彼女の腰に掛けているアレのことが気になっていました
ある日のこと、エリーゼは気になっている人物がいた。
(あの人、たしか薬剤師の倉木雪子さんでしたね……。正直、思っているのですが……)
エリーゼは、雪子の腰にあるものを見た。
(なぜ刀を腰につけているのでしょうか?)
さすがに疑問を抱いていた彼女だが、本人は一応は普通と思っていた。
(まぁ、ソルフィルス時代では、警備のための剣として腰を掛けていましたが、たしかこの世界では武器は厳禁だったと、団長が言ってましたね。でも、なんで? なんであの人、刀つけているのですか?)
雪子がなにを考えているのか分からない。
そこへ……。
「エリーゼさん、なに深刻そうな顔をしている?」
「元春さん」
元春が来て、とりあえず彼に尋ねることにした。
「彼女、なぜ刀を持っているのですか?」
エリーゼは、雪子のほうに指をさした。
「あぁ、日本刀か」
「日本刀?」
元春は、日本刀のことを説明した。
「あの刀は、日本で作った刀なんだ。昔、侍の人がよく腰につけていたんだ」
「この世界に、そんな刀があるとは」
エリーゼは感心した。
「だが、正直に言うと、今は令和だからあれでは、銃刀法違反になるけどね」
「じゃあ、なんで雪子さんは刀を持っているのですか?」
「分からないけど、ただ分かるのは、彼女の実家が刃物屋だからさ」
エリーゼは、刃物屋の言葉に気付く。
「刃物屋? それって、包丁とか作っている?」
「そうなんだよねぇ」
元春は頭をボリボリ搔いた。
その時だった。
「元春さん、大変です!」
セレナが慌てて来た。
「どうした?」
「お客様が揉めています!」
「なんだって!?」
元春は、お客が喧嘩しているところへ行った。
お客は揉めていて、久本桜子が止めていた。
「なんだテメェはよ!」
「大体お前のせいだろ!」
「お客様~、ここで喧嘩はやめてください~!」
そこへ、元春たちが来た。
「どうしたこれは?」
「あ、店長!この二人が、商品で揉めていまして、どうしたらいいのかわからないんですぅ!」
「まるで鬼●トマホークの喧嘩だな……」
元春は、仲裁に入った。
「お客様、喧嘩はやめてください」
「うるせぇ! 今はそれどころじゃねぇんだよ!」
「いや、だからって、ここで喧嘩したらお客様の迷惑がかかりますから」
その時、そこにある人物が来た。
「すみません、迷惑行為になりますので喧嘩はやめてください」
雪子だった。
「はぁ!?今はそれどころじゃ……!」
お客は言いかけたところ止まった。
「お引き取りを」
雪子は、日本刀を抜こうとした。
彼女の威圧感に、元春達もピリついた。
「すいませんでした!」
お客はまさかの土下座した。
(こ、怖ぁ~……)
さすがの元春達も、土下座したいくらいだった。
その後、喧嘩で揉めていたお客は帰った。
「さすが雪子さん、恐ろしいですね」
「そうだね……」
すると、これにエリーゼは……。
「すごい……、あれが雪子さんの……!」
「へっ?」
エリーゼは、雪子に近づく。
「雪子さんのあれは、尊敬します! どうしたらそんなに威圧ができるんですか!?」
「え、ええ?」
これに元春とセレナは、唖然した。
「……」
もはや、言葉も出なかった。
数日後、エリーゼはよく雪子に尋ねる。
「その刀で、どうやってやるのですか?」
「いや、その……」
これに見たみんなは……。
「エリーゼさん、大丈夫なのか?」
「私にもわかりません」
雪子はエリーゼの尊敬のまなざしに、気まずかった。
(どうしよう、本当はこの刀がないと不安すぎて落ち着かない、なんて言えない……)
雪子は本当は不安な薬剤師だった。