騎士団長は幽霊が苦手です
―それは、摩訶不思議な偶然であった。とある建物には、事故で亡くなった幽霊がさまよっている、そして未練があり、成仏できない。だが、消えたくないという幽霊もいる。
そんなある人物がいた。それは―ネクロマンサーだ。
ネクロマンサーは、幽霊の呪術師である。いわゆる、イタコである。そんなある日のこと、ハトバに事件が起こった。
「やっと、終わったわね。あとは、店を戸締りして……」
ハトバのカギの担当である倉木雪子は、店を戸締りしようとしていた。だがするとだった。
コトッ、という音がした。
「? 今のなにかしら?」
猫が入ってきたのか? それとも、気のせいだったのか?
だが、すでに従業員は帰っている。店には雪子一人しかいない。恐る恐る、覗いてみた。
「…………」
その時、彼女は衝撃的なものを見た。
「! きゃあああああああああ!」
それは、この世界には信じられないものだった。
翌日。雪子は、全員に昨日のことを話した。
「幽霊がこの店に?」
「はい、この目で見ました」
雪子は、店長である御子柴元春に事情を話す。
「そんな馬鹿な、確かこの店は建てる前はちゃんとお祓いをしたはず」
家や店など建てるには、厄のお祓いをしてから造るのが建設のルールである。だが、雪子は言う。
「本当に、人魂っぽいものがあったんです」
「それは、本当ですかいな?」
「信じられませんね……」
確かに信じられない、だが雪子が言ってることは嘘ついてない。
「う~ん、人魂かぁ……。もしかしたら、セレナさんのとこの世界と少し関係あるかもしれないな」
「確かにそうアルかもね。……って、アレ?」
ユンは周りを見た。
「ユンちゃん、どうしたのぉ?」
桜子は、ユンに尋ねる。
「セレナさんが、居ないネ」
「え? セレナさん?」
「さっきまで、居たはずだよな?」
セレナを探すと―エリーゼの後ろにいた。
「あ、いた」
なにやら、震えていた。
「セレナさん、どうしたの?」
セレナは言った。
「す、すみません。私そういうのは……」
もしやと、義子は思った。
「セレナ、もしかして……、幽霊には弱いのか?」
「…………」
セレナは沈黙した。これに義子は、ため息した。
「ゴキブリの次に、幽霊が苦手って……、ソルフィルスの騎士団長かよ、それでも?」
「ごめんなさい、ゴキブリとゴースト系は弱いんです」
元春は、これにエリーゼに尋ねる。
「エリーゼさん、セレナさん何かあったの?」
「団長はゴーストのモンスターに何度も驚いて、それ以来苦手になったそうです」
「な、なるほど……」
「だが、ここに幽霊がいたらお客が減ってしまう。何とかしたいが、どうする?」
義子は皆にどうするか言う。
「なら、いい提案ありますよ」
言ったのはソルトだった。
「誰かが、今夜このハトバを調べればいいじゃないですか」
「確かに、それは一理あるな」
「だが、誰が今夜ハトバの店を閉めるんだ? 確か今日は、俺の予定だが……」
これに義子は即決した。
「じゃあ、元春店長ら《・》に決定だな」
「マジかよ……」
すると、エリーゼは思った。
「ちょっと待ってください。その、ら、って何ですか」
「エリーゼとセレナ」
「…………」
セレナは青ざめて、エリーゼは呆然とした。
その頃……。
「ここは、どこなのですか……? 誰か気付いてください……」
何やら誰かを助けを求めている人がいた。
つづく