とある朝
小説家になりたくて投稿しました。
よろしくお願いします!!
……その者の目の前に広がるのは、燃える建物、燃える草木、そこら中に死体となって転がっている人間の死体、まるでここが地獄のような光景だった。死体となっている者たちはいつも通りの生活を過ごしていた者、お店を開き商品を販売する者、毎日元気よく街中で遊ぶ者、平和を願う無力な人間…。その者たちは例外なく心臓を一突き、肩から横脇にかけて深く斬られ、中には首と胴体、あるいは胴体と足が真っ二つとなっている等々、目視できる範囲で何十、何百人もいるのだった。その中には命乞いをしたような口の開きをした者、子供を守ろうと庇いそのまま子供ごと貫かれた親子、そしてまだ6にも10にも満たないような幼い子供がまるでゴミ束のように積み重ねられて目を見開いてそのまま死に絶えていた。そんな地獄をその者は駆け抜ける。道中まるで御伽噺に出てくるような騎士がその者を持っている剣や槍といった武器襲い掛かってくる。勿論殺すためである。だがそれでその者は止まることはない。その御伽噺に出てくるような騎士を何人も斬って、斬って、斬って、斬って斬って斬って斬って……斬り続けて、目的地へと進んでいく。
そしてその者がその目的地に辿り着いた時に唯一無二、かけがえのないものがひと際大きい騎士によって散らされるのを目撃したのだった。
そしてその者はその瞬間を見て足を一歩前へと踏み出し叫びながらそのかけがえのないものを奪った騎士の元へと向かう……
「ふぁ~、夢か」
閉じていた重い目をゆっくり開けてそう呟いた。時刻は午前6時半、このまま寝ていたいのだが今から2度寝してしまえば次に起きるのは数時間後になってしまうかもしれない。そう思い、横になっていた体を起こして「ふぁ…」と呑気なあくびをして誘惑をしてくるベッドから離れて自室のカーテンを開けたのだった。今日はこの少年——星乃零が通うとある学校の今学年の終業式である。零は中学3年生でこの式が終われば4月からは高校生へ進級となる。
「今日の天気は快晴か。なんかいいことがありそうな予感がするな」
今日の天気は雲一つない快晴。こんな天気の良い日にはきっと何かいいことが起きるかもしれない、そう口にするのだった。そして朝の始まりである朝食の前に先に顔を洗おう、そんないいことが起きそうな1日を始めるため洗面台へと向かうのだった。
洗面所までは自室から出て少し先の所なので迷いもなく洗面所の入り口のところまで着いて何の躊躇いもなくそのまま入り口のドアを開けたのだった。
「う~~ん、どうして私のここはいつまで経っても大きくならないのだろう…」
と自身の姿を鏡の前でとある部位を触りながら何度も確認をしていたのだった。
「ここ数年で身長は伸びているのに、ここは相変わらず何も変わっていない気がする…」
むに、むに、むに‥‥その女性は何度もとある部位を何度も回したり、何度も寄せたりしてそう呟いたのだった。
「好き嫌いをしたから? いや、春ねぇの作る料理はどれも美味しくて食べ残したことは1度もないし、それとも、日々のマッサージの回数が少ないから? いや、1日に寝る前にここのトレーニングはきちんとこなしているし…‥もしかして回数が足りなかったのかな」
その後もあーでもない、こうでもない、と鏡を見ながら1人でブツブツ呟いたのだった。
むに、むに、むに、ぐるん、むにむに、ぐるん…‥それからもとある部位を撫で回したのだった。そして、
「きっと、零もここが大きい女性が好きだろうなぁ……」
ふとそんなことを呟いたと同時に後ろのドアが開いたのだった。そのドアの入り口には1人の少年が立っていた。その少年は「ふぁ…ねむ…」と目をこすりながら半分閉じていた目を開けると…2人は鏡越しに目が合ってしまった。一人は寝間着姿の少年、もう1人は可愛らしいピンクのブラジャーと同じ柄のショーツを穿いていた女性がその場にいたのだった。それからその場はピタっと静寂に包まれた。だが、それはほんの一瞬で、その少年が「……あ」と小さな声を上げたと同時に
「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!」
女性はトマトのように顔を真っ赤にして振り向くと同時に近くにあった洗面器をドアを開けたばかりの星乃零に向けて勢い良く投げたのだった。
「うぅ~、鼻が痛い」
「ふん! 勝手に覗いたからでしょ!」
「いや、顔を洗いに洗面台に来ただけなのに…まぁ、すみませんでした」
「うるさい! 馬鹿!」
「えぇ…」
午前7時、その後2人はとある喫茶店で一緒に朝食をとっていた。零は学生制服、女性の方は動きやすい部屋着を着ていた。今日のメニューはトーストパンにサラダ、目玉焼きに軽く炒めたハム、コンソメスープ、そしてヨーグルト付きといったなかなかおいしそうなメニューであった。
