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創られた世界に破壊を込めて  作者: マサト
無能少年の春休み

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黄菜子の正体

 その人物は、中年男性は30代後半から40代ぐらいの小太りで、背が低く部下の男性の腰辺りまでしかない。両手には多くの高価そうな指輪を付け赤い派手なスーツを着ていた。2人の部下は、黒いスーツに、表情が見えないように黒い眼鏡に黒いマスクを着用していた。

 この3人の人物を見て四季有紗は言葉を失った。何故なら3日前有紗の元を訪れ、子ども捜索の依頼を出したのは紛れもなく目の前にいる人物だったからである。

 「それで、依頼した子どもは見つかりましたか? …まぁ、聞かずとも分かりますけどね」

 「どうしてあなたがここに…。いやそれよりも今すぐここから離れてください! じゃないと貴方まで捕まってしまいますよ!」

 「ふむ。自分の事より、相手を優先しますか。なかなか肝が据わっていますなぁ」

 と、自身の顎を触りながら呑気に有紗の行動に感心していた。

 「ですが、この状況でまだ何も見えていませんね。それでは1流の探偵にはなれませんよ。ではここで問題です。わたしの周りは今武装している者達の所にいます。普通ならば私もこの人たちに拳銃を突き付けられ、ロープで拘束されてしまうでしょう。ですが、今でもこうしてあなたと会話を続けることが出来ます。普通ならば、私が貴方と会話している最中にも拘らず武装している者が素早く拳銃を突き付けロープで拘束されるでしょう。さて、ここまで言えばどうしてかはもう分かるでしょう」

両手を広げ、有紗に答えを求めるのであった。そして有紗は息を呑んだ。

 『う、嘘でしょう……そんなことって』

 あり得ない、そんなことをする理由が分からない等の考えで頭がいっぱいだった。その問いの答えに恐る恐る唇を震えさせながら、こう答えた。

 「()()()()()()()()()、なの、ですか」

 「えぇ、理解するまで遅いですがその通りです」

 堂々とそう述べたのであった。その3人の他に武装をした人物も数名いるのだった。

「どうして、どうしてここまでの大掛かりなことをするの!」

「どうしてかって? それはこの建物、そしてヘラヘラ笑っている子供が鬱陶しいからですよ。だからこの世からすべての子供を消し去り、大人だけの世界を作ると、ね。それだけですよ」

 男は目的と、野望を唱えるのであった。

 「そ、そんなのって…」

 横暴、自己中、そして理不尽と思える内容であった。子供たちは何も悪くない。その時もただデパート内では子供たちの笑顔で溢れていただけなのに、それだけの理由で無関係の子供やその家族をこんな酷い目に合わせるなんて。だから、

 「そんなのは間違っています! 今すぐここにいるすべての武装集団にここから立ち去るようにお願いして下さい!」

 と、有紗はその依頼主に懇願したのであった。

 「えぇ、勿論。私の目的が達成したらこのデパートから出て行きますよ」

と、言うとスーツの胸ポケットから1つの石らしき物を出した。それは、ただの石ではなく、黄色の宝石のような石であった。有紗は以前ある本で見た記憶があった。それは、

 「その石は、もしかして魔石?」

 「ほぉ、貴方のような3流探偵でも魔石については知っているのですね。ですが、これはただの魔石ではありません。この魔石は実は2つありまして、そのうちの1つは今私が持っている物で、この魔石に私の魔力を込めると、この魔石を所持している物に反応するのですよ。それと…」

最後にもう1つ付け加えて、

「2つ目の魔石にはとある術が施されており、私の魔力とその魔石との距離が近ければ近いほど強く反応を起こし、その強さは肉体を苦しめるのですよ。まぁ、死ぬ程ではないですがね」


それは突如起こったのであった。

他のお客がいつ解放されるのか今か今かと待っていると、

 「~~~~~~~!!!??!!!」

 千尋殿の傍にいた黄菜子殿が突然体をジタバタさせ苦しみだしたのだった。それには拘束されていたお客たちが何事かと黄菜子殿の方を見るのであった。その叫び声を聞きつけて武装集団の数人たちもこちらへ向かってきた。

