元魔王の幹部を関西出身の男が拾いました
―—日が沈み、月が出ていた頃……。
「ここは、一体どこだ?」
一人の少女は、町を見下ろした。
「騒々しい町だな。しかし、ここにやって来たということは我にもついにこの時が来たか。……あのソルフィルスの人間めが、魔王様を討伐し、我は流浪の身となってしまった。見つけて、殺してやるぞ」
ビルの屋上で笑う少女。しかし……。
―—ぐぅぅぅ……。
「うぐっ……、おなかすいたのだ……。ここのところ三日間食べていないからなぁ」
ため息をし、少女はおなか減って空腹状態だった。
その頃、仕事終わりで帰ろうとしていた男がいた。
「はぁ~、疲れたわ~……。今日は客多すぎやろ、ホンマに」
山城龍一、彼は今日はハトバの仕事で疲れていた。
「明日は休みやし、何処かへ行こうかなぁっと……」
明日のことを考えていると、そこに……。
「んっ?」
一人の少女が倒れていた。
「! 大丈夫かいな!?」
「…………」
「もしかして調子が悪いんか? すぐに救急車を……」
龍一はスマホを取り出そうとした。だがすると……。
「お、おなかすいたぞ……」
「! もしかして、腹減ってるんかいな?」
龍一は思って、どうしようかと考えていた。
そして、彼が住んでいたマンションに彼女を連れだした。
「ふう~……、生き返ったぞ」
「そりゃあよかった、インスタントラーメンやけど」
「らーめん、というのはよくわからぬがおかげで助かったぞ、人間よ」
彼女は龍一に、お礼した。
「その格好、コスプレかいな?」
「? よくわからない言葉だな」
「マントにちょっと露出した格好、寒くなかったんかいな?」
これに彼女は言った。
「否! 我は寒くない! それに我の名前はライア・エミル! 魔王様の幹部の一人であるぞ!」
ライアは名前を言うと、これに龍一は思った。
「魔王? アンタどこから来たんや?」
「ソルフィルスの世界だ」
その名前を聞いた龍一は驚いた。
「その名前、セレナさんらの世界から来たんかいな?」
すると、ライアは……。
「なぜあの女の名前を知っている?」
龍一は答えた。
「うちの仕事場で働いてんねん。ソルフィルスの人間や獣人は、この世界にやってきてんねん」
「…………」
「俺は言っておくが、争いは嫌やで。面倒は嫌いやから」
龍一の言葉に、ライアは言った。
「…………、お前、我の話聞いてくれるのか?」
「愚痴は付き合ってやるで」
これにライアは話した。
「我には魔王様がいた。世界を支配するために頑張っていたが、あのセレナ・ガーネット率いる軍によって、我らの軍は壊滅した。魔王様は討たれ、流浪の身となったのだ」
「ふーん……」
「本当の話だぞ、人間よ!」
「まぁ、向こうも大変というのは分かったわ。というより、俺の名前は山城龍一や」
ライアは本当に聞いてるのかと心配していた。すると、そこに……。
「これは……?」
そこには、三人の写真が写っていた。
「その写真かいな? 昔の俺と、俺の親や」
「健在なのか?」
龍一は言った。
「……死んだ。俺が十七歳の頃に、事故で亡くやったんや」
「……!」
「親がいなくて、施設に入る場所が見つからなくて、しゃあないから中退して、バイトしながら生活して、ハトバで働いてるんや」
「……もしや貴様は、一人なのか?」
「そうなるな」
この時、ライアは気づいた。
「寂しくないのか?」
「寂しいに決まっとるやないか。でも、もう慣れたんや」
「……お前も我と同じなのだな」
ライアは少し悲しい顔をした。
「…………」
すると龍一は考えた。
「明日仕事、オフの日やけど……、一緒に来るか?」
「何?」
「こんな時は気分転換に乗るのも悪くないやろ?」
「…………」
この時、ライアは思った。
(人間が考えているのはよくわからない、なぜそうまで笑うのだ? だが、ここは別世界。この男についていくのも悪くないか)
ライアは決断した。
「分かった、行こうではないか」
「そうこなくちゃあかんな」
龍一は笑った。
「…………」
この時、ライアは龍一の出会いに少しずつ変わっていくのだった。
その頃、就寝しようとする元春達。
「……」
エリーゼは月を見ていた。
「何やってるんだ?」
「月を見ているんですよ」
「それは分かっているが、月と何かあるのか?」
これにエリーゼは思った。
「凶兆、ですね。明日は……」
「? どういうことだ?」
この時明日の波乱が起こることを、元春はまだ知らなかった。
つづく