想いを告ぎたい事があります
夜七時半、あと残り三十分で花火が上がる。セレナは、桜子が言っていた桃色の花火の件で決断をしたのだった。
「二人で、一緒に花火を見ませんか?」
「い、いきなりどうしたの?」
状況がいまだに知らない元春。セレナは思いっきり言った。
「エリーゼさんたちは屋台にて遊んでいますし、せめて私達だけでも……」
「…………」
これに元春は答えた。
「わかった」
元春とセレナは、花火が上がる場所へと向かった。
その頃、エリーゼ達は……。
「が、がは……」
射的屋の屋台を営んでいた巻平は、エリーゼとライアによって当てられまくった。その結果、商品全部上げる条件で引き分けとなった。
「今日はこの辺で勘弁してやろう」
「次の機会にて勝負です」
「いや、その前にその人に謝れや。瀕死状態やで」
龍一はツッコミを入れた。
「ライア様、そろそろですよ」
「そろそろだと?」
「花火があともうちょっとで始まります」
ロレナが言うと、ライアはヤバいと思った。
「! いかん! そんな時間なのか! こうしてはおれん!」
これにライアは、龍一を引っ張った。
「うぉ!」
「急ぐぞ、龍一!」
「何処へやねん! ちょっとぉぉぉ!」
ライアと龍一は先に言った。
「……花火、……!」
これにエリーゼは気付いた。
「団長と元春さん達、先に行ってしまったのでしょうか! いけない!」
エリーゼは急いでいった。
「景品はどないすんねん?」
射的の景品はその後、キャロルとロレナが持って帰るが、それはまた別の話。
その頃、元春とセレナは花火が見える場所に着いた。
「この辺りが、花火が見えるところなんだよ。花火はこの湖の先にあるんだ」
「そうなんですね……」
「楽しみだなぁ」
「…………」
ドキドキするセレナ。そして、花火の打ち上げが始まった。
「あ! 始まったよ」
「…………」
そして、セレナは腹をくくった。
「元春さん、私……。今まであなたのことを思っていました。この世界に来て、貴方に出会って……、気付いたんです」
「………?」
「私、そ、その……」
セレナは恥ずかしくて言えない。「好きです」という言葉が出ない。
「す、す、す……」
その時だった。桃色の花火が上がってしまうところにて……。
「団長ォォォ!」
エリーゼたちが来た。
「うわああああ!」
セレナと元春は、エリーゼたちが入ってきたことにビックリしていた。
「エリーゼさん! 皆さんどうしてここに?」
「花火を見に来ました!」
「例のジンクス!」
「巻き込まれた……」
「ライア様がせかすので、追ってきました」
理由にエトセトラに言うエリーゼ達。
「ちょっと、皆落ち着いて!」
「! 花火……!」
すると、放送のアナウンスが鳴った。
『お知らせします、特別の花火が点火失敗によって、ここからは普通の花火にします。お客様に大変申し訳なく―』
「て、点火失敗で終わりですか……」
セレナはガッカリしたような気がした。
「大丈夫?」
「は、はい……」
元春は、セレナの手を伸ばした。
「こういう事もあるさ、また次回に見ればいいだけさ」
「…………はい、そうですね」
セレナは笑って立ち上がった。こうして、桃色の花火は上がらなかったが、普通の花火が上がったことに、元春達は花火を見上げていた。
そして、翌日の仕事―。
「セレナさん、残念だったね……。期待な言葉を言ってごめんねぇ」
桜子は、セレナに謝っていた。
「いいですよ、こういう事もよくあることですから。それに―」
「それに?」
「いつかまた、本当の事を言うのはまだ早いですし、少しだけでも元春さんを支えないといけませんからね」
そこには、テキパキ働く元春がいた。
セレナは想いを告ぐのは、まだ先の話になりそうだった。