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ニート仲間

 いったいどういうこと?

 実は、バメオロスは偉い存在だったのだろうか。

 首をかしげていると、旦那様は震える声でいった。

「なぜ、戦のときに現れてくださらなかったのです……! あなたさえいれば、私たちは……」

 バメオロスさえいれば、勝てた? でも、戦況は私の祖国であるアイルーマの圧勝だった。バメオロスの存在で、左右されるようなものではないと思うけれど。


 バメオロスのほうをちらりとみると、バメオロスは相変わらずつぶらな瞳をしていた。

『私はいつでもお前たちと共にいた。気づかなかったのは、お前たちだ』


 そういって、撫でてほしそうに私の手に頭を擦り付ける。私は優しくバメオロスの頭を撫でた。

『私を見つけ、孤独から掬い上げてくれたのは、アデラインだ』


 あれ、私、バメオロスに名前を名乗ったかしら?


 一瞬浮かんだ疑問は、旦那様の問いかけによって霧散する。

「神獣をどこで見つけたんだ?」

「窓の外に」


 私がバメオロスがいた辺りを指差すと、旦那様はため息をついた。


『お前たちは【目】を喪ってしまった。今この世で【目】をもつのは、アデラインのみ。盟約は、もう、終わったのだ。私は、アデラインと自由に生きる』


 ええと。盟約とか目とかよくわからないんだけど。

 とりあえず、バメオロスもニートになりたいってことでいいのかな?


 私が尋ねるようにバメオロスをみると、バメオロスはミャアと鳴いた。


 それなら、私の仲間ね。一緒にニート生活を楽しみましょう。

「っ、わかり、ました」


 旦那様は、何か言いたげに私を見つめた後、去っていった。


◇◇◇


 その夜。

 寝室でくつろいでいると、来客があった。

 その来客とは──……。

「陛下? なぜ、この部屋に?」

 そう、旦那様だった。


 旦那様の表情からは、心が読み取れない。

「なぜ? 私は、あなたの夫だ。妻を訪ねるのに理由が必要か?」


 普通の夫婦なら、ね。

 でも、私たちの関係は初夜で決まったはずだ。私があなたを愛することも、あなたが私を愛することもないと。


 まさか──。


 ベッドの横で眠っているバメオロスを見る。バメオロスを懐柔するために、パートナーである私をどうにかしようって魂胆かしら。


 それなら、おあいにく様。バメオロスは大事なニート仲間なのよ。奪わせないわ。


 私は、じっと、旦那様を見つめる。

 旦那様の手が、私の耳に触れた。

「……おやすみ」


 そういって、旦那様は去っていった。


 ? ? ?


 何がしたかったのかしら。


 なんだかよくわからないけれど、どっと、疲れた。


 髪をかきあげようとして、気づいた。私の髪に、私の瞳と同じ色である、薄紫の薔薇が飾られていた。当然、私が用意したわけではない、それ。


「……これをとどけるために、わざわざ?」


 花なんて興味がないわ、と切り捨てるには、あまりにも綺麗な薔薇だった。それに、私は誰かから花を贈られるのは初めてだったから。


「花に罪はないものね」


 私は、薔薇を一輪挿しに飾ると、眠った。

 

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