人間は時が過ぎると大事なものを忘れることがあるそうです
―前回のあらすじ。元春がゴミ捨てに行ったら、ボロボロな人形を拾った。これにネクロマンサーのアリア・ソウルートは、この人形は泣いていると気付く。
その為アリアは、『感情霊術』という魔法を人形にかけ、セレナとエリーゼと共に、持ち主の所に送り届けることにした。
「しかし、大丈夫なのですか? 持ち主を探すとはいえ、どうやって見つけるのですか?」
アリアは説明した。
「人形を見るんです」
「人形を?」
「先程、この人形に魔法をかけた『感情霊術』で、人形を表情を見ます。つまり、ランダムで道へ行きます」
「なるほど、ならどうするのですか?」
ちょうど道が分かれていた。
「右か左、もし右へ向かうと……」
すると人形は悲しくなった。
「お人形さんが悲しくなってますよ?」
「なら、左へ向かいます」
その時、人形は微笑んだ。
「笑いましたね」
「つまりここで、合っています。このように繰り返してやればいいんです。」
「さすがアリア、ネクロマンサーはだてではないですね」
エリーゼは褒めていた。しかし、彼女は何やら想い違いの顔をした。
「アリアさん?」
「! 大丈夫です、行きましょう……」
その頃、元春は休憩室にて資料を見終わったところ、雪子が入ってきた。
「店長、お疲れ様です」
「お疲れ。……そういえば、気になったんだけど。アリアを居候して彼女はどんな感じなの?」
雪子は言った。
「そうですねー。あの騒動以来、うちに来て働きながら住んでいましたが、そのあと仲良くなっていますよ。こう見えて、私一人暮らしだったので。ただ……」
「ただ?」
「最近は少し悲しい顔をしていたんです。何か思いつめているような気がして……」
「…………」
アリアに何かあるのか、元春はそう思っていた。
一方、アリアたちは……。
「着きました、どうやらここのようですね」
普通の一軒家、そして人形が笑顔になっていた。そう、間違いなくここだった。
インターホンを鳴らして、持ち主が出てくるまで待った。するとー。
『はい、何でしょうか?』
「あの……、落とし物を拾ったのですが……」
『ちょっと待ってください』
インターホンのスピーカーが切れると、そこに一人の女性が出て来た。
「あの~、この人形を拾ったのですが」
「その人形を? あぁ、それ捨てたの」
「え? 捨てた?」
「というより、いらなかったの。整理整頓していたら、押し入れから出てきてボロボロだったから処分しようかと思ったの。だから、いらない」
「そんな……」
確かに人形を見て、この人と間違いなかった。
「ですが、せめてこれを……」
「いらないって」
「…………」
セレナたちは追い出された。持ち主が見つけたとはいえ、いらないと言う。
結局、セレナたちは一度出直ししながら、元春に報告することにした。
「無責任なことだなぁ。……と言いたいが、世の中にはそういう人間もいるからね」
「それはどういう事ですか?」
元春は言った。
「昔大切持っていたものが、いきなり忘れて時が過ぎて、捨てる人もいるんだ。人間は大事なものをすべて忘れて、気付けば虚無の中に入ってる。そういう事さ」
「……虚無の中、ですか……」
「…………」
「仕方ない、明日今度は僕が着いて行くからさ」
するとだった。
「どうして……」
「……? アリアさん?」
「人は、こんなにも虚無感を出すのでしょうか?」
アリアは悲しそうに言う。
「どうして、大切なものを置いていくのですか……?」
「…………」
「こんなに、人形さんが悲しそうにしているのに、人間はどうしてこうも酷なことをするのですか?」
そして、アリアは泣きそうになる。
「どうして……?」
「アリアさん………」
「…………」
すると元春は言った。
「アリアさんが虚無感を持っている人を思い出させるんだ。ここで下がっても、何も出来なかったらどうなるんだ?」
「元春さん……」
「君はネクロマンサーだろ? だったら、君の力で救えばいい。虚無や初心を忘れた人間を少しでも思い出さないといけない。残酷だろうが悲しいだろうが、そこは謝罪の希望があるはず。後悔しても、またやり直せるはずなんだ」
「…………」
そこへ―。
「店長、よろしいですか?」
雪子が休憩室に入ってきて、これに元春は言う。
「丁度いいところに、雪子さんも協力してくれないか?」
「え?」
「蘇るための楽しかった記憶を思い出すための方法について」
元春はここまで来たら下がれない。ある作戦を決めて持ち主に返すことにする。
つづく