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創られた世界に破壊を込めて  作者: マサト
文化祭

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激情 Ⅱ

 私は嫌われ者だった。きっかけは昔クラスメイトと気になる異性について話していた時だった。その男子は成績優秀で運動も抜群、生徒だけでなく教師たちからの信頼も厚かったそんな彼であったがある日私が教室に忘れ物を取りに行った際、その男子とその友人がおりそして偶然にもこんなことを聞いたのだった。

 お前って女子たちから人気だよなぁ。

 なぁなぁ、もし女子に告られたらそのまま付き合うのか?

 はぁ? んなわけなぇだろ。俺はここの女子なんて付き合ったり、結婚するわけねぇだろ。それにこの学校の女子共はどいつもイマイチなんだよな。まぁ、もし付き合うことがあるようならたっぷりと抱いてからそのままポイ捨てすればいいだけだしな。

 そんな話を教室内で友人たちと笑い合っていたのであった。そしてその内容をクラスメイト達がいる前で話す機会が偶然会あったのだった。女子たちをそんな目で見ていたことに同じ女子として許せない。そんな正義感で動き何の考えなしで動いていた。だがそれが甘かった。

 そ、そんな、俺はここにいる女子の事をそんな目で見たことなんて1度もあるわけないじゃないか! 俺は四季さんにそんな目で見れていたことに悲しい気持ちでいっぱいだよ‥‥

 そうだ! そこまで言うなら証拠とかあるのかよ! なければ勝手な言いがかりだ!

 その男子は泣きながらそんなことを言っていないと訴え、その友人は慰めていたのであった。証拠としてボイスレコーダーや携帯で動画撮影をすればきっと理解してもらえたのだろう。だがあいにく私は機械に関してはとても弱く口頭だけでは証拠として成り立たず、やがて周りからは‥‥

 酷い、最低とあちこちから聞こえ始めたのだった。そんな時に声を掛けたのが‥‥

 良いんだ皆。俺が四季さんと仲良くできなかったのが悪いんだ‥‥だからそんなに責めないであげてくれ。

 そんなことを男子生徒が笑顔で言うのだった。

 その一言が決定的となり、翌日から私はクラスメイトだけでなく他のクラスや学年から嫌われ者として遠ざけられ、一部の生徒からはいじめを受けたのだった。その実行犯はその男子生徒の事が好きな生徒でその数は数百人によるもので中には今まで友人として接してくれた生徒たちも手のひら返しでいじめに加勢していたことに気付いた。そうして私は学校を卒業するその数年は孤独の毎日を過ごしていくのであった‥‥それ以降私は2度と他人と関わらないように距離を置いてただの傍観者となるのであった。

 そして傍観者として今まで暮らしていた私に報いを受けるのだった。突如現れた他人に何の理由もなく首を掴まれそのまま力を込めて絞め始めたのであった。始めは抵抗もしたが男と女では力の差は歴然で結果はすでに見えていた。だからこう思った。きっとこれは嫌われ者として過ごしてきた私への罰なのだな。と。それならいっその事このまま殺して欲しかった。そうすれば3人もきっと厄介者と生きてきた私を忘れることが出来て今よりもって笑顔で過ごせるのだから‥‥

 あぁ、冬美、そんな顔で見ないでよ‥‥もっと笑って私を見送って、そうしたら私も笑って地獄に行けるのだから‥‥あぁそうだった。私はあれ以降笑顔の作り方‥‥分からないんだった‥‥‥こんな駄目な姉で、笑顔すらも作れない冷たい姉で‥‥‥ごめんね…‥

 そうして私の意識は遠のいていく感じがした。そして肌で分かった。私はもう死ぬ。と。死ぬのは怖いというが不思議と怖くなかった。きっと何の悔いがないからかな。あぁ、それだったらちょっとだけ嬉しいな。

 ‥‥それじゃあ冬美、さようなら。姉さんたちとも最後に笑顔でお別れしたかったけど欲張りは言えないかな。せめて私の思いを伝えることが出来たらよかったんだけど仕方ないよね。地獄で皆の事を見ているからちゃんと私の分まで生きてね。貴方の姉でよかったよ‥‥‥

 そして意識が完全に落ちるのであった。だがその寸前にある言葉が聞こえた気がしたのであった‥‥


 (…‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥あ、れ?)

