ドジっ子な・・・
時刻は午後3時となり、あと2時間ほどで1日目の文化祭が終了するのであった。そして生徒会で行われているメイド喫茶に
「こんにちはー」
「同志よ、拙者たちが来たですぞ」
「こ、こんにちは…」
店内に成宮千尋、立花豪志、黄菜子、そして3人の後ろには黄菜子の姉である緑がいるのであった。
「あっ、皆、待ってたよ」
そこにキュート系のメイド服を着た朝比奈莉羅が接客に行ったのであった。
「ほほぉ、その衣装が千尋殿が作ったと申していたメイド服ですかな。いやぁ、実にオタク心を掴まれる見事な出来前ですぞ。流石は千尋殿ですな」
「そう言ってもらえるとなんだかこそばゆいかな。でも、ありがとうございます」
「うん‥‥可愛い、よ」
「これがめいどという洋服ですか? なんかフリフリした物が沢山あって何だか見ているこっちが恥ずかしい気持ちになりますね…」
「緑さんも1度着てみれば、きっと気にいると思いますけど‥‥」
「えっ、い、いや、恥ずかしいですよ。この前来ていたわんぴーす? のようなヒラヒラした洋服ですら結構恥ずかしかったんですから‥‥」
「おねえちゃんは、下がスース―した着物は苦手…」
「き、黄菜子!?」
突然の妹によるカミングアウトにより緑は顔を真っ赤にするのであった。
「……そういえば同志が見当たりませんですな」
豪志は店内をキョロキョロしながらそう言うのであった。今店内にはクール系のメイド服を着ている水河瑠璃、大和里見、ベーシック系のメイド服を着ている柏木理沙、メルヘン系のメイド服を着ている柳寧音がいるのであった。ちなみに小笠原陽彩は裏方で注文された料理を作っていた。
「そういえば星乃君のクラスって確か6人だったよね? もう1人足りない。確か名前は星宮香蓮さんだったかな?」
「あぁ、彼女は今星乃君のお手伝いをしているよ」
「お手伝い?」
「まぁまぁ、とりあえず立ち話もなんだから早く空いている席に座ろうよ」
そうして莉羅は空いている席に案内しそしてメニュー表を渡すのであった。
「へぇー、結構メニューの品があるんだね。どれにしようかなぁ」
そう各自悩んでいると
「‥‥ん? この裏メニューと書かれているこれは一体なんでございますか?」
「それはですね今の時間帯で別室にて数名限定で裏メニューの品を提供しているんですよ」
「裏メニュー? それってここでは頼めないようなものですかな?」
「あー、えっと‥‥内容については話せないですけど、そのメニューには実は星乃君と、ジュダルさんが関わっているの」
「同志がですかな‥‥ちなみにこのメニューは危なくないのですぞな?」
「えぇっと、星乃君が言うにはよほどのことがない限りは安全って言っていました」
あははは‥‥と苦笑いをするしかなかった莉羅であった。
「なるほど、ではここはあえて拙者はこの裏メニューを頼みますぞ」
「あっ、立花さんも? 実は私もこのメニューを頼んでみようと思ったの。見ているとなんだか興味を持っちゃって‥‥」
「わ、私もこれにします」
「じゃあ、私も同じで」
こうして4人とも同じものを注文するのであった‥‥
その別室にて‥‥
「うぅ~~、緊張してきたぁ‥‥上手くできるかな」
星宮香蓮は胸に手を当ててすー、はー、すー、はー、と深呼吸をしながら気持ちを落ち着かせていたのであった。彼女は星乃零とジュダルの指名で何故かこの裏メニューの接客係を行うこととなっていた。接客自体これまでしたことは勿論の事、他人とあまり話をすることなどほとんどなく今日を迎えたのであった。そして隣には星乃零がいたのであった。彼は周りにお客がいないので少女の姿から少年の姿に戻っていた。今の表情は流石と言うべきか緊張してなさそうに見えていた。
(れー君はすごいなぁ。こんな接客でも緊張していないなんて。羨ま‥‥)
だが途中であることに気付いた。零は小言で
「終わればフィギュア終わればフィギュア終わればフィギュア終わればフィギュア終われば…‥‥」
そうブツブツ呟いていたのであった。その影響か顔がこわばっていた。
(なんかブツブツ言ってる‥‥‥やっぱりれー君でも緊張とかするのかな?)