 「ま、待ってください! これはですね、その、先ほどまで寝てしまっており、怖い夢でも見たのでしょうなぁ。それで今のような叫び声を出しただけでありますから、だから………そのぉ~」

拙者はこちらに向かってくる武装集団の数名に咄嗟に誤魔化そうとしたが話に聞く耳を持っていなかった。そして黄菜子殿の元にたどり着いてしまいこのままでは殺されてしまう…と思っていたが、何やら様子がおかしいことに気付いた。武装者たちは「おそらくこのガキだな」「なんかあっけなかっなぁ……。まぁ、良いか」と話していた。そして、今でも苦しんでいる黄菜子殿を強引に掴みそのまま上の階へと向かおうとしていたのであった。一体何が起こっているのか分からないが、このままでは黄菜子殿の身に危険が降りかかるのではと思った。が、もしここで連れて行こうとしている複数の武装者を止めたら、拙者が死ぬような目に遭うかもしれない。そう考えると、声が出なかった。死にたくなければこのまま黙って見過ごせばいいのではないかとも思った。が、それは間違いだと気付いた。

 「待ってください!」

 声のした方を振り返ると、その人は自分自身のことを考えずにその武装者に恐れもせずに声を掛けたのであった。その声に武装者はゆっくりと振り返り、千尋殿を見たのであった。しかし、彼らは彼女を見るなり、持っていた拳銃を向けたのであった。しかし、殺されるかもしれない状況でも千尋殿は怯むことなく、

 「もしかしてこの子の親の所に行くのですか! だったらその子は短い期間でしたが、今は私がその子を預かっています。せめてお別れするときぐらいは私にも見届けさせてください!」

 と顔を下げて、懇願したのであった。そんな自身を顧みない行動に思わず、

 「せ、拙者からもお願いします。拙者もその子に関わっていた身であります」

 と、気付いたら拙者もいつの間にか武装者に同じく懇願していたのであった。すると、武装者が持っていた通信機で何かのやり取りしていた。しばらくしたら、

 「……上から特別に許可が出た。良いだろう。お前たちもこっちへと来い。ただし少しでも抵抗したら殺すからな」

 こうして拙者たちは武装者に囲まれて、最上階の5階へと向かったのであった。そこには他のお客はおらず、何故か拘束を解かれていた状態の有紗殿と先ほど連絡していたらしき人物とその数名の仲間たちがいたのであった。


 その依頼主が魔石に自身の魔力を込めたあと、持っていた無線から連絡が届いた。「今から連れてくる」とのことだ。そこで有紗の他にいたお客を残し、今までいたところから少し離れたところへ移動を行った。

 その場所は先ほどいた場所が本館とするならここは別館4階で近いうちにここにも新しい店舗が開かれる予定らしい。辺りを見渡すと複数の窓ガラスに、まだ開店されていない店舗があり、その中にいくつもの段ボール箱が置いてあるだけだった。当然だが、防犯カメラやスピーカーは1つもない。

 そんな殺風景な場所に着くと部下の2人があろうことか有紗を拘束していたロープを取ったのだった。そしてしばらく経つと、下から複数の足音が聞こえてきた。そして、その足音の人物たちが有紗のいる所へと来たのであった。

 「千尋さんに、立花さん、それに黄菜子ちゃん! どうしてここに!」

 3人の方に顔を向けると周りには武装者たちがおり、容易に近づくことが出来なかったが、黄菜子の様子がいつもよりおかしいことに気付いた。今は千尋が抱きかかえており、意識はあるようだがぐったりしていた。それに体中に何かしらの文字が肌を埋め尽くすように書かれていた。

「ふむ。その2人がそれを保護したという方たちか」

 後ろにいた2人の部下に指示を出すと封筒のような物を2つ受け取りそのまま豪志と千尋の元へと向かった。

 「これは保護してくれたほんの少しのお礼金です。中身は100万入っています。これで好きな物でも何でも買いなさい。さぁ、それをこちらに渡しなさい」

その大金が入った袋を2人に笑顔で差し出したのだった。本来ならばそれで終わるはずだった。しかし、

 「受け取る前に聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」

 「ふむ。何かね?」

 千尋がそう質問すると、ある言葉について問いただした。

「先ほど、貴方はこの子を「それ」と言いましたよね? 普通なら「それ」ではなく大抵はこの子の名前を言いますよね。それに保護しただけなのに、金銭のやり取りなんて行いませんよ」

