神獣
「しんじゅう……? バメオロス……?」
なにそれ。
それにさっきの低い声は、やっぱりこの犬(?)から、出てたよね?
つぶらな黒の瞳で、私を見つめているその子から、再び声がした。
『そう、私は神獣のバメオロス』
神獣というのが、種族、だろうか。それじゃあ、名前がバメオロス。
「バメオロスは、しゃべれるんだね」
『貴女と契約したから、話せるようになった』
「契約?」
私がそう尋ねると、バメオロスは説明した。先ほど私がバメオロスを撫でたことで、契約が結ばれ私がバメオロスの主となったのだと。バメオロスは私の言うことをきく、忠実な僕、らしい。
そして私はその契約の対価として、バメオロスの食事を用意しなければならない、そうだ。
なんだかよくわからないけれど。バメオロスは、私のパートナーみたいなものってことよね。
「それで、バメオロスは何を食べるの?」
『イーディナ花を』
えっ花!? 花食べるの? なんだかすごくロマンチックだ。
イーディナ花は、この城の庭にも植えてあったから、いえば用意してくれそう。それに、自由にしていいといわれた城の一角で、自分で育てるのもいいかもしれない。
「わかったわ。これから、よろしくね。バメオロス」
私の言葉にバメオロスは、ミャアと鳴いた。
さて。バメオロスを部屋につれかえったわけだけれども。今更ながら、思い至った。
「この城って、室内は動物厳禁だったりしない、わよね?」
私はニートなのだ。この城のルールを破って、城を追い出されては困る。
まぁ、でも、好きにしていいといわれたのだし。この城の一部は私の治外法権が認められると考えてもいいだろう。
私は、とりあえずイーディナ花を用意してもらおうと、ベルをならした。
「はい、王妃様……!?」
すぐにやってきた侍女が、私の隣にいるバメオロスをみて、驚いた顔をした。やっぱり勝手に神獣を連れ込んだから、怒られるのかしら。
「恐れながら、その王妃様の横にいらっしゃるのは?」
滝のような汗を流しながら、侍女が私に尋ねる。誤魔化しても仕方ないので、素直に神獣のバメオロスよ。今日から私と一緒に暮らすから、とそういうと。
「陛下をお呼びします」
そういって、去っていってしまった。
そして、すぐにばたばたと誰かがやってくる。
「神獣……!?」
やってきたのは、旦那様だった。端正なお顔を信じられないものをみるように歪めて、私を見た。
そして、跪いた。
跪いた先にいるのは、バメオロスだ。
いったい、どういうこと?
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