魔王幹部は実は泳ぐのが苦手でした
―前回のあらすじ。龍一達は、ライアのダイエットのため小樽体育館にやって来た。そこには色々なスポーツもあり、今回は水泳を鍛えることになった。
……はずが、まさかの意外な人物とばったり会うことになった。
「何やってるんですか?」
それは、元春と円だった。
「いや、その……色々あって」
「山城君はどうしてここに?」
「ライア達と水泳しに来たんですよ」
これに円は気付いた。
「ライアさん達が?」
これにライア達は二人に言った。
「水練だ、文句あるか?」
「いえ、ありませんが……」
「ならよい」
ライアは納得した。
「ところで、どうして二人がここに? 確かに今日は俺も公休日でここに来たんですが」
元春は言った。
「ああ、俺も円も今日は公休日だったんだ。まぁ、本当の事を言うとだな、実は円に頼まれたんだ」
「高町マネージャーに?」
「泳ぎを教えてほしいって」
これに龍一は円の弱点に気付いた。
「もしかして、マネージャー……」
「…………」
円はそっぽ向いた。
(泳げないんやな、この人……)
彼女は泳ぐのが苦手、つまりカナヅチだった。
「円は何でもできるんだが、水泳……というよりスポーツすべて苦手なんだ」
「なるほど、それでここに?」
「円がどうしても少しでも泳げたいと言って……」
「わ、分かりました。なら、俺らは邪魔しないように別に行きます」
龍一達は別のコースに行くことにした。
「龍一、いいのですか?」
ロレナは質問した。
「仕方ないやろ、ああやって練習しとるんやから。とりあえず、俺らは店長らが使っているコースの隣の隣、四番コースへ行くで」
仕方なく四番コースへ行く。
その前に、やることがあった。
「まずは、プールに入る前に準備運動や。これやらないと、足をつっておぼれてしまうからな」
「そうなのか、ならばやろう」
龍一達は、準備体操をした。
「イッチ、ニー、サン、シー」
体を動かし、体操をした。すると、ライアは―。
「…………」
準備体操をして、違和感を感じた。
(動かしているんたが、やりにくいな……)
ライアは気付いてなかった。マリーナとロレナは、ライアの胸を見て複雑な気分になっていた。ぶるんっ、と、振るえてること知らず。ちなみに龍一は、真面目に体操をしていたのだった。
そして、準備体操を終わり、いよいよ水練に。
「よし、では水練に入るぞ」
ライアは水に入った。
「! 少し冷たいが気持ちいいな」
「プールってそういうものや」
「しかし、プールは毎年毎日開いているのですが、夏はともかく冬は寒いのでは?」
ロレナは疑問に思った。これに、龍一は言った。
「たしかに冬ではこの水やと寒い。しかし、スタッフもこういうのも計算の内や。寒くなったら少し暖かいプール水に入れるんやから」
「この世界のやり方は便利な事じゃな」
「こういうものや」
龍一はそう言うと、ロレナはライアの様子を見た。
「ところで、龍一様」
「なんや?」
「ライア様、溺れてますが」
ライアは下まで溺れていた。
「って、ライアァァァァァァァ! ロレナ、それを早く言わんかいな!」
龍一はプールに入ってライアを助け出した。
そして、ライアは一回プールに上がった。
「大丈夫かいな?」
「し、死ぬかと思った……」
「というか、ライアもカナヅチだったんかいな」
「く……! 魔王幹部として恥ずかしい」
ライアはものすごく屈辱を受けていた感じをした。
「ま、まぁ……、誰だって溺れるから。泳げない奴もおるんやから、気にしたらアカン。少しずつ泳ぐようにならんとアカン。その為にアレの出番や」
「アレとは?」
龍一が持ってきたのは、足を鍛えるための水練道具・ビート板だった。
「ビート板、これで泳ぐんや」
「どうやって使うのだ?」
異世界でもビート板はないだろう。その為に、龍一は説明した。
「まずはビート板の先に……」
二人か解説している一方、ロレナとマリーナは……。
「あの二人、妾がいない間にあのように仲良くなっているとはのう」
「なにしろ、龍一様にとっての恩人の方。人間に恩で一緒に過ごすとは思いませんでした」
「そうか。ここは、見守ろうではないか」
「承知しております」
水練をして、ライアは必死に泳ぐことにした。
つづく