魔王幹部が想う人と一緒になることに緊張しています
ある日のこと、龍一が住んでいるアパートにて、魔王幹部であるライア・エミルは何やらソワソワしていたのだった。ライアにとっては珍しい行動である。
「…………」
ライアの行動に、彼女の部下であるロレナはじーっと見ていた。
「む~……。うむ~……」
これに悩むライアに、ロレナは口を開いた。
「ライア様、そこまで悩むことないですよ。というより、買い物に行くだけで悩むとはデートじゃないですから」
「わ、分かっている! ただ、あやつと一緒に行くのは、その……緊張するのだ」
これにロレナはため息をした。
「確かに、魔王様時代の時の恰好では目立ってしまいますね」
「うぐ……っ」
ライアには前科があった。異世界の恰好では、特に秋葉原ではすごく注目していたのだった。
「そ、それはその……。色々とあるのだからな!」
すると、ロレナは考案した。
「ならばこうしましょう、この世界にある格好で龍一様と買い物をするのです」
「いや、しかし……、そうなったら」
「あなたって人は……」
これにやむを得ず、ロレナはライアに強引でやった。
「ちょ……っ、何をするんだ? ロレナ、一体我を何するのだ?」
「問答無用でやらせてもらいます」
「問答無用って、何をするつもりなのだ! ちょっと、やめぇぇぇぇぇ!」
ライアはロレナの強引で叫んだのだった。
「よし、準備できたで。ライア~、そろそろ行くで~」
龍一が出てくると、急に止まった。
「!」
龍一はライアの恰好を見てびっくりした。それは、フリフリのワンピースにジャージのホットパンツの恰好だった。
「な、何や? その格好?」
さすがの龍一も驚いていた。
「べ、別に良いだろう! さっさと買い物に行くぞ!」
「その前にその格好が、気になるんやけど……」
するとだった。
「ん?」
龍一は、こっそり見ているロレナを見た。そして、ロレナは親指を立てた。
「…………」
龍一は「ロレナの仕業だな」という顔で、呆れていたのだった。
そして、二人はスーパーに向かうのだが、何やらライアの恰好を見て本人は気まずそうだった。
(うぅ、ロレナの奴め……、ここの住民が我を注目しているではないか。すごく恥ずかしいぞ……)
「…………」
さすがに龍一は、ライアの恰好に察したか、早くスーパーに向かうのだった。
スーパーに入り、必要な食品などを買っていき、何とかしたのだった。だが、ライアの顔は凄く恥ずかしい状態だったので、言ったほうがいいと思った。
「大丈夫かいな?」
「な、何がだ?」
龍一は言った。
「その服、さてはロレナの仕業やろ?」
「…………」
「本人の前では言えないやけど、ドSやな」
「す、すまん」
ライアは龍一に謝る。
「かまへんよ、俺は気にしてない。ただ、一つで言うとやな、可愛い恰好やん」
龍一の一言にライアは赤面した。
「な、何を言っておるのだ!」
「ホンマの事やで?」
「…………」
龍一は現世のことを言った。
「確かに世の中はいろんなことだらけや。けど、俺は平和が一番好きなんや」
「龍一……」
「きっと平和な日々という奴を、身に染みて来るはずや」
この時ライアは、平和ということに気付いたのだった。
ソルフィルスの世界には、人間や魔族などいた。争いが起こるばかりの時代。ライアは魔族の一人、しかし彼女は人間と魔族のハーフだった。
「お前のような奴は、悪魔だ!」
「悪魔は滅ぼすのが定めなのだ!」
「例え、人間と魔族のハーフとはいえ、居なくなるのが正しいのだ!」
この時、ライアは思っていた。
(人間は狂っていた。正義だと思っているが、本当にそれは狂っている……。正しいというのは……)
そして、彼女は魔王に拾われたのだった。魔王には、ある野望があった。
「平和、ですか?」
それは、魔王にとってのめずらしい野望だった。
「我は平和主義、血で争うのは好まない。人は酷な奴が多い、それでもきっと分かち合える希望があると我は信じている。お前にもきっと、判るはずだ」
その言葉を信じたい、そう思っていたライア。
そして、現在。平和という事を知った。
「……そうだな。平和な日々が来ること、我は信じたいな」
「そうやな」
龍一は笑っていた。
ライアは今この時思った。彼に恋して、好きという想い。それを伝えるのは、また別のお話。