 と、物申すのだった。「それに…」ともう一言付け加えるのだった。

 「数日も離れ離れになっていたのですから、本来は喜ぶはずではないのでしょうか? 貴方はこの子の本当の親何ですか? それに、何か私たちに隠していませんか?」

 と、問いだしたのだった。そして、その依頼主はしばらく黙秘し、やがて、

 「………驚きましたね。こちらの3流探偵に依頼を出したのですが、まさか貴方のようなただの市民ごときがここまで勘づくとは、やはり、この場に来させるのは間違いでしたようですね、リーダーさん」

 「………それについては申し訳ないと思っている」

 とリーダーと呼ばれた赤髪の女性は謝罪を述べるのであった。

 「それはつまり、貴方たちはこの子の実の親ではなく、何かに利用するという事ですか?」

 続けて問いただすのであった。

 「利用? 嫌々とんでもない。私はそれをこの人間社会で暮らしていけるようにしているだけですよ。それなのに、それはあろうことか私から逃げ出しただけですよ。しかも術を使って私の部下に怪我を負わせたのですよ。見つけ次第後程それなりの罰を与えなければいけませんが」

「責任? この子はまだ幼い子供ですよ! 怪我をさせただけで罰を与えるのは間違っています!」

「貴方は見たところ、術者ではありませんね。つまり貴方は術の恐ろしさが分かっていない。例え小さな術でもちょっとしたことで今後につながる怪我を負わせられるのですよ。もし、そうなった場合、貴方は責任が取れるのですか?」

「っ……それ、は……」

 言い返すことが出来なかった。成宮千尋と立花豪志は術が使えない無術者である。彼女たちにとって術は時々テレビや、エネミーと戦う術者を見る時ぐらいしか実物を見たことがない。よってこれ以上強く言い返すことが出来なかった。

 「でも、この子はまだ、幼くて……」

 「ふむ。それしか言えませんか。では良いことを教えましょう。『それ』は人間ではありません。人間に化けた怪物ですよ」

 「な、何言って…この子は誰が見ても普通の女の子……」

 ふと思った。この人物は黄菜子のことを一度も『その子供』や『人間の子供』と1度も言っていなかった。それを今になって気付いたのだった。

 「では、それが人間ではないことを証明しましょう。おい、やれ」

 と部下に命令すると、2人がかりで黄菜子の元へと向かいだした。そのまま強引に千尋から奪ったのだった。

 「黄菜子ちゃんに何するの!」

 と、黄菜子の元へ向かおうとするが、武装者が拳銃をこちらに向けていることに気付き、思わずその場で立ち止まってしまった。

 そして、その衝撃で今まで気を失っていた黄菜子は目を覚ますとすぐに

 「……っ! いや! いやぁぁぁあああ!!!」

 と思わず、両手から火の玉を出したのであった。目くらまし程度だったがその隙に黄菜子は急いで逃げようとしたが全く怯むことなく一瞬で拘束されてしまい今度は逃げられないように前に容赦なく押し倒すのだった。このままでは黄菜子の腕がへし折れてしまうのではないかという強さで押さえつける。

 「やめて! 今すぐ放してあげて!」

 そう千尋が言うも、

 「言ったでしょう。人間ではないという証明をすると」

 そうこうしているうちに、部下の2人は黄菜子が大事そうに被っていた帽子を掴み、

 「さぁ、その正体をここにいる人間に曝け出せ! 忌々しい化け物め!!」

 その一言で大事に被っていた帽子を破くように奪われたのだった。

 そして彼女たちは見たのだった。黄菜子は昔から人々に忌み嫌われ、怪物の末裔と言われている獣人族の証である獣人の耳を生やしていたという事を………。

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 大体1分ぐらいで見終われるように書いております。  内容次第では少し長くなります。
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