再会するために獣人であることを隠すため帽子を被ることにしました
翌日の朝、ハトバの仕事の朝礼が始まった時のことだった。
「ということで、今回はよろしくお願いします。それから、質問はありますか?」
「はい」
手を挙げたのは、山城龍一だった。
「久本さん、後で遅れてくるそうです」
「めずらしいな、彼女が遅れてくるなんて」
「何かあったのかしら?」
今日は久本桜子が出勤日の予定だった。
しかし、彼女は今日は遅れてくる。これに従業員は心配していた。
「まぁ、後で来るなら仕方ない。とりあえず、仕事に入ろうか」
従業員は、各自移動した。
「それにしても、何かあったのでしょうか? 桜子さんは?」
「う~ん、おっとりしているからな。そこまでは分からないけど……」
元春は、桜子が何を考えているかわからなかった。
その頃、桜子はというと……。
「これで大丈夫!」
「なんなのこれは?」
桜子は、昨日保護した異世界から来た商人の少女、ソルト・シールスと一緒にハトバへと向かうのだった。そのために彼女は、帽子をソルトの頭にかぶせた。
「帽子っていうの」
「耳があるのだけど、こういうのは……」
ソルトは獣人。異世界にも帽子があるのだが、被せたのはキャップ型の帽子だった。
「これ本当に帽子?」
「キャップ型は珍しいかな?」
「こういうのはないけど、帽子は一応あるけど……」
「ええっと、要するにハット型? この世界にはあるけど、私の家にはないよ」
これにソルトは、ハット型がないなら仕方なかった。
「仕方ないわね、これで行くしかない。といっても、きついわね」
こうして、二人はハトバへと向かうのだった。
そして、数分後……。
「すみません、店長! 遅れましたぁ!」
「あ、久本さん! やっと来たんだ!」
元春は桜子が来たことにホッとした。すると、彼女の隣には……。
「ん? その人誰?」
「それなんですが、セレナさんとエリーゼさんはいますか?」
「居るけど……、なにかあったの?」
桜子は辺りを見回した。お客は今日は少ない、言うなら今だった。
「それがこの人は、セレナさんと同じ世界から来た人なんです」
「!? 何だって!?」
元春は驚いた。
休憩室にて、元春はセレナとエリーゼを呼び、ソルトと会わせた。
「セレナさん、エリーゼさん! ご無事でなりよりです!」
「ソルトさん、どうしてここに?」
ソルトは説明した。
「実は少し話が長くなるのですが、商売の仕事が終わった時のことでした。片づけをしたとき、謎の空間が出現したんです。私以外見えておらず、不安に思っていたら、吸い込まれてしまってこの世界にやってきたんです。そしたら、桜子に拾われて保護されました」
「そうだったのですね」
「しかし、二人が行方不明になったと聞いたので、何とか無事で」
ソルトは二人を見てホッとした。しかし……。
「ですが、帰る方法がわからないのですよ」
「私たちも、ソルトさんと同じようになっていますので……」
これにソルトは……。
「そんな……」
しょんぼりした。
「ソルトちゃん……」
桜子は、ソルトを励ます。
「しかし、彼女が獣人となると、これからどうする?」
「それなのですけど、どうしましょう」
これにソルトは、辺りを見て気づいた。
「ここって、商売のところ?」
「ま、まぁ、一応は薬局店だけど?」
ソルトは決意した。
「ここで働かせてください!」
これに全員は、ソルトの発言でびっくりした。
「ソ、ソルトさん! ここでの世界では獣人はいないのですよ!」
「それでも、恩返ししたいです!」
「どうしようか……。従業員が増えるのは嬉しいけど、彼女が獣人だったら、世間がニュースになってしまうし……」
すると、桜子はある提案をした。
「あの~、こういうのはどうですか?」
「?」
桜子は提案を言った。
そして翌日、ソルトはというと……。
「これでいい?」
「うん、いいよ」
ハンチング帽を被って仕事をしていた。ちなみにハンチング帽子は、桜子が買ったそうだ。
「なるほど、これなら獣人には見えないな」
「桜子さん、よく考えましたね」
「しかも、しばらくは桜子さんのところに居候するらしいですね」
元春達は感心した。
こうして、新たに従業員が一人増えたのだった。