帰省すると気まずい再会になりました
―前回のあらすじ。元春の元から手紙が来た。その宛て先は彼の親からだった。幼い頃、親は兄の方だけ溺愛され、彼は邪魔者扱いされていたという。
その話に、セレナたちは元春の過去に怒りを出していた。そのため、元春は実家に帰ることを決意した。だが、今の親はギャンブル依存症。帰ってきた後に気まずいかと思う。その為、セレナたちも同行することになった。
有給休暇を取り、彼にとってのトラウマのとこに戻ってきたのだった。
その頃、ハトバの方では―。
「店長が有給休暇?」
龍一は桜子らに、元春が有給休暇を取った話をしていた。
「急な話になってな、セレナもエリーゼも同じく取ったそうだ」
「有給休暇を取ったのはいいのですが、何かあったのでしょうか?」
これに義子は、腕を組みながら首を傾げる。
「そこまでは分からない。だが、元春の奴は最近は深刻そうな顔をしていた」
「それってどういう?」
「実家に帰省、という話だ」
「実家?」
その一方、元春たちは……。
「ここが、元春さんや花乃さんの実家ですか?」
「まるで、豪邸じゃないですか」
御子柴家の広さは家二個分ぐらいの広さだった。
「こんな豪邸なのに、ギャンブル依存症っておかしいですよ」
「俺もそう思う、けど事実なんだ」
「こんなに家大きいのに、お金が欲しいだなんて、狂ってますよ」
「こうなったら、文句言ってやります」
エリーゼは御子柴家に入った。
「こんにちはー! 元春さんの親御さんはどこですかー!」
「ちょっ、エリーゼさん! それじゃあまるで、押しかけか押し売りみたいだよ!」
そこへ―。
「大きい声で、近所迷惑だ! 警察呼ぶぞ!」
現れたのは、五十代の男性だった。
「なんだ、本当に来たのか。ろくでなし息子」
「……!」
どうやら、この男が元春の父親だった。
「手紙を送ったから、どうせ来ないだろうと思っていたが想定外だった」
「そ、それは―」
すると、エリーゼは文句を言う。
「あなたが、元春さんの父上ですね? こんな豪邸住んでいるのに、ギャンブル依存症ですか? 今まで、一体何をしているのですか!」
「なんだ、この小娘は?」
「エリーゼ・ルドベキアです」
「せ、セレナ・ガーネットです」
「キャロル・ケットシー」
「エルザ・リークレット」
自己紹介するエリーゼ達。
「フン、よくわからない女子達だな。ギャンブルやって何が悪い? こう見えても、資産家だぞ?」
「資産家?」
元春は説明した。
「財産を多く持っている人だよ」
「そんなわけないでしょう?」
しかし、これに言ったのは花乃だった。
「いや、実はうちの親、株をやっているのよ」
「株?」
「デイトレーダー、株を売る人だよ。それやってたら、そりゃあお金あるよ」
しかし、エリーゼはこれに納得いかなかった。
「なんですかそれ……、そんなに稼いでるなら、元春さんにたからないでくださいよ!」
だがそこへ―。
「息子といえども、当たり前の事」
現れたのは、髪が長い女性だった。
「か、母さん」
「ろくでなし息子、いえ、ぼんくら息子。ノコノコと帰ってきましたね」
「……」
「昔はできたはずなのに、完璧だった貴方が、高校で落ちぶれた。哀れな子ね」
母の一言に、元春は言う。
「完璧じゃなくていいんだよ。俺はそんなのは、望んでなんていない」
「元春さん……」
これに元春の父は言う。
「まあいい、来てしまったものは仕方ない。自分の情けを知りながら入りたまえ」
まるで罵言な一言だった。元春は渋々と中に入り、セレナたちも入った。
「なんですか、あの親子! 元春さんの気持ち、一ミリとも全くない!」
さっきの事で、エリーゼは怒っていた。
「一体どうなったら、ああなるのですか!」
「エリーゼさん、落ち着いて」
セレナはエリーゼの怒りを静まろうとするが、本人はイラっとしていた。
「落ち着けるわけないでしょう! 元春さんも反論した方がいいですよ!」
「……確かにそうかもしれない。けど、反論したら何するかわからない。十年も虐待されてたからね、溺愛していた兄と違って」
「元春さん……」
これに、キャロルは思った。
「十年前、つまりは元春の事を離れていたとなると、一体何がああなったの?」
「分からない。でも、一つ言えることは……、人が変わったみたいだった」
「変わった?」
その頃―。
「愚者な男と住んでいて、それでも一緒にいたいのか?」
「……」
「お前は、操り人形なもんだからな。これ以上は、私を失望しないでくれないか?」
元春の父と話していたのは、意外な人物だった。
「―咲夜」
つづく