忘れたなら引き出せばいいと楽しい思い出を蘇らせました
―ネクロマンサー。アリアにとっては生きがいを見つけた職業だった。しかしそれは、大切なものを失う代償がある。それはかつて、幼い頃のアリアは幽霊が見えたのだ。
「すごい……。お人形さんが動いている……」
しかし、ネクロマンサーは不気味な人物。一般人は怖れていたのか、彼女の親からはアリアの噂が広まった。
「アレはもしかしたら、例のネクロマンサーじゃない? 霊術が使えるという」
「あの娘が幽霊が見えるとは、遂に道が外れることになるなぁ」
「まさに、厄を起こす少女だ」
その噂に、アリアの親は恥ずかしく表に出られなかった。その結果、彼女を強制追放したのだった。幼いとはいえ、仕方ないことだった。
アリアは人に話すことがそれ以来苦手になったという。
しかし今、彼女は現世世界にやってきて、元春や雪子達の出会いによって、少しずつ人見知りが無くなっていたのだった。さらに、騎士団長のセレナやエリーゼもいて、彼女にとっては幸せだった。
だが、現世でも虚無感を持つ人間もいるはず。そして彼女は、誰かを救いたいのだった。
「…………、?」
人形の持ち主は机に座って勉強をしていた。その時だった―。
「なにかしら、あれは?」
謎の煙、するとそこには彼女の思い出ー、幼き頃が映っていた。
『私が五歳の頃にお人形を買った。それはあの子との出会いだった。ずっと一緒に、一年間離さずにいてくれた。私はあの子にとって唯一の友達だった』
「これは―私の………。それに、あの人形は………」
その頃、彼女の家では元春達がいた。
「彼女は今まで、忘れていた。だったら、その記憶を机の引き出しを引くかのように思い出すだけ」
「そういうの難しいかな~って思ったけど、アリアちゃんならこういう魔法も出来るのね」
その煙は、アリアの霊術の魔法だった。
「『追憶の思い出、この人形や人間に魔法をかけると記憶が出てくるものです。しかし、こういう事は滅多に使えないものですが………」
「大丈夫。例え何があっても、忘れていた楽しい思い出を蘇ってくることがあるんだ。それに、嫌なことでも、思い出せたい人間も何人もいるからさ」
「元春さん………」
一方、持ち主の方は……。
「…………、なんで捨てたんだろう。どうして今まで、頭の記憶にしまったんだろう」
するとだった。
「…………、!」
彼女はアリアを見て、ビックリしていた。これに彼女は外へ出て、アリアたちに会った。
「あなた達は………」
「…………」
アリアは人形を、彼女に見せた。
「この人形は、かつてあなたが幼い頃に買ったものなんですよね?」
「どうして……? 今の煙に映っていたのは………」
「ごめんなさい、あれは私の魔法です。でも、あの魔法はこの人形に魔法をかけて記憶を出しました。魔法には嘘や偽りなんてありません。今出ている幼い子供、貴方ですよね?」
「…………」
これに彼女は―目から涙が出た。
「………私、今までミリちゃんの事忘れていた。ごめんね……、本当にごめんね。捨てたりしないからね………」
「…………」
彼女はアリアに向かってお礼した。
「本当にすみません、ありがとうございます……」
「………大丈夫ですよ、私も昔はそういうことありましたから」
こうして、人形は彼女の元に戻ったのだった。
翌日の朝。人形の件は桜子達にも伝えた。
「本当に良かったですね」
「一件落着というトコですかね」
「皆、言っておくけど今回のMVPはアリアさんだよ」
「そういえば、アリアさんは?」
「品出しに行ったそうですよ」
その一方、アリアは人形に入った魂と共に働いていた。
「ここにお願いします……、それはそちらに……」
アリアを見た義子と雪子は思った。
「雪子、アイツ少しなんか変わったか?」
「そうねぇ、変わってないけど。ただ、一つだけ言えることがあるのよね」
「? なんだそいつは?」
「アリアちゃんは少しずつ前向きになっていることよ」
それは、彼女にとっては少しな笑顔があったのだった。