最初は興味はなかったけど気づいたら興味津々になってしまいました
ある日のこと、休憩していた桜子とエリーゼ。桜子は、あるものをエリーゼに見せた。
「何ですか、それは?」
「癒しマスコットぬいぐるみの『ポッポーちゃん』だよ~。みんなからは大人気なぬいぐるみなんだよぉ」
丸いぬいぐるみに灰色と白の鳥。しかしエリーゼは、興味なかった。
「そうですか」
「エリーゼちゃんもきっと興味出るよ。だって癒しキャラだから」
「それがどこの癒しなんですか……?」
エリーゼは現世人が考えているのは全く分からない。そう思っていた。
しかし、仕事帰りにて……。
「ふぁぁぁ……!なんですかこれ! 凄く柔らかいですし、しかももっちもち……」
スーパーの帰りに元春達は寄ったところに『ポッポーちゃん』が置いてあったことに、エリーゼはぎゅっと抱きしめた。その結果、彼女の顔がふにゃっとした。
「エリーゼさん、その人形が欲しいの?」
元春達は見た。
「! そ、そんなことはありません! むしろ、気持ちよかっただけなので!」
「エリーゼさんにも、可愛い一面があるんですね」
セレナはエリーゼを褒めた。
「だ、団長! それを言わないでください!」
「欲しいなら言えばいいのに」
元春はそう言うと……。
「これで十分ですから!」
赤面しながらエリーゼは否定した。
「まぁ、欲しいなら……、うん……」
ちょっとは欲しいと思った。が……。
「…………」
値段を見ると、ポッポーちゃんは七千円ぐらいだった。
さすがに高い。そう思ったエリーゼは、諦めかけた。
スーパーから出てくると、そこに……。
「あれは……」
「クジ引きか」
クジがやっていた。
「あれは何ですか?」
セレナはくじ引きに指をさし、元春は説明した。
「クジ引きといって、いわゆる運試しの店だね。ちょうどクジ引き貰ったから、やってみようかな」
元春達は挑戦することにした。
「はい、三回までクジ引き出来るよ!」
「三回かぁ、ちょうど三人いるから一人一回する?」
「いいですね」
「といっても、運試しですよ。そんなのは……」
エリーゼは言葉が切れた。なぜならそこに、一等賞に癒しマスコットぬいぐるみ『ポッポーちゃん』があったのだった。
「私がやります」
「エリーゼさん!」
「大丈夫か?」
エリーゼは言った。
「大丈夫ですよ! べ、別に一等賞とかほしいわけないですからね!」
エリーゼはそう言うと、クジ引きの箱から手を入れた。
そして……。
「…………」
ポッポーちゃんは当てたのだが、当てたのはエリーゼじゃなくセレナだった。
「あ、あの、エリーゼさん。落ち込まないでください」
「落ち込んでいません……」
少し暗い顔をしていたエリーゼ。
「落ち込んでるじゃないか」
「どうせ、こういうことですよ」
ブツブツ言うことに、二人は言いにくかった。
「…………」
エリーゼはそう思っていると何かを思い出していた。
エリーゼ・ルドベキア。彼女は幼い頃、ウサギの人形を大事にしていた。
「うさぎさん、いっしょにいようね」
大切にしていた物。しかし、それを壊す人物がいた。
彼女には八つ上の兄がいた。その兄がルドべギア家を皆殺ししたのだ。更には、エリーゼを殺さずに追放したのだった。
「お兄様、どうしてみんなをころしたの?」
「人には、踏み台が必要だからさ。そのために、実の親を殺したのさ。エリーゼはもちろん、ルドベキア家の一人だが、まだ幼い。追放して、このルドベキア家は俺が継ぐ!」
エリーゼは絶望した。場所も失い、そこで幼きセレナと会った。
「あなた、どうしてここに?」
「……」
何も言えなかったエリーゼ。
「わたしのところにくる? わたしはセレナ。あなたは?」
「エリーゼ……」
こうして、エリーゼはセレナに拾われた。今も、セレナの側近として従っていた。
そして現在、セレナが現世にいたことに、エリーゼは彼女と再会した。
「…………」
「エリーゼさん? 大丈夫ですか?」
「! 大丈夫です!」
するとそこへ……。
「お兄ちゃん!」
「咲夜!」
学校の帰りに、咲夜とばったり会った。
「学校帰りか?」
「うん、そうなの! そうだ!」
咲夜はカバンからある物を出した。
「これ、クジで当てちゃったの!」
それは、ポッポーちゃんのキーホルダーだった。
「ポッポーちゃんのキーホルダーじゃないか。しかも二つ」
「もう一つどうしようかなって思って……」
これに元春は、エリーゼを見て気づいた。
「エリーゼさん、このキーホルダー貰う?」
「私にですか? そういうのは……」
「謙遜しなくていいよ。欲しいなら隠さなくていい、人間ってそういうものだからさ」
元春はさらに言った。
「それに貰ったら嬉しいだろ?」
「…………」
エリーゼは思った。
そして翌日……。
「エリーゼちゃん、そのキーホルダーは?」
桜子は、エリーゼのカバンにポッポーちゃんのキーホルダーがつけていることに気付いた。
「これは、その……、自分のご褒美ですよ」
「……?」
素直じゃない彼女。だけど、嬉しいと心から思っていた。