 だがいつまで経っても死ぬという感覚がこの身に来なかった。死ぬという事は分からないがそれでもこの感覚は今から死ぬという事ではないような気がした。それになんだか先ほどまで消えかかっていた意識や体の温もりが徐々に戻ってくるようだった。まるで深い海の底から誰かが私の手を掴んでそのまま引っ張り上げるような‥‥そんな感覚がしたのだった。そしてなんとか閉じていた瞼が開く感じがしてその身に任せてゆっくり瞼を開けるとそこにいたのは‥‥‥


 一言申せば危なかった。あと1秒遅ければ秋実さんの命がこの場で失われていた可能性が高いからだ。さっきの大きな音が発生した場所を【ライフ・サーチ】簡単に言えば人や物の居場所を広範囲で瞬時に特定しその場の状況を確認するいわゆる探査系に優れた能力である。そしてその場所を見てみるとなんとそこには四季秋実と四季冬美がおり、しかも秋実は男に首を絞められ死に絶えようとする寸前で冬美は恐らく喘息だろうか、咳が止まらずひどくなる一向であった。その瞬間零は自身がメイド服を着た少女の姿をしていることすら完全に忘れ、音速の速さで駆け走りそして3階の生徒会室から2階の大きなフロアまで4秒で辿り着きそのまま首を絞めている男の顔面に向けて全力の膝蹴りをくらわせるのだった‥‥男は不意の攻撃と強い痛みのあまりに絞めていた手を離し数十メートルまで大きく吹き飛ばされたのだった。零はそのまま秋実をお姫様抱っこのように抱え

 「【時ノ逆再生】」

 虹色の杖を持ちその言葉を発するとあちこちの散らばっている窓ガラスの破片から床に空いたクレーター、床に這いつくばっている数十名の生徒、そして喘息が続いていた冬美の症状が徐々に和らぎ秋実の容態も回復し始めたのだった。【時ノ逆再生】は指定した範囲にある人や物の状態を数分前まで巻き戻しその数分間までにできた怪我や症状を元の状態に戻す効果を持っている。そして2人の状態が良好になるとそこにタイミングよく朝比奈莉羅と水河瑠璃が声をあげながらこちらにやって来て

 「ほ、星乃君! 一体これってどういう状況なの!」

 「丁度良かった。2人を生徒会室の休憩室まで運んでいただけませんか? 2人とも意識は失っていますが命に別状はありませんから」

 「えっ、い、良いけど‥‥」

 そうして2人を引き渡そうとしたところに

 「おいおいおい!! いてぇじゃねぇか! 急に顔面に蹴りを入れるとかお前頭がおかしいんじゃねぇのかよぉ!」

 吹き飛ばされた男がこちらに戻って来てそう怒鳴るのであった。

 「えぇ~~いきなりのメイド登場とか笑える~~」

 「そうそう、そんな野蛮だとお客に引かれるよぉ~~」

 「メイドは回れ右してご主人様のご奉仕でもしとけっての」

 男の仲間である3人の第1術科学園は目の前にいるそのメイドに向かってそんなことを言い合うのだった。彼らはそのメイドの正体が今まで探していた星乃零という事を分かっていなかった。何せ声が少女の声だったのだから。だから調子に乗ってそのような言葉を言いゲラゲラ笑っていたのだが

 「…‥‥‥‥あ?」

 振り返り見せたその目を、振り返った際に放ったその一言に

 (っ!? な、何だ! 体が動かねぇ!!)

 (こ、これは威圧! だがこんな身動きが取れないほどの威圧なんてあの人並、いや、それ以前にあのメイドの目が赤くなっているだと!!)

 いきなり手足や口が動かなくなったがそのうちの1人は何とか落ち着かせようと冷静に分析していたのだった。そんな状況など露知らず視線を戻し2人を抱えて生徒会室に向かった莉羅と瑠璃を見送るとこちらを再び振り返った。それと同時に動かなくなっていた体が再び動かせるようになったことに気付くと

 「てめぇぇぇ! 何しやがったぁ!!」

 メイドの間合いに瞬時に入り拳を全力で振りかぶった。その流れるような動作は最早早業だった。並みの術者ならば対処できずそのまま殴られ最悪の場合重傷を負うだろう。それだけこの男が放つ一撃は凶器に近いという事である。他の者はあぁ~あのメイド死んだなぁ。と、この後起こるであろうことをすでに分かっていることであろう。だがそうはならなかった。何故なら‥‥そのメイドは凶器のような拳を小さな手の平1本で難なく止めており、体がピクリとも動いていなかったのだから。これには4人も驚きを隠せなかった。これまで学園内でもその男が放つ全力の拳をまともに止めた者は誰1人としていなかった。そしてそれを止めたのが自分よりも弱そうで、体を抱きしめれば壊れるほどの華奢でメイドというおかしな服装をしている人物に表情変えずに止められたのだから。しかしそれでももう1度全力の拳を振り下ろした。さっきのはまぐれで運が良かっただけだ。そう思いながら振り下ろした。振り下ろされる拳は術で強化されており普通の人からでは認識しにくく当てられてようやく認識するレベルだった。だというのにそのメイドは今度は難なく躱しそのまま男の胸部に振り下ろされた拳と同じほどの速度でお見舞いするのだった。そうして男は再び吹き飛ばされ仲間の所まで戻っていくのであった。

 「それはこっちの台詞だ。よくも私の『大切』なものを傷つけたな。五体満足で帰れると思うなよ」

 その目は、その表情はまさに激情という言葉を表しているかのようだった。

 

 

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 大体1分ぐらいで見終われるように書いております。  内容次第では少し長くなります。
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