ちなみに、その場で朝食をとっているのは二人だけではない。周りには出勤前の会社員や朝のジョギング後に軽く何か食べようと思いやって来た女友達、学校前に何か食べようと思いやって来た学生らしき人物等のお客さんたちでそれなりに席が埋まっていた。それはここが喫茶店だからである。
店の名前は【喫茶四季】といい、ここに住んでいるとある5姉妹とその叔父がこの店の店長として営業を行っている。この店の売りは、提供されるメニューはどれも美味しく、更に値段それなりに安く学生たちにとってはとてもありがたい場所である。そして何といっても姉妹と店長の容姿と対応力である。5人とも女神のようにとても美しく可愛くて誰に対しても優しく接してくれるため、この店のリピーターが増え続けている。一方、店長は50代後半だが、見た感じではとても50歳後半と思えないほど若く、初対面の人は必ず店長を30代後半や、40代前半と間違えてしまうほどのダンディである。そのため、近くに住む婦人たちからは「はぁ~~店長さん、いつ見てもかっこいいわぁ~~」、「はぁ、家の旦那もあんな風だったら良かったのになぁ~~」等とこの喫茶店で友人たちと集まってはそんな会話をしている……らしい。
…とまぁ、それは置いといて。早速今日の朝食のメニューを頂くことにした。まずはコンソメスープを一口頂き、次にサラダを食べてそれから、トーストパンにイチゴジャムを塗り食べ、途中、目玉焼きや軽く炒めたベーコンを少しずつ食べて……数十分後には残さず全部完食したのだった。
食事の最後にはコーヒーと言いたいところだが、零は苦いだけしかないコーヒーが苦手のため、代わりに牛乳多めのコーヒー、つまりカフェオレを朝食の締めに飲んだのだった。
「あぁ~美味しかったぁ」
「…うぇぇ~。苦い」
隣からそう聞こえたため零は隣にいる女性の飲んでいる飲み物を見ると
「えっ、それってコーヒー、しかもブラックじゃあ…」
「ふん、うるさい。見ていなさい、私だっていつまでもカフェオレじゃないからね! ゴクッ、ゴクッ……にがぁ~~」
「ほらぁ…無理するから…」
「ッ~~~、るさい!」
そう言うと零の飲み掛けカフェオレ入りのカップを掻っ攫い一気にゴクゴクと飲み始め…
「あぁ! まだ半分以上残っていたのに!?」
「ぷはぁぁぁ! 助かったぁ~~。あっ、はい、返すね」
「いや、もう一口しかないけど!?」
「うるさい。ちょっとでも残してあげたことに感謝してほしいよね。…あ~。でも、もしその一口もくれたらさっきの件の事水に流そうと思っているのだけどなぁ…残念だなぁ…(チラッ、チラッ)」
これには何も言えなかった。何故なら今から30分前に零が顔を洗いに洗面台に向かいドアを開けたら下着姿で自身の胸を持ち上げている目の前の女性の姿を事故とはいえ見てしまったからである。このご時世、男性がその気がなくても女性の恥ずかしいところを見てしまえば例外なく男性が悪いという絶対的な法則があるため、
「いえお構いなく最後の一口どうぞお納めください」
「うむ、よろしい」
結局、反論できないまま最後の一口も彼女に持っていかれたのだった。
四季有紗。零が隣にいる彼女の名前である。茶色い長い髪に透き通るような大きな瞳、スタイルの良い体、透き通るような色白の肌をしており、他の女性から見ればとても羨ましいと思うだろう。そんな彼女だが「あぁ~、やっぱり締めはこれだよね」と朝食に付いていたヨーグルトを美味しそうに食べていた。
(はぁ、さっきの事を考えるとああした方が良かったと思うけど、朝はカフェオレを飲まないとなぁ…)
星乃零にとって朝のカフェオレは毎日のルーティーンである。だが、今日はまだ一口しか飲むことが出来ず残りは全部有紗に持っていかれてしまい、絶賛気分が駄々下がり状態になってしまった。だが、突如として救いがやって来たのだった。
「あ、あの、零さん」
と声を掛けてきたのはここの店員兼五姉妹の1人である四季冬美だった。そして彼女は持っていたある物を零の目の前に置いたのだった。それは、
「あっ、これって…」
「あぁ、えっと、カフェオレ、です。遠くから見ていたから分からないですけど、零さん、これ飲まないと調子が出ないみたいだから…えっと」
「すみません。助かります」
お礼を言いすぐにカップに入ったカフェオレを飲み始めた。
「えっと、私の淹れたカフェオレ、そんなにおいしいの?」
「はい! 冬美さんのカフェオレ美味しいです!」
と絶賛したら、
「……ありがとう」
よほど嬉しかったのか持っていたおぼんで顔を半分隠して小言でそう言ったが、あいにく彼はカフェオレに夢中でその言葉に気付かなかった。
「…零の女たらし」
有紗もぼそっと呟いたがそれも聞こえていなかった。
その後、後から聞いた話だが、零が朝食を終えて学校に向かった後何故かいきなり四季冬美が淹れたカフェオレのオーダーがしばらく続いたらしい…。
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