事でもするか? 10秒待ってやるよ。さぁ、選びな」
悪意を含めた笑みを浮かべるのであった。
自分の親が政治家という立場を利用することによりどんなこと、つまり万引きをしたり、気に入らない人物を殺した等の犯罪行為をいくらしようと政治力と金の力で全てなかったことにすることが出来る。被害を受けた店や人の気持ちすら汲み入れることなく‥‥。この者についている他の者は所詮親が政治家という事でおこぼれ欲しさに従っているだけに過ぎない。これまで従ってきて機嫌がいいと多額の金をもらったり名も知らない女の体を弄べる行為を何度もしてきた。だから彼らはこの者がする行いはすべて正しい。そう思っていた。
「‥‥7、6、5‥‥」
選択のカウントダウンが迫る。
「4、さ~ん、にぃ~~、い~~~ち‥‥」
「…‥はぁ~~~~くっっっっっだらねぇぇぇぇぇ」
「ぜぇ~~~~‥‥‥あぁ? 今なんつった」
まさかの一言に男のカウントダウンは止まった。
「聞こえなかったのか、下らないって言ったんだよ。何? それで勝ったつもりか? はっ、そんなしょうもない選択肢にこの俺が怖気づくとでも思ったか」
そしてさらに続けて
「親の、それも政治家という名を借りないとお前たちは犬のようにキャンキャン吠えることが出来ないのか。あぁ違ったな、お前らはその犬よりも下だな、何せ犬自体は何も悪くないからな。そうだな‥‥うん、やっぱりこれしか浮かばないかな、救いようのない哀れなすねかじり人間ども」
「…こ、こ、殺す!! お前だけは今すぐ殺してやる!! そしてそこの女どもを奪い身も心も俺が徹底的に痛めつけて死ぬまで一生俺の性奴隷にしてやる!! お前ら! その男を今すぐ殺せ!!」
その一言で所持していたナイフを出したり、術を放つ構えをするのだった。状況は最悪、相手は7人、対して愛花は一応術者ではあるが入院してから術の訓練をしておらず、麗奈は恐らく無術者だろう‥‥つまり零1人でこの状況をどうにかしないといけないわけである‥‥だが等に零は全く動じていなかった。並みの人間ならこの絶体絶命的な状況を切り抜けることなどほぼ不可能だろう。だが零の場合はこのような不可能的状況なんて手も足を動かさずに対処できるのだから‥‥
その結果は7人の男性と零達3人が出会って数秒で決まっていた。零はその男性たちを見た瞬間7人の足元にある術式を構築・設置を行った。そして後はわざと煽らしてこちらに敵意を見せてもらう。設置した術式はある条件付きで発動するようになっている。対象が発動本人に敵意もしくは悪意といった負の感情を僅かでも出しそれらの感情を増幅するような道具を取り出すまたは力を溜めるという行為が発動条件である。そんな複雑な条件付き術式を一瞬で構築・設置・発動を行う等どんな術者でもほぼ不可能である。せいぜい1つか2つが限界である。だがそんな不可能を成せるのが星乃零という人物である‥‥
先ほど述べた通り彼は手も足を動かさずに7人の男性を無力化に成功していた。彼らは零が発動させた【死の息吹:氷牢】により体中を氷漬けにされていた。その氷は生半可な術で溶かせるほど甘くはなく零が手加減しなければこの者たちは間違いなくこの世からいなくなっていたことだろう。現在男たちは声を出せず、手足を動かせず、意識だけが残り、激しい痛みで苦しんでいる事だろう‥‥
その後零はおそらく勤務中であろう井手修斗に連絡を取った。その内容は
ついさっき7人の犯罪者を捕まえたからそちらに送りますね。あ、それと近くに未成年と思われる少女たちもそっちに送るから女性の警察官に引き渡してくださいね。‥‥あぁ、家出少女ですよ。じゃあよろしくです。えっ、今何しているのかって? 妹と昨日知り合った方とお祭りにいますけど‥‥はい、はい‥‥嫌です行きません、そんなの妹とイチャイチャしたいからですよ
愛花と麗奈は零が通話している携帯越しから、えぇーー! とか、はぁーー!? と叫ぶ声が聞こえた気がしたのであった。
最後の一言の「妹とイチャイチャしたいからですよ」という大真面目で言ったその台詞に愛花は「に、兄さん!?」と顔を真っ赤にしており‥‥
最後の最後で被害者は愛花なのであった。




