魔王側近は初めてスーパーに出かけました
ある日の事、山城龍一は冷蔵庫を開けて食材を見た。
「アカン、これはアカン」
かなりまずいなぁと思っている龍一。食材がほとんどないのだ。
「ヤバいわ、今日食材買いに行かないとアカンわ。今日はスーパーの特売やからな」
スーパーマーケットのチラシを見た龍一。狙いは卵パック、しかも八個入のパックで百円。安い、これは安かった。
しかし、お一人様だけだった。これに龍一は仕方なくやるしかなかった。
「買いに行くか。と言っても、不安やけどな」
龍一にとっては、不安が少しあった。
「この世界には卵が売っているのかのう。これは気になるのじゃ」
龍一には、ライアとロレナ、そしてライアの姉・マリーナがいるのだった。
「この現世には卵もあるとは、世の中不思議だらけじゃのう」
「…………」
しかもそれだけじゃない。ライアとロレナはこの世界では私服として着替えている。だが、マリーナはそのままだった。周りから、凄い唖然していた。
「アレ何? コスプレ?」
「ここでコスプレしているのか?」
かなり気まずい。しかし、マリーナは気にしていない。
「やけに妾を見ておる、もしや見惚れてしまったのかのう?」
「…………」
違うと思う、心にそうツッコんだ龍一だった。
スーパーマーケットに入ると、マリーナは堂々と入るのだった。
「ここが、食材などが売っている場所かのう。さすが現世じゃ」
マリーナは店を見渡した。
「で、龍一よ卵はどこじゃ?」
「卵やったら、確か豆乳コーナーにあったはずや」
牛乳・チーズ・豆腐などが置いてある豆乳コーナーへ向かった。そこに、卵があるはず。
すると……。
「ほう、現世ではこういうパックなのか」
「卵は食材の中では貴重なもの、割れやすいからな」
「なるほど、向こうでは卵は袋に入れるだけじゃったからのう」
マリーナは納得しながら頷いた。
「今日は卵パック、お一人様だがらな。それで、みんな連れて来たんや」
「わかりました。まずは、卵は私達が持って並びましょう。どれくらい必要ですか?」
ロレナの質問に、龍一は答えた。
「三セットや。まずは俺とライアとロレナで行こう」
その時だった。
「待たぬか、龍一。妾もやるのじゃ」
「姉様? 本気ですか?」
「妾はいつでも本気じゃ。さて、行くぞ」
これに龍一は、ライアに言う。
「ライア、お前の姉頼むわ」
「う、うむ」
心配なので、姉妹で行くことに。
(心配やなぁ、大丈夫かいな………?)
その心配が当たっていた。
卵パックを持っていくと、レジに並ぶ。
「いらっしゃいませー」
店員は卵パックのバーコードを機械で読み込んだ。だが、すると……。
「百円でございます。あちらで払ってください」
「なぬ? 店の者が払うのではないのかのう?」
それは、セルフレジだった。最近の時代はセルフレジが多くなっていた。
「仕方あるまい」
セルフレジに向かうエミル姉妹。
『お支払方法を選んでください』
「何じゃこれは?」
それは、現金かカードかなどだった。
「姉様、とりあえず現金を」
「うむ、それもそうじゃな」
現金を押し、画面が変わった。
『お金を入れてください』
「これを入れるのか?」
お金を入れるのだが、百円が入らない。
「…………」
何度も繰り返しした。すると、マリーナはこれに……。
「うがあああ! 何じゃこれは!? 何故金が入らぬのじゃ! ポンコツ機械なのかこれは!」
イライラして起こるマリーナに、ライアは彼女を止める。
「姉様、落ち着いてくださいませ!」
「こんな機械など……」
すると……。
「あの~、それ使うの初めてですか?」
声をかけたのは一般人の男性だった。
「ここに入れるのじゃが、入らないのじゃが!?」
「百円ですよね? そこは、千円札や一万円札に入れるとこ。小銭は、その穴に入れるのですが」
「……ホントじゃろうな?」
「ホントですよ」
「もし嘘ついたら殺すからのう」
百円を小銭入れに入れると画面が来た。すると、『レシートボタンを押してください』が出て来た。
「あ」
「…………」
その様子を見た、龍一とロレナはため息をした。
「あの人って、本当に大変やな」
「マリーナ様は、ライア様と違って短気なところもあります故」
「短気は損気になってしまうんか?」
こうして、肝心な卵が買えたのだった。
そして、マリーナは―。
「世の中にも、ああいう買い物があるのか。しかし故、なぜ店員が自分でやらんのじゃ!」
「いや、俺に言ってもアレやし、時代はAIが使う時代やから」
「悔しいが、学ばないと妾のメンツが崩れるのじゃ」
マリーナはどこかで悔しそうだった。
(令和時代はこうやからなぁ、世の中恐ろしいわ)
少し肝が据えた龍一であった。