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悲しくてもそれはお互いに心通わせる言葉を伝えました

 まさかの最悪な再会だった。かつて、魔王を討伐したソルフィルスの騎士団。魔王が討たれ、ほとんどの魔王の軍は壊滅となっていた。ライアは魔王の側近だったが、壊滅後には流浪してさまよっていた。

 だが、彼女は時空ホールに吸い込まれ、現世にやって来た。現世の人間である、山城龍一と出会った。少し興味を持っていた彼女だったが、その時には徐々に薄れていくのだった。

「ようやく、お前たちを討てると気が来た……、やはり天は我を見放していなかったようだな」

「ライア・エミル、ここは現世の世界で私たちの世界とは異なっています。それに、あなたはもう……」

 セレナはライアを説得する。だが、ライアは聞きもしなかった。

「うるさい! 貴様たちのせいで、我はどんなことで苦しんでいたか分からないのか!?」

「それは……」

「それにお前たちが邪魔しなければ、今頃は……」

 これに口を開いたのは、エリーゼだった。

「あなたの気持ちはわかります。でも、あなたの上司は、私達を滅ぼそうとしていた。亜人も獣人も、皆を奴隷扱いして……」

「魔王様はそんな方ではない! お前たちだけでも、殺してやる!」

 ライアの怒りは収まらなかった。その怒りにライアは魔術攻撃を出した。

「!? 何あれ!? ああいうのあるのか!?」

「現世では魔法はないのですか?」

「ないよ! そもそも珍しいよ!」

 元春は驚いて、町の人もこれに見た。

「殺してやる! お前たちだけでも!」

「…………」

 これにセレナとエリーゼはやむを得なかった。

「元春さん、すみません。ここは現世でも、彼女を止めるしかないようです」

「そんな……!」

 何とか攻撃する前に止めないといけない。その時だった。

「なんや? なんか騒いでるやないか……。……って、店長!?」

「! 山城!? どうしてここに?」

「山城さん!?」

 セレナらも、龍一が来たことに気付いた。

「ここは危険ですよ! 下がってください!」

「どういうことや?」 

 龍一は上を見た。そこには、ライアが魔術攻撃を始めようとしていた。

「ライア!? 何しとんねん!?」

「えっ!?」

 元春達は龍一の言動を見て驚いた。

「山城、彼女知ってるの!?」

「知っているというより、一緒に住んでまして……」

 龍一は顔にボリボリ搔く。

「…………! 龍一!」

 ライアも龍一を見て気付いた。

「ライア、何しとんねん! 町の人が注目されとるで! 気持ちはわかるけどやめてくれ!」

「…………」

 龍一との出会い、彼とに出会いに少し馴染んでいた。しかし、仇は目の前にいた。

「…………」

 その時、ライアは龍一を見て攻撃を止めようとした。

「ライアが攻撃を止めた……!」

「…………」

「ライア、一体何やってるんや! この辺りを破滅したらカオス状態のトコやったで! えらい大騒ぎになるとこやったで!」

 すると、ライアは震えていた。

「お前のせいだ、龍一……!」

「ライア?」

「貴様など、大っ嫌いだ!」

 ライアはそう言うと、何処かへ行ってしまった。

「ライア! どこへ行くんや!」

 これに元春達は……。

「山城さん……」

「皆さん、ホンマすんません! 詳しくは明日話しますんで!」

 龍一はそう言うと、行ってしまった。

「……山城」

 元春は、龍一の背を見て何か思った。


 その頃、ライアは路地裏にてすくんでいた。

「……やはり、我など人間とは戯れてはいけないのだ。人間は我にとっても敵だ」

 するとそこへ……。

「ライア! ここにおったんかいな」

「龍一……」

「仇の人、セレナさんたちやったんかいな……」

 これにライアは、龍一に怒った。

「お前のせいで、仇を討ち損ねた! 魔王様が討たれたのは、あの者のせいなのに! 我など、人間と一緒にいたらいけないのだ……!」

「ライア……」

「それなのに、いつの間にかお前と一緒に戯れてしまった! 我はもうこの世にていてはいけない存在なのだ……」

 ライアの苦しみに、龍一は想った。

 すると……。

「……!」

 龍一は、ライアを抱きしめた。

「お前の気持ちはわかる。人間という生き物は最低なアホばかりや。けど、時には優しい心通わせる人間もいるんや。苦しみも一緒の気持ちも、俺にはわかる。だからこそ、尊敬する人などいなくなった時でも、自分の心に生きているんや。苦しいんなら、俺が相談に乗って愚痴をこぼしてもかまん。泣きたいときは、泣いてええ。それが人間の差っちゅうもんや……」

「…………」

 ライアは龍一の励ましの言葉に、涙を流した。

「う、うう……。龍一……!」

「腹減ったか? ちょうど近くにラーメン屋があるんや。……そこで、心温めて飯食いに行こうや」

「すまない……!」

 こうして、龍一の休みは終わった。その時、龍一にはライアの気持ちに悲しみがあると思っていた。


 そして、翌日……。

「昨日はホンマに、すみませんでした!」

 龍一は、元春達を謝罪した。

「いいよ、別に。俺達、気にしていないから」

「……ライアには話したのですが、セレナさんたちがライアの上司を討ったのは本当なのか思っていたのですが……」

 セレナは言った。

「彼女の魔王は、私達の世界を支配していたそうですが……」

「本人に言うには、そんな酷な魔王じゃないって言ってます。俺、思ったんです。きっと、何か裏があるんやって。だから、本当の真実を見つけるまで、ライアと和解してくれませんか?」

 龍一のお願いに、元春達は言った。

「……わかりました。彼女をお願いします」

「すんません、ホンマおおきに」

 龍一はお礼した。


 そして、夜……。

「和解してくれたのか?」

「本当の真実を見つけるためには、こうするんや」

「…………」

「エリーゼさんは不満やったけど、それでも納得するしかなくて」

 これにライアは言った。

「……ありがとう」

 ボソッと言うと、少し照れていた。

「? なんか言ったかいな?」

「なんでもない! いや、これからも頼むぞ、龍一」

 ライアは龍一がいるからこそ、微笑んでいた。





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