困って泣いていた時こそ励ます時もあります
―前回のあらすじ。ハトバに幽霊が出たことに、元春達は初のハトバの泊りがけをすることとなった。咲夜とキャロルも夜の見回りに加わり、ハトバの店の中を調べると、人魂が見えていた。さらには西洋人形っぽいものもあった。それを調べ、遂に大倉庫に逃げ込んで追い詰めることができた。
だが、段ボールの音がして、そこにいたのは呪術師らしい女の子だった。
「呪術師のアリア・ソウルートさんか」
元春達は、アリアを尋問した。
「は、はい」
アリアはものすごく震えていた。
「あの人魂も、落ちていた人形も、君だったのか?」
「はい、そうです」
「どうして、アリアがこの世界に来たの?」
アリアはその理由を言った。
「私は、研究材料を買いに城下町に歩いていたのですが、そしたら急に謎のホールに吸い込まれてしまって、気付いたらここにいました」
「謎のホール?」
セレナもエリーゼも、同じ経験があった。
「でも、辺りが暗くて、頼りになる人魂さんに明かりをつけたのです」
「人魂さん?」
すると、アリアの手から人魂が出てきた。
「! んなっ! ひ、人魂が出てきた!」
「はい。この人魂さんのおかげで調べたところ、どうやら別世界に来たそうです」
「そうだったのですね」
この時、元春は思った。
「もしかして、雪子さんが見た人魂はそれだったのか」
「なるほど、それだったらビビるよね」
「ご、ごめんなさい」
これに元春は考えた。
「ということは、いままでの幽霊騒動は君だったのか。では、あの人形は何だ?」
「これですか?」
アリアは説明した。
「これは、人魂さんが入る人形です」
「え?」
すると、人魂は人形に入って、動いた。
「す、すごい……」
「これが私の呪術師の力なんです」
「なるほど。これでようやく謎が解けたね」
元春は納得した。
「でも、皆さんに迷惑をかけてしまった。でも、こういうやり方しかなかったんです、元の世界に帰る方法もわからないし、動揺してて……」
「アリアさん……」
悲しい顔をしたアリア、すると元春は言った。
「大丈夫。いつかきっと、見つけられる。慌てなくても、希望がある。だから、諦めたらいけない」
「…………、はい。ありがとうございます」
こうして、ハトバの幽霊騒動は幕を閉じた。
そして、翌日の事。元春は、全員にすべて話した。
「というわけなんだ、この人は悪気がなかったんだ」
「そうだったのか、幽霊騒動の犯人はお前だったのか」
義子は腕組んで言った。
「はい。ごめんなさい」
「それで、この子どうするんですかいな?」
龍一の質問に、元春は思った。
「そうだなあ、そこまで考えてなかった」
するとだった。
「もしかして、いままで一人だった?」
「は、はい」
雪子はアリアに言う。
「私のトコに来る?」
「えぇ?」
全員は、雪子の発言にビックリしていた。
「いいのですか、雪子さん? だって彼女は……」
「この子には悪気がなかった、なら私が預かるわよ」
「雪子さん……」
アリアは泣くほどうれしかった。
「よかったですね、アリアさん」
「はい! 私、しばらくこの世界で働きます。この人魂さんと一緒に!」
「に、人形も? 大丈夫?」
「空飛べますし、便利ですよ」
「しかし……」
すると、雪子は言った。
「御子柴店長、私が指導します。勿論、責任も」
「…………わかった」
こうして、アリアは雪子の家に住むことにした。そして、彼女もまたハトバの店員として採用した。
「やれやれ、やっかいな仲間が増えたな」
義子はフッと笑っていた。何故なら、笑顔で笑っていたアリアがいたからだった。
『ハトバ幽霊編』・おしまい