店や家などにはやっぱり皆が大嫌いなやつが現れました
——店や家、そいつを見たのち悲鳴を上げてしまう。奴はなぜならどこにいても狭いところにいる。人に見られたくないところに現れる、人間にとっての最悪と呼ばれる奴だった。
そしてついには――ハトバにも現れるようになった。
「きゃああああああああ!」
そいつを見たのは、久本桜子の叫びで始まった。
「どうした!」
「なんやなんや? 何があったんや?」
駆けつけてきた元春達、そこに震えている桜子がいた。
「で、で、出たんですぅ! アレが出てきたんですぅ!」
「あ、あれとは何ですか?」
「まさか、例の奴か?」
元春は、奴、というのを気付いた。その為、店用のスプレーを出そうとした。
だがその時……。
カサカサカサカサッ!
「!」
奴が出てきたのだ。
「ひっ! ゴキブリ!」
「んげっ! ついにこの店にも出たんかいな!」
でかいゴキブリ、それを見たセレナは——。
「…………」
言葉が出なかった。
「どこだ、ゴキブリは!」
元春がスプレーを取りき来たのち、ゴキブリは何処かへ行く。
「しまった、いなくなってしまった!」
「店長、こりゃあ厄介ことですやん。早くゴキブリ退治しないと」
「分かってる、セレナさんも手つ―—」
元春はセレナに手伝ってと言うと、セレナはうずくまって震えていた。
「どうしたんですか?」
「ご、ご、ゴキブリは苦手なんです……」
セレナは泣きだしそうに言う。
「ゴキブリは苦手な人は多いですから……」
「す、すみません。まさか、この世界にもゴキブリがいるなんて思っていませんでした」
「ソルフィルスにも、ゴキブリはいますよね」
「いることはいますが……、その、やっぱり見てもあのでかいゴキブリを思い出しただけで、思い出してくるんです」
セレナは語った。
「ゴキブリにも魔物がいますが、二メートルぐらいのゴキブリがいて……」
「なっ……!」
「兵士もそれを見て怯えて、砦で弓兵がやっつける他しかありませんでした」
これに元春達は思った。
「そんなゴキブリがおるんなら、もはや進撃のゴキブリやん!」
「そんな魔物いるなら恐ろしいな」
鳥肌立つほどのゴキブリらしい。
「でもさすがに、セレナさんも戦ったよね?」
セレナはこれに鬱そうな顔をした。
「ごめん! そんなに辛いことだったなんて!」
「私、あの魔物には二度と会いたくないと祈っています」
(嫌なトラウマだったんだな……)
その時だった。
カサカサカサカサッ!
「ひっ! ゴキブリが出ました!」
桜子はゴキブリを見つけた。
「そこが!」
元春はスプレーを使って、シューっとゴキブリに吹かせた。
だが……。
ブウウウウウンッ!
「うわあああああ! ゴキブリが飛んだああああ!」
「飛ぶやつかいな!」
「いやああああああ!」
悲鳴の叫びにて、そこへ……。
「何の叫びですか?」
エリーゼがやって来た。
「エリーゼさん、危ない! そっちにゴキブリが来たぞ!」
ゴキブリはエリーゼのところに来る。
するとだった。
「ていっ」
エリーゼは何も動じず、ゴキブリをバシッと倒した。
「…………」
元春達は、エリーゼの行動を見て唖然した。
「ここにもゴキブリいるんですね。……? どうしましたか?」
「エリーゼさん、ゴキブリ、怖くないの?」
「たかがゴキブリで、私こういうのはビビりませんので」
エリーゼはそう言うと、セレナは彼女の手を握ってお礼した。
「あ、ありがとうございます……!」
「団長? もしかして、あのサイズでも怖いのですか?」
「お礼に何かデザートをおごります!」
「大袈裟ですよ、本当に」
泣き出しそうに言うセレナ。この時思った元春。
(セレナさん、ゴキブリには弱いのか。それにひきかえに、エリーゼさんはゴキブリには動じなかった。こういうの世にもあるんだなぁ)
その後、セレナはケーキを買い、エリーゼにあげさせたという。