草野球試合が始まり相手は遊びだと思っていたそうです
草野球試合。それは趣味ではなく遊びではなく、戦いだった。元春達率いる「OTARUNZU」は、相手チーム「鉄鋼工業」との試合が始まろうとした。
「それでは、第一回小樽市草野球試合を始めます。勝ったチームには酒屋の一本酒を手にします。なお、審判は私、スナックのオーナーが仕切ります」
審判は説明を言う。しかし、お互いは険悪ムード状態だった。
「礼」
「お願いしまーす」
こうして、試合が始まった。先攻は「鉄鋼工業」、後攻は「OTARUNZU」となっている。
「ええっと、俺は内野のセカンドか」
元春は内野のセカンドに入った。
「ピッチャーは俺に任せろよ、御子柴」
「ああ」
ピッチャーは車坂がやることになっていた。因みにキャッチャーは村上がやることになっていた。
これに、ベンチにいたセレナたちは心配していた。
「元春さんは、どこの辺りからいるのでしょうか?」
「内野のセカンド。つまりは走るコートの中ね」
円は言う。
「でも、元春さん達大丈夫ですかね? 相手、なんとなく強い感じします」
エリーゼも少しは不安だそうだ。
「元春達なら、きっと大丈夫よ」
先攻の「鉄鋼工業」。バッターは岡田だった。
「ケッ、いい気になんなよ」
(こいつ、俺らの事バカにしやがって……、なめんじゃねぇ!)
車坂は野球ボールを投げた。しかし……。
「フン!」
岡田はバットでボールを打った。
「しまった!」
あんまりの威力だが、内野には隙が出来てしまった。
「へへっ、だから言っただろ? 甘いんだよ!」
その時だった。
「!」
それは、内野のセカンドにいた元春がボールをキャッチしたのだ。
「なっ……!」
「美作!」
元春はファーストにいた美作にボールを渡した。
「くそ!」
しかし、岡田は慌ててファーストに走るが、既に遅かった。
「アウト!」
審判の声に、岡田はアウトになった。
「ナイス、御子柴!」
これにセレナたちはビックリしていた。
「元春さん、凄いです!」
「スポーツも出来るのよね、彼は」
円も頷いた。
一方アウトになった岡田は、少し悔しがる。
「くそったれ! 少し甘く見ていたぜ!」
「落ち着け、岡田」
岡田を落ち着かせたのは、上司の中尾だった。
「あいつらは、至って俺らと同じ二十代のモンだ。調子に乗ってたらマズい」
「そ、そうですね」
「それにあの御子柴という奴は厄介だな。あの男はたしか、ハトバの若店長だ。普通とはいえ、スポーツも出来る男かもしれないな」
「…………」
その後、車坂も本気でボールを投げて見事に相手をアウトし、チェンジした。
「とりあえず、ここからは俺たちの攻撃だな」
「だが、油断するな。あいつら、何するか分からない」
「OTARUNZU」の最初のバッターは美作だった。
「よしっ、いくぞ!」
「鉄鋼工業」のピッチャーは山崎、キャッチャーは岡田だった。
(この野郎、なめやがって。まぁいい、こうなったらこっちも仕返ししてやる!)
山崎はボールを投げた。だが、すると……。
「うわっ!」
美作の斜め辺りに投げ、岡田はキャッチした。
「ビ、ビックリした……」
「美作!」
これに元春達も怒った。
「オイ、危ないだろ! どこ投げてるんだ!」
しかし、山崎は……。
「すみませーん、滑った」
「あいつ、わざとだろ!」
康夫は怒りだすが、これに美作は……。
「小倉くん、大丈夫だよ」
「美作」
「油断しただけだからさ」
「…………」
美作は立ち上がり、態勢を整えた。
「よし、こい!」
山崎は美作を見て、ニヤッとした。
投げたその時、ボールは美作の指を当てたのだ。
「う……!」
「! 美作ぁぁぁぁ!」
「大丈夫か!」
元春達は美作の所に駆けつける。
「だ、大丈夫。指がちょっと」
「お前、今のわざとだろ!」
康夫は山崎に睨みつける。
「何言ってんだ、ラッキーじゃねぇか。それはデットボールだろ? ホラホラ、一塁行けよ」
「く……」
美作は一塁へ行った。
「あいつら、遊びだと思ってるな」
「ムカつくぜ。なぁ、御子柴!」
元春は思った。
「あぁ、確かにアイツらにとっては遊びかもしれない。けど、遊びじゃないということを教えるしかない」
「御子柴……」
元春はバットを持った。
「次、俺だったな。あいつらには少し後悔してやるよ、俺たちが遊びじゃない人生で、仕事をやっていることを」
元春の心に、怒りが出て来た。元春は、バッターに向かったのだった。
つづく