元ヤンがメカ娘を拾いました
——桐島義子。ハトバの化粧品担当を務めている女性であり、かつては元ヤンだった二児の母親である。
そんな彼女は、この時ある人物に会った。
「…………」
目の前に人が、いや、人型のロボットが倒れていた。
「…………、こいつ一体何なんだ?」
動じないが状況がわからない、なぜこうなったのか? それは少し時がさかのぼる数時間だった。
「お疲れ……」
義子は疲れた声で言う。
「お疲れ様です、桐島さん」
休憩室にはセレナやエリーゼ、桜子の三人がいた。
「はぁ~……、帰って家事を片付けないといけないのか」
ため息する義子に、エリーゼは思った。
「そんなに大変ですか?」
「自分が言うことじゃないが、こう見えてシングルマザーだ。……といっても、猫の手も借りたいほどだがな」
「娘さん二人いたはずですよね? 大丈夫ですか?」
セレナは心配そうに言う。
「うちの娘のところは、赤ん坊から六歳の子供までの保育園があるからよ。ま、その後には送迎バスで帰ってくるからな」
「なんとなくわかりますね」
「せめて——家庭サービスの奴、雇いたいな」
義子はそう思っていた。
「家庭サービス?」
「何ですかそれは?」
セレナとエリーゼは、その言葉は知らない。口を開いたのは桜子だった。
「家に家政婦を雇う人だよ~。ソルフィルスには無かったの?」
「あることはありますが、応募してメイドとか執事など雇っているところもありました」
「そうなんだ~」
「ま、そういうのは欲しいが、金がかかるからな」
義子はそう言うと、休憩室に出て帰った。
「義子さんのところ、大変なんですね」
「元ヤンな人だと聞きましたが、今になっては子育て大変ですね」
「大丈夫かな~」
心配そうにする三人。
だが後に、義子はこの時知らなかった。
「はぁ~、クソ疲れる……。あたしにも精神が疲れるぐらいだわ」
義子はブツブツ言う。
「この先、どうすりゃあいいのか……」
その時だった。
ガシャン!
「! 何の音だ?」
自転車が倒れた音がしたが、かなり大きい音だった。
「この辺りに自転車ないはずだろ?」
たしかに辺りは自転車置き場はない。気になって様子を見た義子は行ってみた。
——そして、そこには……。
「…………」
人、いや人っぽいなのか?と義子は思った。
「……なんだこいつ?」
とりあえず起こそうとした。
「おい、大丈夫か?」
「…………」
どうやら動かない。もしかして死んでいるんじゃないのか? そう思った義子だった。
すると……。
ギュィィィィィン!
「な……!」
目が覚めた。
「ここはどこでありますか?」
「…………」
言葉が出ない義子。
「ここは一体、どのあたりでありますか?」
どうやらただの人じゃないようだ。
「あなたは誰ですか?」
「こっちが聞きてぇよ」
さすがにツッコむ義子。
「アンタ、人間じゃねぇだろ?」
「私はメカとしての生まれた存在、シャルアといいます」
(メカな存在ってことは、いわゆるメカ娘ってことか?)
義子はそう考えていた。
「ソルフィルスではないですね、ここは一体どこなのでありますか?」
「ソルフィルスだと? まさかアンタ、セレナ達とは知り合いなのか?」
「セレナ? もしや、セレナ・ガーネット様でありますか?」
「…………、こんな偶然あんのかよ」
義子は信じられない顔をした。
「ま、といっても行き先ねぇだろうな」
「そうでありますな。で、ここはどこでありますか?」
義子は言った。
「小樽市だよ」
「成程、おたる、でありますか」
「…………」
義子はため息して、仕方なく家に連れて帰ろうとした。
つづく