どうやら外から聞こえてくる活気の声や賑やかな声にかき消され零が言っている呪詛の様な言葉は全く聞こえていなかったのであった‥‥
4人が入ったその場所にはカラフルな色で統一された可愛らしい飾りつけ、可愛らしいテーブルと椅子、そして奥には小さいが丸いステージがあった。この場所はまるで秋葉原にあるであろうメイド喫茶を思わせる場所であった。そして数名程度だが他のお客もおる中、空いている席に千尋と豪志、黄菜子と緑がそれぞれ対面するように座るのであった。
「まさか生徒会室にこのような場所があったとは‥‥実に驚きですぞ。流石は術科学校ですな」
「ほんとにね。それにメニューもここにしかない物もいくつかあるし‥‥黄菜子ちゃんと緑さんはどれにするか決めた?」
「ん。このオムレツにする」
「じゃあ、私もそれで‥‥」
そうして4人は注文するメニューを決めて店員さんを呼ぶのであった。そして店員さんが来たのであった。その店員は中学生と思えるほどの少女で、スカートの裾はとにかく長く足首まであるほどであった。4人の元まで向かっていたその少女だが裾が長く履いているのがピンヒールのためか歩きにくくしており、後もう少しというところで前のめりに転んだのであった。それも顔からバタンッ! と盛大に転んだのであった。そしてゆっくり立ち上がり‥‥
「コホン…ようこそお越しくださりました、ご注文をお伺いします」
何もなかったかのような振る舞いで注文をうかがうのであった。4人は注文する料理を伝えるのだがその際顔が赤く腫れていることに目が行くのであった。そして注文を取ると再び厨房台へ向かった。しばらくすると再びバタンッ! と大きな音を立てて転び「痛い…」と呟くのであった‥‥
料理の前にはお冷が来る。それはどこの店でもそうでありこのメイド喫茶も例外ではない。そしてお冷が運ばれ来たのだが運んでくるのは先ほどの少女であった。やはり履いているヒールで歩きづらそうにしておりスカートの裾をヒールで踏まないかどうか見ているお客たちが不安そうに見ているのであった。どうか転びませんように。そう願う客に見守りながら少女は先ほど注文を伺ったお客の元へ向かうのであった。だがその願いを拒むようにバタンッ!! と前のめりに三度転びそのまま人数分のコップに入っていたお冷をバシャ―、とかぶり少女が着ていたメイド服がびしょびしょになるのであった。顔を上げたその少女はうるうる…と今にも泣きそうな表情をしておりその一連の流れを見ていたお客たちはその少女の事をこう言うのであった。
ドジっ子、可愛いドジっ子ちゃん、ドジっ子メイド、頑張り屋のドジっ子ちゃん…と
その言葉を温かい目で見ながら何度も連呼するのであった‥‥
「お待たせしました。ご注文のオムレツです」
別の場所ではもう1人のメイドが人数分のオムレツを配膳していたのであった。そして
「で、では‥‥お、美味しくな~~れ、も、も、萌え、萌え、キュ~~ン‥‥」
顔をトマトのように真っ赤にしながらだが無事に最後まで言うことが出来たのであった。大人しい子がこのような恥ずかしい言葉を言う事自体難易度が高いのだが、それでも頑張ってやり遂げればお客たちも微笑ましくなり例え提供された料理が美味しくなくても最後まで食べてしまうのであった。まぁこの喫茶店では基本的に美味しくない料理は出してはいないのであるが‥‥
「美味しく~~、美味しく~~、美味しくな~~~れ!! 萌え萌え‥‥キュー―――ン!!」
こちらは動きを大きくし最後にはウインクしながら両手でハートマークを作り、飛び切りの愛情を注文した料理に注いだのであった。その効果は、
「な、何だこのオムレツは!? こんなおいしいのは今まで食べたことないぞ!」
「このサンドイッチもだ! どの具材もまるで高級品のように美味しすぎるぞ!」
大変絶賛であった。
その後も少女は他のお客たちにも同じ料理に美味しく成る魔法の呪文をかけ続けたのであった。その中にはあまりの可愛さに気を失う者から、尊すぎて鼻や口から吐血を出し尊死する者も現れるのであった‥‥
「あはは‥‥‥この喫茶店はある意味凄いね」
「本当ですな。特にあのメイドはまるで歴戦の戦士のようですぞ」
「大げさ‥‥ではないかも?」
「モグモグ‥‥このオムレツ美味し。おねぇちゃんにも一口あげる」
「ありがとう。‥‥本当だ美味しいね。じゃあ私も一口あげるね」
「うん。‥‥おいし」
豪志と千尋はそのメイドを見ている中黄菜子と緑は今行われている内容があまり分かっていないのか提供された料理の食べ合いっこをしていたのであった。
そして裏メニュー『ドジっ子メイドを見守り隊』が終わる時間となり最後に奥にある丸いステージにてドジっ子メイドによる歌とダンスを披露するのであった。そして見事に数回ほど転びはしたが無事に最後まで踊りきることが出来最後までみんなの期待をある意味で裏切らないドジっ子メイドであった。
こうして1日目の文化祭が終了。2日目も無事に終わればいいと誰もが願うのであった‥‥




